@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(113)
仕切る力
@IT自分戦略研究所 書評チーム
2009/8/7
■会議の仕切り
ファシリテータは会議を仕切る。「会議を仕切る」とは「会議に出席したメンバーが主体となり、目的を達成できるように運営する」こと。ファシリテータの働きがあって初めて会議は有意義な活動として立ち上がる。ファシリテータ不在の会議はただの雑談にすぎない。極端なことをいえば。
会議の仕切りは(会議の)冒頭から始まる。
ファシリテーション 山崎将志(著) ファーストプレス 2007年1月 ISBN-10:4903241351 ISBN-13:978-4903241357 1260円(税込み) |
まずは会議自体の目的が参加者の間で共有されなければならない。これは欠かせない。目的地が設定されない旅の始まりは、苦難の第一歩と同義である。次に、各議題の説明を簡単に行う。「話し合いたい」のか、「調整したい」のか、「決めたい」のか、会議で話し合われる予定の議題について、それぞれの目的を明確にする。そして、確認の言葉(例えば「よござんすか、皆さん」)を発する。合意と確認はファシリテーションの基本行為だ。最後に時間配分と終了時間の宣言を行う。
以上が仕切りの初期設定である。
ファシリテータは右脳(情緒)と左脳(論理)のバランス感覚に優れた技術者である。参加者の口から繰り出されるさまざまな論点を逐次整理し、議論の大筋を“交通整理”しなければならない。参加者の複雑かつ繊細な心理を読みつつ、議論の本質を見極めながら冷静に論理を構築していくのだ。
論点整理にはコツがある。まずは、論点を一通り洗い出すこと。その際、ホワイトボードを使って可視化するとよい。論点間の関係性を見つけ出し、構造化する。可及的速やかに議論すべき論点を絞り出し、議論の俎上(そじょう)にのせる。
論点整理の過程でファシリテータは会議の参加者にいくつもの効果的な質問を発する。良い質問とは「頭の中の整理を支援する質問」のことである。このような質問は常に物事の具体的な姿を答えとして求める。物事の詳細は多くの場合、5W1Hで表現される。ゆえに、ファシリテータは「誰が」「なぜ」「いつ」「なにを」「どこで」「どのように」行ったのか(行うのか)をにこやかな笑顔と柔らかい口調で、しつこいくらいに聞く。なぜなら、ファシリテータは議論の土台が事実で組み立てられることの重要性を知悉(ちしつ)しているからだ。根拠のない印象や曖昧(あいまい)な感想では、まともな結論は導き出せないことを知っているからだ。(鯨)
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