第13回 キャラクターの生死を懸けて新技術を模索する
荒井亜子(@IT自分戦略研究所)
岩井玲文(撮影)
2009/4/27
轟智則(とどろきとものり) 花咲けピクチャーズ チーフデザイナー 1977年11月10日、新潟県出身。東北芸術工科大学デザイン工学部情報デザイン学科卒業。学生時代から3Dキャラクター制作に携わる。1999年、花咲けピクチャーズの代表取締役 勝野明彦氏と出会う。「VRML」(Virtual Reality Modeling Language)に衝撃を受け、2000年、花咲けピクチャーズに就職。現在は、アバナビの機能開発・実装、製品のクオリティ管理、キャラクター創出プロジェクトの推進に携わる。 |
■若い社員が創出するキャラクターの生きる道を作りたい
わたしの現在の主業務は、アバナビの開発・実装です。アバナビというのは、キャラクターがWebサイト上に飛び出し、解説するサービスです(*1)。既存のHTML上にFlashで動画を配信したり、3Dで作ったキャラクターのアニメーションをFlash化して配信する仕組みで成り立っています。管理画面ではPHPを使っています。
(*1)ここをクリックすると、アバナビを体験できます |
アバナビに関する業務は、企画・構想→仕様決め→要件定義→開発→実装→テストと、運用は別にしても、ほぼ自分1人で行っています。コーディングもするし、3D制作もする、エンジニアとデザイナー兼任です。
花咲けピクチャーズはもともと、キャラクター制作の会社です。ですからほとんどの社員はキャラクターデザイナーです。わたしには、彼らが作るキャラクターをどうにかして世に出せないかという思いがあります。真に自分の中(アイデア)から生まれたキャラクターは、本当に子どものような存在。死んでしまうキャラクターを作りたくない。みんなが魂込めて作ったキャラクターをどのようなサービスなら生かせるのかを常に考えていて、その1つがアバナビというわけです。
わたしもキャラクターを作りますが、キャラクター制作は若い社員がメインで活躍していってくれればいいと思っています。わたしはそのステージを作っていけたらいいなと。若い社員にはどんどん自己表現の場を提供したいのです。自分も会社に見つけられ育てられたという思いがあるから、いまはその恩返しをしたいという気持ちです。
企業でデザイナーをやっているとなかなか自己表現ができないのではないでしょうか。うちの社員は全員新卒入社で、社員の平均年齢は24〜25歳。そういう年ごろの人が、普通に企業で働いて、自分で創作したものを世に出すことはとても難しいと思います。
デザイナーとして自分の作品を世に出したいという欲求に対して、現在はアバナビという表現手段で実現を手助けしていますが、今後はアバナビ以外でもキャラクターを生かせる道を模索したいと思っています。
■リーダーとして新技術を追い求める
そのために、わたしは常に新しい技術を試し、開発していこうと考えています。アバナビも開発当初の2002年ごろは、Flashではなくマニアックな海外の再生ソフトで作っていました。日本にはない技術を取り入れたので、英語ができないのに、英語のマニュアルを読んで作ったりして……。
いま注目している技術は、Flash 3Dです。アバナビと絡めた新サービスが近々完成予定です。現在のアバナビは、出来上がった動画を配信して、ユーザーがWeb上でキャラクターを見るという仕組みです。それを動画にせず3Dデータのままユーザーに見せることで、リアルタイムに動くデータを作ることができます。例えば、Webページ上でユーザーがキャラクターに対し、「左に向かせたい」「ある服を着せたい」「横からのアングルで見たい」といった要望を、リアルタイムで操作し実現できます。ほかにも、Webページに来た人に、キャラクターが出てきてあいさつをするといったように、ユーザーがユーザーにおもてなしするようなWebページを作れます。Webページはどうしても冷たい感じがするので、キャラクターの感情表現を通して、少しでも温かいWebページを作りたいと考えています。
リーダーとして、常に新しい技術を追い求めていきたいのですが、技術を広くとらえすぎると時間が足りなくなってしまいます。当面は、「Web+キャラクター」に焦点を絞り、そこに合致する技術をキャッチアップしていきたいと思っています。
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