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外資系コンサルタントのつぶやき 第20回
過酷なるITコンサルタントの日常

三宅信光
2003/7/4

   ITコンサルタントの日常は?

 皆さんはITコンサルタントの生活、というとどんなものを連想しますか。以前、この連載の中で「コンサルタント会社と聞いて、多くの人はどんなイメージを持つのでしょうか?」とお聞きしたことがあると思います(「第7回 コンサルタントへのあこがれと現実とのギャップ」)。では、コンサルタントの生活に対するイメージとはどんなものなのでしょうか。

 もちろん私が知っているのは私が勤めている会社のITコンサルタントの生活です。ここで私の会社での、と断ったのは、ほかの会社では必ずしもそうではない、という話を聞いているからです。では、私が知っているその生活とはどんなものでしょうか……。

   体力勝負

 ITコンサルタントの生活の基本は、まず「よく働く」ことです。よく働き、自分の実績を積み上げることが次のキャリアへのステップになると信じています。ですから、働くことで自分の生活を犠牲にしているという感覚は、あまりないように見えます。だから、納得のいく仕事であればいつまででも仕事をしています。終電に乗れなくても当たり前。ひどいときは徹夜を何日か続けたりもします。まさに体力勝負です。

 もちろん、知力を伴ったタフネスも要求されます。実際に私が担当しているプロジェクトでも夜中の2時、3時にメールが飛び交いますし、朝、知り合いのマネージャが赤い目をしていたので「どうしたの?」と聞くと、「いま、48時間目」といっていて驚いたことがありました。彼は丸2晩徹夜を続けていたようですが、その日も活発にミーティングをこなし、夕方にようやく帰宅しました。目が赤いかな、程度で働きぶりはいつもとあまり変わらないようだったので、よもやそれだけの長時間労働だったとは、周囲は誰も(特にクライアントは)気が付かなかったでしょう。

   長時間働けばいいわけじゃない

 単に労働時間が長いだけであれば、エンジニアの方ならそれほど驚かれないかもしれません。しかし、私の会社のITコンサルタントにとって仕事とは成果を伴うものでなければなりません(本来それも当たり前のことかもしれませんが)。成果がない労働は無駄と見なされて、徹夜をしようが何をしようがまったく考慮されないのです。

 入社したばかりの新人に要求されるのは、多少疲れていても業務をこなせることかもしれませんが、クラス(役職や職能)が上がるにつれて、要求されることは高度になります。それでいて、働き方はあまり変わらないように見えます。

 私の上司は取締役クラスですが、つい最近、私がいるプロジェクトにやってきて、午後5時ごろにオフィスに戻ろうとしていたので、何げなく「今日の予定は?」と聞いたことがありました。すると、「これからミーティングが2つ。そのうち1つは外国人と食事をしながらのミーティング。それが終わった後、今日中に別なクライアントへの提案書を作るんだ」といわれました。話を聞いたのが夕方のことだったので驚いて、「今日中に提案書を書くんですか。では、もうほとんどできているんですか」と聞いたら、さすがにちょっと悲しそうな顔をしながら「まだ全然。担当のマネージャと会えなかったから、これから作るんだ。そうしないと間に合わないんだよ」と話してくれました。当然、徹夜で提案書を作り、次の日にそのままプレゼンテーションを行ったようです。その上司は「3日徹夜をすると切れが鈍る」といっていましたが、そのタフさには脱帽です。長時間働いても仕事の質が落ちないことはまねできません。

   引っ越しは当たり前

 そんな働き方をしますから、仕事のために引っ越しをする、というケースも珍しくはありません。通勤時間を短縮することは、自分の時間を確保することにもつながりますし、引っ越し費用については、多くの場合会社が負担してくれますので、むしろ積極的に仕事場に合わせて引っ越します。以前私の直属のマネージャは、新しいプロジェクトの担当になると引っ越しをする、といっていました。「そう頻繁に引っ越しをしていては面倒ではないですか」と聞くと、「通勤で時間をとられるくらいなら、引っ越した方がマシ。慣れればどうってことないですよ」といっていました。そのプロジェクトでは、なぜかかなりの人が引っ越し、私のチームは私以外全員が引っ越しをしていました。そのときは私もずいぶんと引っ越しを勧められたものです。プロジェクトの節目ごとにその話が持ち上がり、確か3、4回は「引っ越しをしない?」と誘われました。私の場合、近くに引っ越してしまうと、仕事の区切りが付けられなくなりそうだったので、そのたびに断っていましたが……。

