@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(112)
「教養」と「楽観」がコンテキスト思考を支える
@IT自分戦略研究所 書評チーム
2009/7/30
■物語の重要性を認識する
事象(コンテンツ)の背後にある文脈(コンテキスト)に意識を集中して思考することをコンテキスト思考という。事象単体に注意を払うのではなく、ある事象とある事象との関係性に着目する。多くの場合コンテキストは顕在化していない。それゆえ、見過ごされがちだが、(目に見える)事象が生起する背後には必ずコンテキストが存在する。
コンテキスト思考 杉野幹人、内藤純(著) 東洋経済新報社 2009年6月 ISBN-10:4492556443 ISBN-13:978-4492556443 1680円(税込み) |
1990年代にニューヨーク市警は大々的な凶悪犯罪撲滅キャンペーンを展開した。その結果、1990年に年間2262件あった殺人事件が2007年には496件に減った。彼らは何をしたのか。凶悪犯罪の取り締まりを強化したのではない。彼らが行ったのは、地下鉄の落書きを消すことや駐車違反、未成年者の喫煙といった軽犯罪の取り締まりの強化だった。
彼らは軽犯罪から凶悪犯罪に至る人間の罪に対する「慣れ」を消そうとした。
軽犯罪を犯すことで、多くの場合、人は罪の意識が低下する。そのため、重犯罪に手を染めやすくなる。重犯罪がエスカレートし、凶悪犯罪へと発展する。
ニューヨーク市警は、軽犯罪と凶悪犯罪との関係性(コンテキスト)に着目したのだ。彼らは軽犯罪の取り締まり強化が凶悪犯罪の劇的な減少につながることを知っていた。
コンテキスト思考を実践するコツは物語の重要性を認識することから始まる。物語はコンテキストをコンテキストのまま運ぶことができる。小説が表現形態として抜群に優れているのはそういうことだ。大切なのはコンテンツではない。あくまでコンテキストなのである。
コンテキスト思考の土台となるのは「教養」と「楽観」である。教養とは、全体像を想像する資質のこと。コンテンツ同士の関係性を配慮する知性のことである。単なる物知りではない。そして、根拠不在の楽観が教養あふれた知性をさらに進化させる。(鯨)
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