@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(30)
ファシリテータの特殊なスキル
@IT自分戦略研究所 書評チーム
2008/8/26
■ファシリテータはリーダーではない
ファシリテーション入門 堀公俊(著) 日本経済新聞社 2004年7月 ISBN-10:4532110262 ISBN-13:978-4532110260 872円(税込み) |
ファシリテーションとは「集団による知的相互作用を促進する働き」(『ファシリテーション入門』、p.21)である。ファシリテーションを行う人をファシリテータという。多くの場合、彼は会議で活躍する。会議こそ「集団による知的相互作用を促進する」ことを目的とした場である。
ファシリテータはリーダーでも司会者でもない。ファシリテータは会議で検討すべきコンテンツには一切関与せず、プロセスのかじ取りだけに専念する。ただの進行役ではなく、「コミュニケーションの場をつくり、人と人をつないでチームの力を引き出し、多様な人々の思いをまとめて」(同書、p.24)いく役割を担う。
卓越したファシリテータにはいくつかの特殊なスキルが備わっている。
まずは「場をデザインするスキル」が挙げられる。場のデザインは5つの要素(「目的」「目標(方向性)」「規範」「プロセス」「メンバー」)で構成される。会議やプロジェクトを展開するには、「場」=スタート地点がなければいけない。スタート地点の設定次第で、その会議なりプロジェクトの成功・失敗が決まることが多い。
「対人関係のスキル」も重要だ。基本は「聴く力」「訊く力」「観る力」「応える力」の4つだ。相手がいっていることに真摯(しんし)に耳を傾け、的確な質問をする。言外のメッセージを感知し、要約といい換えを駆使しながら、会話をまとめていく。
「構造化のスキル」は、互いの議論が正しくかみ合うように橋渡しをする技術である。ロジカルシンキングがものをいう。いわゆる「論理の3点セット」とは、(1)話の前提となる知識、(2)根拠(理由)、(3)主張したい結論、の3つを指す。このフレームワークを有効に活用する。図を活用して、発言内容を目に見える形で構造化(そのために、ツリー型やサークル型、フロー型、マトリクス型などの図がある)したりもする。
「合意形成のスキル」は「異なるコンテクストから新しいコンテクストを生み出す」(同書、p.160)ファシリテーションの重要な技術だ。合理的な意志決定を行う際に活用できる方法として、大きく以下の4つがある。「メリット・デメリット法」「ペイオフマトリクス」「意志決定マトリクス」「イーブンスワップ法」。以上のような定量的な意志決定方法は確かに合理的だが、ビジネスの現場では必ずしも最良の結果を導き出すとは限らない。そのため、多数決や参加者のコンセンサスを得る「非合理的な」意志決定方法の重要さにも配慮すべきである。(鯖)
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