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今週のリーダー

第10回 きつくいわない命令もしない。むしろ文句をいってくれ


荒井亜子 (@IT自分戦略研究所)
岩井玲文(撮影)
2009/4/6


平賀博司 (ひらがひろし) 日本オラクル オラクルユニバーシティ システム研修部 部長 1970年4月6日、東京都出身。東京理科大学卒業。1993年4月、電車好きが高じ、鉄道情報システム(JRシステム)に入社。「旅行業務取扱主任者」の資格を生かし、マルスシステムに関連する列車の予約状況を確認するためのシステム構築に携わる。あるとき配属されたプロジェクトでOracleに出合い、エンジニア魂をくすぐられてしまう。2000年6月、大好きな電車を捨て、日本オラクルに転職。日本にいながらOracle E-Business Suite(Oracle EBS)製品の米国開発チームに所属。2005年6月、研修部門 オラクルユニバーシティに異動。インストラクターとして、Oracle EBS、Oracleデータベース、プログラミングなど、技術を幅広く教える。2007年12月、同部門のマネージャに就任し現在に至る。オラクル入社後も北海道出張ですら飛行機を使わない。やっぱり電車は捨てられない。

「製品」と「トレーニングコース」と「講師」のパズル

 現在僕は、オラクルユニバーシティの研修部門で15人の講師をマネジメントしています。この部門では、Oracle製品を使ってくださるパートナー企業やユーザー企業の方に対し、トレーニングコースを提供しています。

 トレーニングコースは、製品のマーケティング戦略に大きく左右されます。山のようにある製品の中から、日本オラクルとしてどの製品を売っていくのか、パートナー企業に何を売ってもらうのか。グローバル、営業、マーケティング、ライセンスといったいろいろな部門が意見を寄せ合い、製品の日本市場展開に優先順位を付けていきます。

 売る製品が決まったら、そのレベルや提供時期に合わせてトレーニングコースを設置します。そこで、どの講師に、いつ、何のトレーニングコースを担当させるか、アサイン調整を行うのが僕の役割です。

 インストラクターは、新しい製品が出るたびにその技術を習得することが求められます。トレーニングする製品の数が増えてもインストラクターの数はそうそう増えませんので、必然的に1人の講師がいろんな製品技術を教えることになります。講師のスケジュールとスキルセット、トレーニングコース提供時期とのバランスを考えながら、できるだけ講師の得意分野を生かし、効率良くトレーニングコースを割り振らなければなりません。日本市場では広く浸透していない製品だったら、米国から講師を呼び英語でトレーニングコースを提供することも視野に入れつつ、製品とトレーニングコースと講師、それぞれのパズルをうまく組み立てるのが非常に難しいところです。

部下を説得する気はない、納得してもらうだけ

 講師のアサイン調整は、(上記で挙げたような)効率だけで決められることではありません。講師1人1人のキャリアにも大きくかかわることですから、事務的に処理することが正しいとは、僕は思いません。

 講師本人がやりたいことと会社の方針、この2つに折り合いを付けることはマネージャとして重要な責務です。そのために心掛けていることとして、まずは本人が何をしたくて、何に興味があるのか聞くようにしています。会社としての方針を伝えるのはその後です。会社の方針が部門の方針として落ちてくるのですが、伝えるときはそのままをきちんと話すようにしています。伝えた後、いったんは本人の中で、自分が求めているものと会社の方針を並べて考える時間を与えます。こうして少し時間を置いて、本人の口から何をどういうふうにやっていくかを話してもらい、適宜補正します。

 任務に対し、本人に「やりたい」と思ってもらうか、「やらざるを得ない」と思ってもらわないといけないと思うんです。ネガティブな意味ではなく、いい意味であきらめ感を持ってもらう。やらざるを得ないというところに納得してもらうのがポイントかな。僕は、部下を説得するつもりはまったくないので。

 説得しても本人は納得していないことが多いんです。嫌々取り組んだりしちゃう。説得って部下からすれば命令と同じなんです。僕自身、命令されるのが嫌なので、それは部下にもしません。問題は、納得してもらえるようにどうやって話すかですよね。1つは、相手のリアクションを予測して話すことです。「こう来たらこう返そう」というふうに、答えを用意しておく。想定するって、マネージャにすごく大切な能力だと思います。ひところ「想定外でした」という言葉がはやりましたが、あれはダメですね。想定しないと。

敬語はいらない

 ただ、僕の話をうのみにはしないで、意見はいってほしい。役職が上がると、部下からいい話は伝わってくるのですが、悪い話はなかなか伝わってこなくなります。こらえていることがたくさんあるのかもしれないのですが、可能な限り文句もいってもらうようにしています。実際、どこまで本音をいってもらえているか定かではないですが。

 なぜ文句をいってもらうか。文句をいってくれるということは、カウンターパートを用意できたり、納得してもらうためのポイントを見つけることができるからです。何に文句があるかが分からないと、一方的な説得になってしまいます。

 文句をいってもらうには、いえる雰囲気づくりが重要。幸い、いまの部署のメンバーは、僕がマネージャになる以前、一緒にインストラクターをしていた人たちですから、(僕がマネージャになる)前の状態のまま「です」「ます」なしで会話をしています。僕はそれで構わないと思っています。敬語はいらない。

 マネージャって、たまたまその取りまとめの役割を担っているだけですよね。役割として権限が付いているだけの話で、人間として上とか下とかはない。やっている仕事だって、結局はチームで同じ目標に向かって価値を生み出そうとしているわけで。

 むしろ、敬語で一線を引いた瞬間に、お互いいいたいことがいえなくなるような気がします。もちろん、僕自身も思っていることは全部いいますよ。こういう僕の考えや手の内も、部下には包み隠さず見せています。あとは、強くいうと命令になるから、強くはいわないように気を付けています。

悪いことは口頭、良いことはメールでも

 研修部みんな、すごく仲がいいんですよ。それは、いいたいことがいえるという良い面もありますが、悪い面もあります。お互い甘えてしまい、ナアナアになりやすいので、それだけは防ごうと思っています。

 きつくいわないし命令もしない。けど、最低限のビジネス的なことで業務指導はします。期限に遅れそうになって報告がないときなどでしょうか。

 業務指導は難しいです。いい方1つで事態が変わる。コツとしては、できるだけ悪い方の指摘はメールではなく口頭でいうこと。文面ではきつく伝わるので。

 メールは、単なる連絡事項や良かったことを褒めるときに使います。素早く共有できますから。でも、注意と必ず伝えたいことは口頭で伝えます

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