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外資系コンサルタントのつぶやき 第8回
コンサルタントのゴールはたったの2つ

三宅信光
2002/1/18

   マネージャというポジション

 今回はマネージャというポジションについてお話ししたいと思います。これまで何度か書いたように、私の会社では、定年まで勤めようと考えている人はほとんどいません。みんなどこかのタイミングで転職をしようと考えているのです。その中で最も良いタイミングと思われているのが、マネージャ職に就いた後ではないでしょうか。そこそこのキャリアとして認められ、年齢的にも脂が乗っているころです。そのため、人材の買い手も多いようです。

 現在、私もマネージャ職です。これは一般の会社の課長に当たるのでしょうか。最近ではマネージャの名称を使う会社も多いようですし、権限もだいたい同じようなものでしょう。コンサルタント会社のマネージャは、昔はそれなりに権限があったようですが、次第に実権がなくなったと、古参メンバーはいいます。マネージャの上には、あと3階層ぐらい(実態はもう少し細かく分かれているようですが)のポジションがあり、マネージャの前には2段階くらいのポジションがあります。狭い業界ですから、同業他社の話も聞きますが、この階層構造はどこのコンサルタント会社でも大差ないようです。もちろん、名前はさまざまで、会社などによって異なるようです。

 いわゆる取締役クラスといわれるのは、マネージャの2つ上ぐらいからです。いまのマネージャクラスは、人にもよりますが中間管理職そのものです。少し愚痴っぽくなりますが、マネージャは大きな権限は持っておらず、残業手当はなく、過大な仕事を振られ、それをこなすことを要求されます。コンサルタント会社に入社した新入社員の6〜7割は、このポジションまでは到達するのではないでしょうか。

   コンサルタントとして成功する条件

 しかし、コンサルタントとして成功した、といわれるようになるためには、あと2つはポジションを上らなければなりません。ところが、この2つのポジションを上るのは至難の業なのです。

 まず、マネージャになったときの年齢が試練となります。多くの人は、ここで挫折を味わうようです。よく聞かれるのは、「彼はコンサルタントとしては優秀だけれど、マネージャとしては……」という言葉です。

 私も転職してからそれなりに経験し、社内にも友人と呼べる人も増えました。中には私と同じタイミングや、少し後にマネージャになった人もいます。しかし、その半数近くが、もう会社を去ってしまっているのです。

 コンサルタントまでは、いわゆる平社員なのですが、マネージャであれば曲がりなりにも管理職です。仕事の仕方からして、発想の転換を要求されます。どういうふうにいえばいいのか難しいのですが、「仕事は自分で見つけろ」ということと、「マネジメントの意味を考えろ」ということだと、私は思っています。

   マネージャの資質とは

 以前、私が所属していたプロジェクトで人が必要になり、たまたま私がよく知っている人が、それまでかかわっていたプロジェクトから解放(リリース)されていたので、その人に来てもらったことがあります。その人は私と同じタイミングでマネージャになった人ですが、それ以前から付き合いがあり、優秀な人だと知っていたので、その人に来てもらえるようにリクエストを出したのです。

 その結果は、とても残念なことになってしまいました。コンサルタントとしては優秀で、とても堅実な仕事をする人だったのです。だからこそ「彼ならば」と思って来てもらったのですが、マネージャとして自分の考えで動くというのは苦手だったようでした。彼には、チームとして非常に混とんとした状況になっていたのを、立て直してもらいたかったのです。彼を呼んだ側としては、マネージャとして周りがいろいろと勝手なことをいっている状態を整理し、自分なりの結果を出すことを期待したのです。

 しかし、この会社には珍しく彼はおとなしい人で、周りの言葉に振り回されてしまったようでした。指示を受けて動くコンサルタントなら、上の指示の出し方にも問題があるといえたかもしれませんが、マネージャではそうもいきません。たまたまその前のプロジェクトでも彼は失敗があったらしく、結局彼は会社を去ってしまいました。

 コンサルタント職でも、一般の会社から見ればはるかに自立を求められます。これは私の経験からの感覚ですが、コンサルタント会社では、一般の会社の中間管理職並みの独立性を平社員であるコンサルタント職のうちから求められているのだと思います。しかし、マネージャとなると、「何から何まで自分で考える」ことが当たり前になります。コンサルタントであれば、それなりに指示がきますが、マネージャになると自分で何でも算段することが求められるのです。そして、求められるものの中には、ビジネスセンスも入ってきます。単に「クライアントのために」ということだけでは動けなくなるのです。このあたりで戸惑う人もいるようです。

 もう1つよくいわれるのが、「もうマネージャなんだから」という言葉です。これは特に下からいわれます。マネージャであれば働いて当たり前。当然といえば当然ですが、下にいるメンバーよりもいろいろな面で「上」であることを求められます。以前、私の会社では、下のメンバーでも管理職クラスにストレートにものをいうと紹介したことがあります(「第3回 出ないクイは捨てられる」)。これは取締役クラスへも行われますが、身近にいるマネージャ職が、一番そうした攻撃にさらされることが多いようです。ただでさえ激務であるのに、さらにストレスがたまり、結果としてこのマネージャ職の時期に会社を退社する人が多いのかもしれません。

   コンサルタントのゴールとは

 マネージャから上になるためには、さらにいろいろなハードルがあります。このあたりになると、英語への要求も高くなりますし、高いビジネスセンスを要求されるようになります。そしてマネージャとしては優秀な人でも、パートナーとして必ずしも成功するわけではありません。自信家が多いわが社の面々も、さすがに取締役になれると確信(?)している人は少なく、「マネージャになったら転職を考えよう」と思っている人は結構多いようです。一般の会社であれば、別に取締役になれなくても、マネージャになればそのまま定年でも、という選択肢があると思います。しかし、それがまったくといっていいほどないのが、コンサルタント会社の特徴かもしれません。コンサルタントのゴールはたったの2つです。取締役にたどり着くか、それとも棄権するか。その2つしかないのです。

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