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ITエンジニアを続けるうえでのヒント〜あるプロジェクトマネージャの“私点”


第16回 自分を陥れた人に感謝する理由

野村隆(eLeader主催)
2006/7/12


将来に不安を感じないITエンジニアはいない。新しいハードウェアやソフトウェア、開発方法論、さらには管理職になるときなど――。さまざまな場面でエンジニアは悩む。それらに対して誰にも当てはまる絶対的な解はないかもしれない。本連載では、あるプロジェクトマネージャ個人の視点=“私点”からそれらの悩みの背後にあるものに迫り、ITエンジニアを続けるうえでのヒントや参考になればと願っている。

リーダーシップトライアングルにおける位置付け

 この連載では、システム開発プロジェクトにおけるリーダーシップを中心に「私の視点=私点」を皆さんにお届けしています。

 今回は、前回「困難に立ち向かうリーダー、逃げるリーダー」の続編に当たります。内容は前回同様、リーダーシップトライアングルのLoveとCommunicationに関係します。Loveについては、第10回「正しいことをし、行動力を発揮するココロ」を、Communicationについては、第8回「コミュニケーションはリーダーシップの基礎」を、それぞれ参照いただければと思います。

図1 リーダーシップトライアングル。今回は「Love」(ココロ)と「Communication」に関連する内容について解説する

人の心を動揺させる8要素

 前回、「八風吹けども動ぜず天辺の月」という禅の言葉を紹介しました。

 おさらいになりますが、八風とは、人の心を動揺させる8つの要素のことです。具体的には、利、衰、毀(き)、誉、称、譏(ぎ)、苦、楽の8要素のことです。

 利・衰とは、利益を得ること・失うこと。
 毀・誉とは、陰に隠れてそしること・ほめること。
 称・譏とは、面と向かってほめること・そしること。
 苦・楽とは、文字どおり、苦しいこと、楽しいこと。

 「八風吹けども動ぜず天辺の月」とは、人の心を動揺させる要素にいちいち動ぜず、しっかりした心の根を張ることに留意すれば、八風が吹いても動揺しない天の月のようなココロを持ち得ることと理解しています。

 今回は、八風のうち毀や譏に当たること、つまり陰口や陰湿なイジメ、人前で中傷されたり非難されたりといったことが自分に降りかかったとき、いかに心の動揺を抑えるかという点を中心に話を進めます。

 程度にはいろいろでしょうが、皆さん、不遇な時期を過ごされたことがあると思います。

 そういう時期にいかに動揺しない心を維持できるか、前向きな心を維持できるかは、ストレスの多い現代社会において非常に重要なことだと思います。

対立を恐れず、志を貫く

 前回、心の根をしっかりと張ることに関連して、「八風吹けども動ぜず天辺の月」とともに「自ら反(かえり)みて縮(なお)くんば、千万人と雖(いえど)も吾往かん」という孟子の言葉も紹介しました。

 「自ら反みて縮くんば、千万人と雖も吾往かん」という志を貫くと、時として他人と意見が合わない状況に陥ります。自分の意志を貫くということは、自分と意見が合わない人と対決することなのです。

 ここで意見の対立に際しての知恵として「対立の構図を上手に利用し、対立関係を社外の組織や社内の別組織につくる」ことを紹介します。自分の所属する組織以外を相手にすることで、自分の所属する組織の団結を保ちつつ対立関係をつくることができます。

 例えば、あなたがITコンサルタントであれば、クライアント対自社という対立関係をつくり、自分の所属する組織、すなわち自社の団結を保つことができます。あなたがSEであれば、ソフトウェアベンダ対自社の対立、あなたが社内情報システム部門の部員であれば、システムユーザー部門対情報システム部門の対立という構図です。

 このように、上手に対決の構図を描くことで、自分の所属する組織内での無用の対決をなくすことができます。できるだけ自分の所属する組織対外部組織という構図をつくりたいものです。

 しかし、自分の上司と意見が合わないときには、自分の所属する組織という狭い範囲内での対決となってしまいます。こういった対決は人事評価と直結することが多いので、対決をちゅうちょしてしまう場合もあるでしょう。

 ただ、こういった場合でも自分が正しいと思うことを曲げるべきではありません。徹底的に議論するべきです。

 「自ら反みて縮くんば、千万人と雖も吾往かん」という志を貫き、正しいと自分が信じることを行わないと、連載第10回「正しいことをし、行動力を発揮するココロ」で紹介した、不正が横行する組織をつくり上げる手助けをすることになってしまいます。

 あなたの上司が「聞く耳を持つ」ことができる人であれば、あなたの意見が通るかは別にしても、ちゃんと話を聞いてくれるはずです。

 とはいえ、聞く耳を持たない物分かりの悪い上司に当たってしまうこともあります。その場合、人事評価と直結してしまいます。時には上司の心ない仕打ちのために、あなたが不遇な扱いを受けるときもあるでしょう。

 それはつまり「八風吹けども動ぜず天辺の月」でいう八風のうち毀や譏に当たることが自分の身に降りかかってきたといえます。そんなとき、不遇な状況や周囲からの批評・批判に耐えることができないと、自分の心をコントロールできなくなります。

   

今回のインデックス
 ITエンジニアを続けるうえでのヒント(16) (1ページ)
 ITエンジニアを続けるうえでのヒント(16) (2ページ)

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