第1回 自分の転機にやりたいことをやってみよう
鈴木麻紀(@ITジョブエージェント担当)
2007/5/14
やりたいことってなんだろう。その見つけ方から実現の仕方までを含め、さまざまなことをキャリアカウンセラーが“楽しく”指南します。 |
■それぞれの転機
先日、キャリアカウンセラー養成トレーニングの同級生同士で集まる機会がありました。クラスメートだった1人が長年勤めていた会社を退職して海外に留学することになり、その壮行会を行うためです。
トレーニング終了から約3年、それぞれが近況を報告しあうと、驚いたことに実に半数以上のメンバーが何らかの「転機」を迎えていました。転機の内容は留学、転職、結婚などさまざまですが、共通していえるのは「まったく新しい選択」をしたということです。年齢も性別も職業もバラバラなメンバーが、一定の時期にキャリアの転機=トランジションを迎えていたのです。
キャリアカウンセラー養成トレーニングは約3カ月。理論や法律を学び、お互いをカウンセリングしあったり、アセスメント(診断)ツールを使って自分1人では気が付かなかった志向を引き出したりする訓練を行いました。トレーニングはキャリア構築に悩む人の支援をする力を付けるためのものですが、どうやら私たちは、そのトレーニング期間を通じて自分自身のキャリアについても見つめ直し、トランジションを迎える準備をしていたようです。
その中の1人、それまでとは違う職種に転職した男性がこんなことをいっていました。「ある日、自分のキャリアを振り返ってみたら、自分の人生は“できること”の範囲での選択が多かったことに気が付いた。そして30代半ばになって将来を考えて、このまま“できること”だけ続けていいのだろうか。いまこそ“やりたいこと”を優先させてみるべきときなのではないか、と思ったんだ」
■できることとやりたいこと
普通に考えたら、30代で未経験の職種にチャレンジするのは大変勇気のいることです。彼もキャリアカウンセラーですから、それが困難な選択であることは重々承知していたことでしょう。しかし、それでも彼は決断しました。
就職や転職、現在の仕事に行き詰まったときなど、キャリアのターニングポイントとなる瞬間に、できることとやりたいことのどちらを優先させるべきか悩んだ経験が、誰しも1度はあるのではないかと思います。
あらためて説明するまでもありませんが、転職や異動などで環境が変わるときは、いままで経験してきて実績のあること=できることをベースにする方が、心理的にも経済的にも負担が少なく、リスクを回避することができます。しかしできることの範囲内で選択を重ねていくと、だんだん選択肢が限られ自分の可能性が狭まっていくような気もしてきます。
「せっかく新しい環境になるのに、いままでと同じことをしていたら環境を変える意味がない。たとえ、失敗したっていいじゃないか。年を取って自分の人生を振り返ったときに、やりたいことをやって失敗したことよりも、やりたいことをやらなかったことの方が後悔するだろう」。このような思いが、前述の男性にやりたいことへのチャレンジを決意させた背景にはあったようです。
■1度はチャレンジすべし、やりたいこと
個人的な考えですが、私はやりたいことがある人は、1度はチャレンジしてみたらよいと思います。自分のやりたいことが分からないという人も多いのに、やりたいことがあるということは、それだけで幸せなことだと思うからです。
とはいえ、そんなに簡単にいわれてもやりたいことを実現させるためにはさまざまな障害があって難しいのだ、とおっしゃる方もいるでしょう。でも、例えばその1つ、もしあなたがやりたいことを「できないから」という理由で躊躇(ちゅうちょ)しているのだとしたら、恐れることはないのではないでしょうか。最初から何でもできる人はいません。やりたいことなんですから、やってからできるようになればいいのです。
ただし、ただ「やりたいな」と思っているだけでは、やりたいことはいつまでたってもできません。では、どうやったらやりたいことを実現できるのでしょうか。まず、自分の心の中を整理して、「それは、思いつきやあこがれ程度のものではないか」「どうしても、それをやりたいのか」「どうやったら、それをやれるのだろうか」をじっくり考えてみましょう。そうして、“やりたいこと”とその実現のためにやるべきことが明確になったら、次はやるべきことの着手=準備期間です。勉強する、資格を取るなどの知識の蓄積や、業務外やプライベートでやるべきことに近い要素を持つものごとに携わるなど、いろいろな方法が考えられます。
この準備期間は、とても重要です。準備期間を作ることで、現時点での適応度の目星がつきますし、もしかしたら準備していく中で、自分がやりたいことだと思っていたことが実はそれほどのものではないことに気が付いたり、ほかのもっとやりたいことが見つかるかもしれません。たとえ不幸な気付きでも、本実行の前に気が付いたのならそれはそれで大切な発見です。そのためにも、この準備期間が必要なのです。
■やりたいことの見つけ方
では、やりたいことが分からない場合はどうしたらよいのでしょう。そもそもやりたいこととは何なのでしょう。アイティメディアが運営している「@ITジョブエージェント」という総合転職支援サービスの中に、履歴書などの転職に関係するテンプレート集をダウンロードできる「転職パッケージ」というサービスがあります。この中の「自分意思確認シート」というワークシートを使って、やりたいことを見つけるエクササイズをしてみましょう。
1. 真っ白い紙を、上の図のように24個のマス目に区切ります。
2. 次に、あなたが仕事に対して期待していることや仕事から得たいことなどを、1マスに1つずつ記入します。
例:「年収600万円以上」「社会貢献できる」「充実感」「役職」「尊敬できる先輩」「リーズナブルな社食」「メンバーの仲が良い」など
3. すべてのマスに記入したら、マスごとに切り分けて、24枚のピースにします。
4. 切り分けたピースを1つ1つ検討しながら、「Must」と「Want」にちょうど半分ずつになるように置きます(上の図を参照のこと)。
5. 「Must」に置かれたピースだけをもう1度、「Must」と「Want」に2分割します。
6. これを3回繰り返すと、最後に3枚のピースが残ります。
あなたが最後に選んだ3枚にはどんな言葉が書いてありますか。この3枚に書かれた言葉は、あなたが仕事をするうえで、最も大切にしたいこと=仕事に対する価値観を表す言葉です。
このエクササイズでは、あなたのやりたいことそのものまでは見つかりません。しかし、最後の3枚に選んだ言葉はあなたのやりたいことの要素です。この3枚が実現できる仕事や生き方を考えること、そして、数々の希望の中から取捨選択していく過程の中から、やりたいことの形や方向性が見えてきたのではないでしょうか。
■やりたいことを実現させるために
最後に、やりたいことを実現させるための秘けつを1つ書きましょう。それは「何とかなる」という気持ちです。いい換えれば、「僕(私)なら何とかできる」という自信を自分に対して持つことです。
たとえ、どんなに難しいチャレンジでもまったく未知の領域でも、それを成し遂げる力が自分にはあると信じることができたら、そのチャレンジはすでに半分成功しているといってもよいでしょう。そのためにも、自分自身が信頼できる自分であること、これがやりたいことを成功させるポイントです。
この文章を読んでいるあなたが、いつかやりたいことに向かって自信を持って進む日が来ることを、心から願って筆を置きます。
筆者プロフィール |
GCDF-Japanキャリアカウンセラー。ITサービス系人材ビジネス会社で、人事採用とキャリアカウンセリングに約6年間従事。2004年春、アットマーク・アイティ(現アイティメディア)入社。現在@ITジョブエージェントなどを担当している。 |
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