@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(87)
現代に輝く、働かない人たち
@IT自分戦略研究所 書評チーム
2009/2/3
■公私混同する10人をインタビュー
働かないひと。 左京泰明(著) 弘文堂 2008年12月 ISBN-10:433555124X ISBN-13:978-4335551246 1575円(税込み) |
朝、目覚まし時計をかけて起きる意味とは? 第二の人生はどこからか。自己実現とは何か。
上記の問いの答えを模索すると、必然的に「働くこと」に行き着いてしまう。働くことは、多くの人間にとって人生の大半を占める重要事項である。ならば、働くことについて考えることは、人生に悩むことと等しいのではないか。働くことと生きることは切っても切り離せない。
本書のテーマは、「働くとは何か」。仕事を何ととらえ、自分の人生のどこに位置付ければ自分に対して折り合いがつくのか。本書は、この正解のない問いの答えを求めて、仕事の現場で輝く社会人10人にインタビューをしている。
以下は、10人のインタビューから分かる、働くとは何か。
1.手塚真輝(ホスト)
働くとは、自分自身を成長させること、日本を良くすること。仕事はそのための手段。だから頑張って働く。大事なのは、「いま頑張ることを覚える」こと。どんな職業に就いても一生懸命頑張ることは日本を良くすることにつながる。仕事は「自分のためだけでなく、人のためへと広がった時に成立する。やっぱり、働くことの根本っていうのは、自分のために田畑を耕すこと、その次に神様のために最高のワインを造ること、そういう純粋なことのような気がする」(『働かないひと。』、p.21〜22)。
2.寄藤文平(アートディレクター)
クリエイティブな仕事は、快感である。「何やってるにせよ、それが楽しいからやってる」(同書、p.34)
3.猪子寿之(チームラボ 代表取締役社長)
働くことは、脳から幸福のドーパミンを出すこと。「何を選べば自分のテンションが上がるのかを大事にした方がいい」(同書、p.50)
4.山口絵里子(マザーハウス 代表取締役)
働くこと、それ自体が生きる意味。使命感。企業は社会のためにある。起業家も社会のためにいる。だからこそ、「“社会”起業家」という代名詞に疑問を抱く。
5.小久保英一郎(天文学者)
働くことは、社会の中で自分の役割を担うこと。
お金を稼ぐため、ただ今日食べていくために働くということだけはしたくない。「給料は良くないとしても、自分が一番やりたいと思っていることができる仕事をしたい」(同書、p.87)
6.伊勢華子(文筆家)
自分にとってかけがえのない人たちに、恩返しをするためのもの。
7.幅允孝(ブックディレクター)
「働いていないと自分じゃない」(同書、p.146)。仕事を仕事と呼ばれなくても構わない。「辞めろって言われてもたぶん辞めない」(同書、p.150)
8.本城慎之介(音別 代表取締役)
働くことを考えることは、50年後、100年後の社会を考えること。
9.伊藤剛(ASOBOT 代表取締役)
仕事というツールを使って、社会というフィールドにアクセスすること。単なる個人ではできないことをすること。
10.西村佳哲(働き方研究家)
働くことは、自分と向き合うこと。自分自身を職業にすること。
10人に共通しているのは、皆働きすぎなこと。自分のためと人のため、両方を考えていること。どちらか一方では成立しない。
彼らは、生きることと仕事を切り離していない。公私混同を享受している。彼らの頭の中には「働かないと(いけない)……」「働き続けるのはつらい」という思考はないのだろう(鯖)。
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