 もっとも、そのプロジェクトでは一時期ホテル泊まりが多く、ホテルのフロントとなじみになり、「お体は大丈夫でしょうか」と心配されるような状況になりました。午前4時ごろにチェックインして、午前8時前にチェックアウトする生活が続いていたので、ホテルのフロントに驚かれたようでした。どこのクライアントでどのようなフェイズで働いていても、ホテルとタクシーには必ず(といっていいほど)お世話になります。もちろん、波はありますが、厳しい状況が続くと、タクシーの運転手さんに名前を覚えられることもあるほどです。

   深夜タクシーも顔なじみ

 ある日の夜、タクシーに乗ると「○○さん、どうなさっています」と、そのプロジェクトから離れたメンバーのことを聞かれたことがありました。面食らって「何で○○を知っているのですか?」と聞いたら、「イヤー、しょっちゅう乗せていたし、○○さんの家はちょっと離れているから、いいお客さんだったんですよ。近ごろお見掛けしないから、どうしたのかと思って」といわれたのには参りました。別にそのタクシー会社だけを使っていたわけではないので、いかによくタクシーのお世話になっていたかが分かると思います。

 こんな具合に私が知っているITコンサルタントは本当によく働きます。最初の方で書いたように、働くことを自分のキャリアアップにつながる行為として認識しているので、働くことにあまり抵抗感はありません。プロジェクトによっては予算の関係で超勤手当が出ないこともあるのですが、それでもモチベーションを下げずに働きます。

   ハードワークに伴う代償

 しかし、それは当然代償を伴う行為であることを認識されるのもしばしばです。働きに働く代償とは、自分の健康であったり、家庭内の問題であったりします。自分の健康であれば、ある意味仕方がないか、というあきらめもつきますが、家庭での問題の話を聞くと、やりきれない思いがします。取締役クラスの家庭で問題がないところはまれ(もっとあけすけないい方が流布されていますが)だと聞いたことがありますし、私の周囲の友人の話を聞いていても、うまくいっている家庭と、うまくいっていない家庭は半々のように思えます。なぜかその中間というのはなく、極端にうまくいっている家庭と、極端にうまくいっていない家庭に大別されるようです。

 私の友人の1人は、家庭で過ごす時間を大切にするために転職をしました。彼にとって私がいる会社での働き方は、家庭との両立が難しいものであったようです。私もその意見には賛成でした。自分自身の強さだけではなく、家族の深い理解がなければハードワークはこなせないし、それを長く続けるのはなかなか難しいものだと感じているためです。

   ITコンサルタントの休日の取り方

 ITコンサルタントの“仕事生活”にばかり焦点を当てて紹介してきましたが、時間に余裕があるときは、皆定時で帰ります。お付き合い残業などという風習は間違ってもありません。そして、普通の会社ではまだあまり見られない長期休暇を取ったりすることもできます。新婚旅行で3週間ほど休むなんていう話は珍しくありませんし、1カ月から1年程度、何らかの理由(健康状態とは関係なく)で休職をする人も案外多くいます。別に休んだからといってペナルティがあるわけでもなく、白い目で見られるようなこともありません。

 しかし、コンサルタント会社によっては、私の会社のような極端な働き方はしないところもあるようです。私の友人の1人は、私がいまいる会社を退職して、同業他社に転職をしましたが、ほぼ毎日定時で帰っているといっていました。しかし、同時にその会社では尊敬できる人がいない、とこぼしてもいましたが……。

 ITコンサルタントのワークスタイルの基本はハードワークであると私は考えています。ハードワークをこなす見返りとして、より多くの経験を短期間に得られることは事実です。そして過酷ともいえる労働と競争の中で、普通の会社では10年かかって得られるキャリアを4、5年で得ることができるかもしれません。しかし、その報酬は全員が得られるものではありませんし、大きな代償を払うこともしばしばあり得るのです。大きな代償を払うリスクに対する見返りが見合うものであるかどうかは、熟慮する必要があります。

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