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@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(107)
脳をリファクタリングせよ

@IT自分戦略研究所 書評チーム
2009/5/29

■コンテキストを考慮する

リファクタリング・ウェットウェア 達人プログラマーの思考法と学習法

アンディ・ハント(著)
武舎広幸、武舎るみ(訳)
オライリージャパン
2009年4月
ISBN-10:4873114039
ISBN-13:978-4873114033
2940円(税込み)

 本書は頭脳の再設計と再配線(「ウェットウェア」の「リファクタリング」)による仕事の効率アップを目的としている。プログラマやエンジニアに限らず、自らの頭で何かを創造する人(=ナレッジワーカー)すべてが対象読者だ。

 上記の目的を達成するため、第1章から第4章で「なぜ脳が脳として機能するのか」を解き明かす。第1章では「ドレイファス兄弟の技能習得モデル」を基に、人間を「初心者」「中級者」「上級者」「熟練者」「達人」の5段階に分類し、達人になるためのコツを説明する。第2章から第4章にかけて、脳の構造や「直感」の利用法、さらにはバグの多い「人間のアタマ」のデバッグ法を解説する。第5章以降は脳の具体的な活用法について、「学習」「経験」「集中」の3テーマに沿って取り上げる。

 著者は随所で「文脈(コンテキスト)」に言及する。世の中のありとあらゆることは独立して存在しているのではなく、それぞれが関連しており、なおかつ周囲の状況や文脈(コンテキスト)の一部分として世界に組み込まれている。ささいだと思われていた物事が結果的に大きな事件の原因となったり、逆に大変だと思われていたことがそれほどの影響を及ぼさずに終わったりすることがある。現実の世界は非線形なのである。「脳」というCPUもまた非線形の要素を持っており、「学習」「経験」「集中」がわたしたちにもたらす効果もまた非線形である。

 本書では下記のような内容の「さっそく実行」「試してみること」というリストが各所に挿入されている。

  • 気に入っているソフトウェアの簡単なリストと、好きになれないソフトウェアのリストを作ります。その選択に際して、美意識が果たした役割はどのくらいですか?

  • 次に開発するソフトウェアの設計を、キーボードとモニタを離れてやってみましょう

  • お気に入りのレストランで、食べたことのない料理を注文してみましょう

  • いま進めているプロジェクトを、比ゆを使って検討してみましょう

  • 自分の最も優れた知能は何か考えてください。仕事で一番使うものはどれですか。最も優れた知能は仕事とうまく合っているでしょうか?

  • 次に読む本でマインドマップを作りましょう

  • 達人になりきってください。見せ掛けだけではなく、実際に達人の役割を「演じて」ください。自分の振る舞いにどんな変化が表れるか注目してください

 これらを行うとなぜ良いのか、これらがどんな効果をもたらすのか、にわかには分からないだろう。なぜならすべては文脈(コンテキスト)に沿って存在するからである。

 なお、本書で挙げられている方法の中には、科学的根拠が不明であるものが少なくない。だが、著者はそれを問題ないと断じる。「人は文脈(コンテキスト)に依存し、十人十色」ではあるが、同時にすべてはつながって影響し合っており、本書で紹介されている方法はすでに「誰かがそれを行ってうまくいった」内容ばかりだからだ。その意味で、本書は極めてプラグマティック(実用主義的)なノウハウ本であるといえる。(鮪)

本を読む前に
勝負の行方は脳の鍛え方次第 (@IT自分戦略研究所)
Lispの仏さま 竹内郁雄の目力 (@IT自分戦略研究所)
5分で絶対に分かるマインドマップ (@IT自分戦略研究所)

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