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ITエンジニアを続けるうえでのヒント〜あるプロジェクトマネージャの“私点”

第14回 「もっとスキルを」が引き起こす問題

野村隆(eLeader主催)
2006/5/23


将来に不安を感じないITエンジニアはいない。新しいハードウェアやソフトウェア、開発方法論、さらには管理職になるときなど――。さまざまな場面でエンジニアは悩む。それらに対して誰にも当てはまる絶対的な解はないかもしれない。本連載では、あるプロジェクトマネージャ個人の視点=“私点”からそれらの悩みの背後にあるものに迫り、ITエンジニアを続けるうえでのヒントや参考になればと願っている。

リーダーシップトライアングルにおける位置付け

 前回に引き続き今回も、システム開発プロジェクトにおけるリーダーシップを中心に、「私の視点=私点」を皆さんにお届けします。

 今回の内容は、リーダーシップトライアングルのLoveに関係しています。Loveについては、第10回「正しいことをし、行動力を発揮するココロ」を参照いただければと思います。

図1 リーダーシップトライアングル。今回は「Love」(ココロ)に関連する内容について解説する

「Love」(ココロ)の具体的な例が求められている

 前回の記事(第13回 プロジェクト成功につながる100年の杉苗)は意外なほど私の周りで好評で、いろいろな意見をいただきました。その中でIT系のコーチング・キャリアプランの専門家の方からご意見をいただく機会がありました。

 彼は日ごろ、セミナーやカウンセリングでITエンジニアやプロジェクトマネージャと話をする機会の多い専門家です。最近のITエンジニアやプロジェクトマネージャの傾向を、以下のように感じているとのことでした。

  • スキルや経験も必要だが、ココロも大事であるということは理解し始めている
  • 概論として「ココロが大事」という話は皆理解しているので、あまりウケがよくない
  • 一方、ココロを大事にするには具体的にどうすればいいか分からない人が多い
  • よって、ココロを大事にするための具体的な話をすると、皆の共感を得られる
  • その意味でこの記事は具体的で分かりやすく、ITエンジニアやプロジェクトマネージャの悩みに答えていると思う

 なるほど、こういう傾向があるのかと思いました。褒めてくださったのはありがたいですし、ある意味的を射たご指摘と考えています。

 確かに、「ココロが大事」というみんなが忘れかけたことを再認識するのは良いことです。やはり、性根の相当腐った人でない限り「ココロは大事ではない。自分さえよければそれでOK」と心の底からは思いませんよね。人間である以上、ココロを大切にすることは当たり前のことです。

 この前提が理解されたうえで、具体的にどうするかについての指針が求められていると理解しています。

 ココロについての具体的な指針(連載のサブタイトルの「私点」という表現を借りれば「私針」でしょうか)を紹介したいと思います。

幸せって何だっけ?

 「幸せって何だっけ?」というフレーズを聞いて、ある大手食品メーカーのCMを思い出す人は多いと思います(私の年がばれますね……)。「幸せとは何か」ということについては、さまざまな人の価値観や人生観があるので、一概に「これが幸せである」といえるものはないでしょう。

 今回、ココロを大事にするために「幸せって何だっけ?」を考えるに当たり、小説「氷点」の作者で、多くの難病に襲われたことで知られる作家の故三浦綾子さんが残した言葉を紹介します。

「九つまで満ち足りていて、十のうち一つだけしか不満がない時でさえ、人間はまずその不満を真っ先に口から出し、文句を言い続けるものなのだ。自分を顧みてつくづくそう思う。なぜわたしたちは不満を後まわしにし、感謝すべきことを先に言わないのだろう」

(『明日のあなたへ―愛するとは許すこと』集英社刊)

 三浦さんが闘われた数多くの難病が私のような平凡な人間に降りかかってきたとしたら、日々、不平や不満ばかりこぼしてしまうでしょう。三浦さんのこの発言に、あらためて人間の強さ、感謝する気持ちの大切さを痛感します。

IT業界での一般的な幸せ

 一方で、IT業界に長く身を置いている私なりにIT業界での一般的な幸せを考えると、以下のようになるかと思います。

  • 自分自身でITに関連するスキルを身に付ける
  • スキルを身に付け、将来のキャリアに役立つ職場で経験を積む
  • スキル、経験を自分の中に蓄積する

 こうすることで他人より優れたスキルや経験を自己に蓄積し、昇給や昇進、有利な転職を目指すことが、一般的なIT業界での幸せのつかみ方といえると思います。

 このような「自己実現」や「手に職を付けて活躍」といった幸せの考え方は、IT業界における就職・転職情報でやかましく宣伝されており、IT業界にいれば毎日のように目にします。長年IT業界にいると、こういった考え方が当たり前のようになってしまう傾向があると思います。

 ここで考えたいことは、上記のように自己のスキルや経験を最重要視し、自分が他人より優れた人材であるとアピールすることに固執してしまうと、以下のような弊害が出てしまうということです。

  • 自分のことばかり考えるので、自己中心的となる
  • 他人と自分との比較優位性ばかり考えるので、他人との比較の中で生きるようになる

 

   

今回のインデックス
 ITエンジニアを続けるうえでのヒント(14) (1ページ)
 ITエンジニアを続けるうえでのヒント(14) (2ページ)

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