@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(22)
『こんな日本でよかったね』を読む
@IT自分戦略研究所 書評チーム
2008/8/13
■想像の現実変成力
こんな日本で よかったね 内田樹(著) バジリコ 2008年7月 ISBN-10:4862380964 ISBN-13:978-4862380968 1680円(税込み) |
この本にはこんなことが書いてある。
「私たちは『願望Aが実現したあと』になってはじめて『願望Aをしていた過去の私』というものを事後的に『認知』する」(『こんな日本でよかったね』、p.208)。
実現した願望についてだけ、われわれはそういうことを願望していた「過去の私」というものを選択的に思い出し、「そういえば、あのとき、こんなことをして、あんなことをして……、それらがいまの私を形作っているんですね」というようなことをいう。
しかし、それは全部「錯覚」である。願望Aの実現に寄与した人物との奇跡的な出会いや英雄的な行動というのは、過去のある時点で偶然起こった日常的な事件であるにすぎない。人は、過去のさまざまな出来事を半ば無意識にチョイスし、自分で書いた「成功物語」に沿って(過去を)再構成しながら生きていくものである。
にもかかわらず、「(中略)『錯覚できる人間』と『できない人間』のあいだには千里の径庭(けいてい)がよこたわっている」(同書、p.209)。
「自分の手で未来を切り開ける」というのは完全な幻想なのだが、結果的に、自分が望んでいた未来を生きていると「錯覚」している幸せな人は、そうでない人よりも、自分の未来について日々妄想をたくましくしているものだ。
「(中略)100種類の願望を抱いていた人間は、一種類の願望しか抱いていない人間よりも『願望達成率』が100倍高い」(同書、p.209)。
想像の現実変成力を甘く見てはいけない、とこの本は説くのであった。(鯖)
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