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@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(8)
『波乱の時代』(下)も読む

@IT自分戦略研究所 書評チーム
2008/7/24

■サブプライム問題とグリーンスパン

 アラン・グリーンスパン氏は2006年1月に連邦準備制度理事会(FRB)の議長を退いた。米国の住宅バブル(housing bubble)が膨らんでいくその途中で。野村総合研究所のチーフ・エコノミスト リチャード・クー氏によると、グリーンスパン氏のサブプライム問題に対する懸念は割に楽観的なものだったという。しかし、ご存じのように、米国に限らず、世界中の経済がサブプライム問題の余波を受け、大変な苦境にある。

波乱の時代(下)

アラン・グリーンスパン著
山岡洋一/高遠裕子翻訳
日本経済新聞出版社
2007年11月
ISBN-10:453235286X
ISBN-13:978-4532352868
2100円(税込み)

 2000年1月、グリーンスパン氏は故宮沢喜一氏(当時大蔵大臣)と会談した。話題は日本の銀行システム悪化の分析だった。彼は、米国が整理信託公社(RTC)を設立し、経営危機に陥った約750の貯蓄金融機関(S&L)の資産を処分したこと、売れる見込みがないと思えた不動産が売却できると、まもなく不動産市況が回復し、規模が小さくなった新生貯蓄業界が活気づき始めたことを話した(『波乱の時代』下 p.56)。

 しかし、いまから思えば、このときにサブプライム問題の病巣が水面下で静かに拡大していた。2年間で1兆ドルの資金がサブプライム市場に流れ込んだといわれる。米国で住宅価格が下落傾向に入ったのは約70年ぶりのことである。グリーンスパン氏が住宅バブルに警告を与えていれば、あるいは、このような事態を回避できた可能性が少しは生じたとされているが、実際、彼は箝口令(かんこうれい)をしいてバブルの兆候を市場から隠ぺいしようとしていた。グリーンスパン氏の理論では、住宅バブルは自然消滅するはずだった。

 1990年から2005年の間の日本経済の停滞についてグリーンスパン氏は、RTCのような方式を採用していれば、調整期間の短縮が図れたのではないかとしている。具体的には、経営危機に陥った貯蓄金融機関を破たんさせること、資産を清算機関に渡すこと、資産を大幅に割り引いて処分し、不動産市場を再活性化させること。

 もちろん、宮沢氏はこれらの策をすべて退けた。公的資金を注入することで金融機関を救済したのは新聞、テレビで連日報道されたとおりである。その結果、商業不動産価格は下がったが、奇跡的にGDPは下落しなかった。

 サブプライム後の米国は、日本のバブル不況の状況に酷似した苦境に陥っている。

 2008年7月14〜15日にかけて、新聞に米政府および議会が、米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)への経営支援策の協議を急ぐとの報道が載った。ポールソン財務長官は「公的資金の注入」でこの危機の打開を図ろうとしている(鰆)。

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