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「デジタルネイティブの新世代とどう向き合うか」レポート

なぜマニュアルを求める?
デジタルネイティブの育成法

金武明日香(@IT自分戦略研究所)
2010/6/23

富士通ラーニングメディアが「デジタルネイティブの新世代とどう向き合うか」というテーマのフォーラムを開催した。デジタルネイティブ世代が社会に参加する年齢になった。現在、上の世代はデジタルネイティブ世代の特徴を知り、彼らの能力をうまく生かすための環境を作る必要がある。

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 富士通ラーニングメディアが5月28日に主催した「エフエルエム エグゼクティブ Co-Creatingフォーラム 『デジタルネイティブの新世代とどう向き合うか』」で、KIRO(知識イノベーション研究所)代表、多摩大学大学院教授の紺野登氏が講演を行った。

 講演テーマは「デジタルネイティブ世代の人材育成」。「明らかなことは、われわれが古くなるということ」――これからの時代を生き延びるためには、デジタルネイティブをいかに育てて活用するかが鍵になるという。

会場には多くの人が集まった

世界は「テクノロジストの時代」へと移行する

紺野登氏
KIRO(知識イノベーション研究所)代表、多摩大学大学院教授 紺野登氏

 紺野氏はまず、21世紀の世界経済について説明した。20世紀の世界経済は安定した成長曲線を描いていたが、21世紀になってからは不況が相次ぐなど、将来を予測しにくくなった。これまでは管理が行き届いている企業が成長したが、不確実な時代においてはイノベーションを重視する企業、カメレオンのように変化に対応する企業が伸びてくるという。

 「世界経済が変化すると、前の世代が衰退して新しい世代と交代する」と、紺野氏は語る。これからの時代に活躍するのは「テクノロジスト」と呼ばれる人々だ。

 「テクノロジスト」とは、「ITを使いこなし、専門業務に精通した人」だ。例えば、歯科医、レントゲン技師、サービスエンジニア、プログラマなどはテクノロジストである。ただし、マニュアルどおりに動いている人はテクノロジストではない。テクノロジストとは、「知を創造する人々」だからだ。そしていま世界中で、本格的なテクノロジストになる世代であろう「デジタルネイティブ」が育ってきている。

「若者は草食系でオタク」といわれるが……

 「デジタルネイティブ」とは、20歳前後の若者のことを指す。物心ついたころからインターネットを利用していて、ホームページやブログ、SNSなどを積極的に利用する。

 デジタルネイティブはどのような特質を持っているのか。紺野氏は「Flash Mobs」の動画を紹介した。「Flash Mobs」は、「インターネットを通じて不特定多数の若者が公共の場に集合し、目的を達成すると即座に解散する行為」である。動画では、突然キャンパス内に若者が集まり、コミカルな乱闘戦を繰り広げた後に解散する様子が映し出された。

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 「わたしたちの世代からすると、こうした行為はとても不思議かもしれません。しかし、彼らはしごく真面目にやっています」と、紺野氏は説明する。このように、デジタルネイティブは、リアルとバーチャルの境界を設定しない。また、リアルとバーチャルどちらでも、人間関係を非常に重視する。

 デジタルネイティブ世代は、一見してみると矛盾する性質を併せ持つという。「若者は答えをすぐに求める」「オタク」「草食系」「創造的でない」といった見方があるが、それだけでは十全でない。彼らは、「既存のシステムへの疑問が強い」「社会に高い関心を持つ」「パワフルなアイデアを出す」という性質も持っているからだ。

 「デジタルネイティブは、個人間のコミュニケーションを非常に重視しています。また、上の世代が作ってきたルールとは違う何かを模索しています。非常に未熟な面もありますが、かと思えば成熟している面もあるのです」

若者はなぜマニュアルを欲しがるのか?

 デジタルネイティブより上の世代は「いまの若者は、すぐにマニュアルを欲しがる」と批判することがある。しかし、その批判は正当だろうか? 紺野氏は「マニュアルを欲しがる学生」について、ある逸話を紹介した。

 「会計士のもとで働くことになった学生が、『マニュアルはあるか』と聞いたそうです。そこで会計士は『現場で学べ、体で覚えろ』と答えました。すると、学生はバイトをやめてしまったのです」

 この話は、とらえ方によってずい分変わる。「すぐに答えを求める方がおかしい」ととらえるか、「体で覚えろという指示は、古いやり方を押し付けているだけではないか」ととらえるか。ルールが決まっている部分はさっさとマニュアルで覚えてもらい、ほかの有益な仕事をさせた方がよかったのかもしれない、というのが紺野氏の意見だ。

 これまでの常識からすれば「甘えている」と見える若者の態度も、彼らの立場に立てば違うものが見えてくるかもしれない。

 「いつの時代もそうですが、下の世代が次の時代の主役になり、わたしたちは古い常識を持った人間になります。それが真実です」と、紺野氏は強調した。

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