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ITエンジニアを続けるうえでのヒント〜あるプロジェクトマネージャの“私点”


第16回 自分を陥れた人に感謝する理由

野村隆(eLeader主催)
2006/7/12

不遇に耐え、批判・批評に耐える

 不遇に耐える、批評・批判に耐えることについて、以下のステップを踏んで考えましょう。

  1. 不遇には原因がある
  2. 不遇は人格陶冶(とうや)のチャンス
  3. 不遇な状況に追い込んだ人に感謝する

1.不遇には原因がある

 スポーツの世界では「偶然勝つことはあるが、負けるのには必ず理由・原因がある」ということがよくいわれます。

 野球でもサッカーでも、相手が失敗をしたから、思いつきの選手交代が当たったから、たまたま運が良かったからなどの理由で勝つことはあるということです。

 一方で、偶然負けることはないといわれています。例えば、野球であればエラーや焦りによる暴投など、サッカーであればパスミスや選手交代の失敗、全般的な気の緩みなど、負けたときの原因は何か必ずあるという考え方です。

 この考え方を今回の不遇の話に援用してみましょう。

 不遇な状況となることは、スポーツで負けることに当たります。私はスポーツの負けと同様、不遇な状況となるのには、何か必ず原因があると思います。

あなたと上司との会話で、生意気ないい方になったときがなかったか。
客観的に見て、あなたの意見が本当に正しかったのか。
意見が正しいとしても、いい方に問題がなかったか。
他人の意見に耳を傾けず、自分の意見を無理強いしなかったか。

 自分が不遇となった理由を冷静に考え直してみましょう。必ず、何か原因があります。何も思い当たることがなくても、必ず原因があるはずだと思って考え抜いてください。

 それでも思い当たることがない場合は、自分の意見をいい出すタイミングの良しあしや、意見をする相手の順番(根回し)が正しかったかどうかなどの手続き面を疑ってみてください。

 こじつけでもいいので、原因を考えましょう。きっと何か原因と思われるものがあるはずです。

2.不遇は人格陶冶のチャンス

 不遇の原因に思いをめぐらせることは、何を意味するのでしょうか。

 実は、不遇な状況は、自分の至らなかった点に気付くチャンスなのです。逆にいえば、不遇な状況に追い込まれない限り、自分の行動の良しあしに思いをめぐらすことはないのではないでしょうか。

 ビジネスで何をやってもうまくいく、上昇気流に乗っている時期を考えてみましょう。こういう時期は、文字どおり何をやってもうまくいき、不遇とはまったく無縁の日々が続くでしょう。

 何をやってもうまくいく時期は、気分がいいですよね。ただ、こういう時期は、自分の行動の良しあしに思いをめぐらせにくいのです。自分の思ったとおりに物事が進んで、成功しているのですから、自分の行動は常に正しいと思い込んでしまうのも無理はありません。

 しかしこのようなとき、自分の行動の悪いところに気付かず、多くの人を傷つけている場合があるのです。何をやってもうまくいく時期に、多くの人から反感を買い、ちょっとしたすきをついて、周囲の人があなたを引きずり下ろしにかかることがあります。

 話を元に戻しますと、何をやってもうまくいかず、不遇なときは自分の悪いところに気付くチャンスといえます。つまり、不遇は自分を見直すチャンス、人格陶冶のチャンスだと私は思います。

3.不遇な状況に追い込んだ人に感謝する

 不遇な状況によって自分を見つめ直し、人格陶冶のチャンスにできると考えられれば、不遇な状況に感謝の念を覚えます。不思議なものですが、不遇とか失敗とか、すべてが経験と思うことができるようになります。不遇な状況に追い込んだ人に感謝する気持ちにすらなります。

 不遇な状況になった経験のある方にしてみれば、自分の足を引っ張った人に感謝することは困難でしょう。しかし、私の説明のように考えることができれば、あなたを不遇に追い込んだ人を恨むことにわざわざ時間を浪費せずに済みます。前向きに不遇の原因を考えて、以後の人生の教訓にするという発想の転換ができます。

 このような3ステップの思考を経ることで、不遇な時期を自分の人格陶冶の時期として前向きにとらえ、不遇に陥れた人に感謝の気持ちを持ち、心の安定を得ることができます。つまり「八風吹けども動ぜず天辺の月」の心境となることができます。

不遇は英雄になるためのステップ

 こういった心境になることについて、理屈としてはご理解いただくことができたとしても、実際に不遇な立場に追い込まれた経験のある人は、「きれいごとでは語りつくせない怒りや不快感はどうしても残る」というかもしれません。

 私も不遇な状況に追い込まれたことが何度かあります。自分を陥れた人たちを恨む気持ちが、どうしても消し去れないこともありました。

 しかし、怒りや不快感だけを中心に人生を歩むのは前向きではありません。

 今回の説明でどうしても気持ちを整理できない場合には、歴史をひもとくことをお勧めします。歴史をひもとけば、どんな英雄でも不遇のときがあると分かります。不遇の状況は英雄になるためのプロセスであるといえましょう。

 自分の意志を曲げていては英雄にはなれないのです。歴史上の英雄とはいわれないまでも、まともな人間になりたい、誠実に生きたいと思うのであれば、意志を曲げてはいけないときがあるのです。

 今回は、「八風吹けども動ぜず天辺の月」の八風のうち毀や譏に当たるものが自分に降りかかってきたとき、いかに心の動揺を抑えるかという点について説明しました。次回、具体的な歴史上の英雄として、西郷隆盛の不遇な時期を例に挙げ、不遇な時期にいかに「八風吹けども動ぜず天辺の月」という心境でいることができるかについて、考えてみたいと思います。どうぞご期待ください。

 

今回のインデックス
 ITエンジニアを続けるうえでのヒント(16) (1ページ)
 ITエンジニアを続けるうえでのヒント(16) (2ページ)

筆者プロフィール
野村隆●大手総合コンサルティング会社のシニアマネージャ。無料メールマガジン「ITのスキルアップにリーダーシップ!」主催。早稲田大学卒業。金融・通信業界の基幹業務改革・大規模システム導入プロジェクトに多数参画。ITバブルのころには、少数精鋭からなるITベンチャー立ち上げに参加。大規模(重厚長大)から小規模(軽薄短小)まで、さまざまなプロジェクト管理を経験。SIプロジェクトのリーダーシップについてのサイト、ITエンジニア向け英語教材サイトも運営。


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