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@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(120)
プロジェクトの修羅場を乗り越えて

@IT自分戦略研究所 書評チーム
2009/10/2

■安定稼働までに5年

 連結売上高1兆円超の老舗大企業 古河電工で人事総務部門が人事BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」を敢行した。業務手順、担当部署、人事制度、情報システムなど人事総務部門が統括するさまざまな仕組みを変革した。プロジェクトの成果として代表的なものは、

  1. SSC(シェアード・サービス・センター:業務集約センター)を設立し、グループ企業30社の業務を1カ所に集約したこと

  2. 給与関連業務の効率を約40%向上させたこと

  3. 17拠点で28種類あった勤怠システムを1つに統合したこと

である。

プロジェクトファシリテーション

関尚弘、白川克(著)
日本経済新聞出版社
2009年8月
ISBN-10:4532314712
ISBN-13:978-4532314712
1890円(税込み)

 本社の経営陣や全国の工場に対し、230回の説明会を開催したほか、2300回の会議を通じて、アイデアを実現レベルまで具体化していった。

 プロジェクトの展開を維持するのは容易ではなかった。

 関係各所へのインタビューを繰り返しながら要件を固め、事業計画書を書き、経営会議に臨んだが、社長以下全役員から出直しを命じられたことがあった。敗因は何だったのか。伝え方が悪かった。40分の持ち時間に90ページの資料を用意する時点で失敗は確定していた。やりたいことがぼやけていたことも致命的だった。目的は人事BPRを行い、煩雑な業務フローをハブ&スポークの形態に整理し直すことだったが、プレゼンでは達成手段としてのシステムの構築をアピールし過ぎてしまった。熱意も足らなかった。(人事BPRの必要性を訴えるには)切迫感が希薄だった。

 プロジェクトを主導したのは古河電工 人事総務部門のプロジェクトチームだが、アドバイザーとしてケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズがプロジェクトを全面的にサポートした。

 ケンブリッジの最大の役割は「外圧」だった。業務プロセスの変革という作業は並大抵のエネルギーではなし得ない。現に稼働しているシステムに変更を加えるのである。抵抗勢力が存在しない方がおかしい。社内の一部門が声をあげるだけでは改革はなかなか先に進まない。改革を断行するには、外部の圧力がどうしても必要なのである。コンサルティング会社が担う「外圧」の役割はどんなプロジェクトでもけっして小さくはない。このプロジェクトでも同様だった。もちろん、ケンブリッジは、プロジェクトを展開するための実践的なノウハウの提供というコンサルタント的な機能も十分果たした。

 プロジェクトの立ち上げは2003年。システムが安定化のフェイズに入り、効率化が数字として現れ始めるまで5年かかった。この5年間の記録のダイジェストが本書である。(鯨)

本を読む前に
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