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@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(105)
「やる気の出ない」5月に働く意味を考える

@IT自分戦略研究所 書評チーム
2009/5/19

■仕事を通じて自分を高め、人生を豊かにする

 「5月病」なる言葉がある。4月の入社や異動など環境変化が一段落して、ビジネスパーソンは「はっ」と気付く。「仕事、仕事の毎日が定年まで続くんだ」。オウム事件の際、「終わりなき日常」という言葉がはやったがビジネスパーソンにとっては「終わりなき仕事」だ。高度経済成長期のように給与が上がり、耐久消費財が増えていく日々を幸せと実感できた時代とは違う。働く意義をどこに見いだせばいいのか……。そんな5月病ぎみの方にお勧めの2冊。

『無趣味のすすめ』(村上龍 著)

無趣味のすすめ

村上龍著
幻冬舎
2009年3月
ISBN-10:4344016610
ISBN-13:978-4344016613
1260円(税込み)

 本書は雑誌『ゲーテ』の連載コラムに加筆修正したもの。連載を始めるに当たって、村上氏が編集部から依頼されたテーマは「仕事における品格・美学」だった。村上氏はこの価値観に疑問を呈する。「仕事で重要なのは目標を設定してやり遂げること、そして成功すること」(『無趣味のすすめ』、p.97)だ。

 38本のコラム(1コラム当たり800字程度)には仕事に関連したものが多い。経済人や著名人との対談を多数こなしている村上氏から発せられる仕事観には重みがある。本書のタイトルにもなっている「無趣味のすすめ」から少し長いが引用しよう。

 「真の達成感や充実感は、多大なコストとリスクと危機感を伴った作業の中にあり、常に失意や絶望と隣り合わせに存在している。つまり、それらはわたしたちの『仕事』の中にしかない」(本書、p.10)

 そのほか、読み手の仕事観を刺激する次のようなコラムがある。

  • トラブルの種類

  • ビジネスと読書

  • リーダーの役割

  • スケジュール管理

  • モチベーションと希望

  • 部下は「掌握」すべきなのか

  • 後悔のない転職

  • ビジネスにおける文章

  • 企画の立て方

 本文のトーンは「デキる奴の、身もふたもない、カミソリのような意見」。痛快と思うか、辛らつと思うかは読み手次第だ。後者の方には、次の書籍を勧めたい。

『働き方』(稲盛和夫 著)

働き方

稲盛和夫著
三笠書房
2009年4月
ISBN-10:4837923100
ISBN-13:978-4837923107
1470円(税込み)

 いわずと知れた京セラ創業者(現名誉会長)の著書。著者には『生き方』(サンマーク出版)、『成功への情熱』(PHP研究所)など、ビジネスパーソンに向けた講話的な著書が多いが、本書もそのたぐいだ。エピローグでは、自身の体験から得た仕事観・人生観を方程式で表現している。

 人生・仕事の結果=考え方×熱意(努力)×能力

 本書は、この方程式の積を高めるため、仕事への取り組み姿勢を訥々(とつとつ)と説明している。6章からなる本文は次のとおり。

 1章:「心を高める」ために働く−−なぜ働くのか

 2章:「仕事を好きになる」ように働く−−いかに仕事に取り組むか

 3章:「高い目標」を掲げて働く−−誰にも負けない努力を重ねる

 4章:今日一日を「一生懸命」に働く−−継続は力なり

 5章:「完璧主義」で働く−−いかにいい仕事をするか

 6章:「創造的」に働く−−日々、創意工夫を重ねる

 著者の仕事への取り組み姿勢は厳しい。京セラ社長時代のエピソードがいくつか出てくるが、自分が部下だったらと想像するとぞっとするものばかりだ。しかし、臨済宗で得度した著者だけあって、厳しさの中に若い世代に向けた慈しみが感じられる。働く意義を見いだせない方には本書から次の一文を送りたい。

 「労働の意義は、業績の追求にのみあるのではなく、個人の内的完成にこそある」(『働き方』、p.21)。

 トーンは異なるものの、この2冊に共通するのは「仕事=経済的充足」のみではなく、「仕事を通じて自分を高め、人生を豊かにする」という考え方だ。さあ、いま目の前にある仕事に打ち込もうではないか。(鯖)

本を読む前に
働く妹たちへ (@IT自分戦略研究所)
働く女は「戦わずして勝つ」 (@IT自分戦略研究所)
ITエンジニアの働く環境を考える インデックス (@IT自分戦略研究所)

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