あなたはどの位置にいる? スキルと年収の関係を探る
千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/4/11
JOB@ITは2007年4月、@ITジョブエージェントおよび@ITプレミアスカウトの登録者約2万人の年収分布を基に、他者と自分自身の評価を比べることができるサービス「@IT年収MAP」の提供を開始した。それに合わせて、JOB@ITでは@ITジョブエージェントの登録者の属性を調査。今回はその調査結果からスキルとキャリア、そして年収の関係を探った。
■登録者の属性は?
今回の調査では@ITジョブエージェントおよび@ITプレミアスカウトの登録者のうち2000人をサンプルとして抽出した。登録者の平均年齢31.5歳。20代後半から30代前半の男性を中心に構成されている。24.8%の人がシステム開発・設計に携わり、次いで19.7%がビジネスアプリケーション開発やデータベース構築などのSE職、14.5%がプログラマ職に就いている。
就業形態を見ると78.9%の人が社員として働いている。派遣社員として働く人が4.1%、フリーランスとして就業中の人が2.9%。0.7%と少数だが代表/役員として働く人も存在している。
さて、こうした属性を持ったITエンジニアがどんなスキルを持ち、どのくらいの収入を得ているのか、詳しく見ていこう。
■職種によって意外な差が……
まず以下に示すのは、職種と年収、平均年齢の関係を表した図だ。
図1 職種と年収、平均年齢の関係。縦軸は年収、横軸は年齢。括弧内の数字はその職種の登録者数 |
全体の平均年収は510万円。最も平均年収が高い職種が「システムアナリスト・システムコンサルタント」716万円。次に高い職種が「システム開発・設計」543万円。しかし、その後に続く「SE」や「ネットワーク構築」「社内情報システム」といった職種と比べてそれほど大きな差はなく、500万円前後で集団を形成している。そして最も平均年収が低いのが「プログラマ」で410万円。入社後プログラマとして経験を積み、その後SEやコンサルタントなどにステップアップするという、ITエンジニアとしてのキャリアパスがこの図に表れている。
また特徴的なのは、「システムアナリスト・システムコンサルタント」とほかの職種との年収の開きだ。2番目に高い「システム開発・設計」と173万円もの開きがある。もちろん年齢による影響はあるが、同程度平均年齢が離れている「プログラマ」と「システム開発・設計」の年収差133万円と比べても、その開きは大きい。
■テクニカルスキルの経験を探る
@ITジョブエージェントおよび@ITプレミアスカウトの登録者がどんなスキルを持っているのか見てみよう。図2に「OS環境」「開発言語/開発環境」「DBアプリ」のテクニカルスキルに対して「開発/実装経験あり」「設計/構築経験あり」「運用監視経験あり」と登録された数を示す。
図2 経験のあるテクニカルスキル。縦軸はそれぞれのスキルを扱った経験がある人の割合(クリックで拡大) |
「OS環境」では「WindowsNT/2000/2003 Server」に対して64.2%の人が経験ありと登録している。その後、「Linux」「Solaris」と続く。「開発言語/開発環境」では「Java」の経験がある人が最も多く41.2%。「DBアプリ」では半数以上の52.7%の人が何らかの形で「Oracle Database」の経験を持っている。
次に所有するスキル、平均年齢と平均年収の関係を調べる。比較的年齢が若い層についてまとめたのが図3だ。
図3 テクニカルスキルと平均年収(若年齢)の関係。横軸は平均年収、縦軸は平均年齢。括弧内の数字はそれぞれそのスキルを扱った経験がある人の数 |
RubyやAjaxなど新しく登場した技術はやはり比較的若い層を中心に経験があるようだ。OS環境やDBアプリでは年齢、年収ともにそれほど大きな差は見られなかったが、開発言語/開発環境ではJavaと.NETで年収に開きが見られた。
図4 テクニカルスキルと平均年収(ミドル層) |
続いて年齢が比較的高い層のものについてまとめたものが図4だ。ここで注目したいのは、「FORTRAN」や「PL/I」に比べて「COBOL」の経験者の平均年齢が若いことだ。現在でも金融業や製造業を中心にCOBOLで構築したシステムを動かしているケースが多いためだろうか。
■いつまでにそのスキルを身に付ける?
テクニカルスキルと同様にビジネススキルやヒューマンスキルについても調べた。ビジネスやヒューマンスキルについて「自信あり」と登録された数を示したのが図5。そのスキルと平均年齢と平均年収の関係を見たのが図6だ。
図5 自信のあるビジネス/ヒューマンスキル。縦軸は平均年収、横軸はそれぞれそのビジネス/ヒューマンスキルについて「自信あり」とした人の割合 |
「チーム内コミュニケーション力」が最も多く、37.9%が「自信あり」としている。そのほか「変化への対応力」「論理的思考力」「目標達成能力」といったスキルに自信を持つ人が多いようだ。
図6 ビジネス/ヒューマンスキルと平均年齢、平均年収の関係。縦軸が平均年収、横軸が平均年齢。括弧内の数字はそれぞれそのビジネス/ヒューマンスキルについて「自信あり」とした人の数 |
比較的多くの人が「自信あり」とした「チーム内コミュニケーション」「変化への対応力」「論理的思考力」「目標達成能力」が低い位置にある。これらの能力はITエンジニアとして必須の能力だといえるのではないだろうか。また、変化が早いテクニカルスキルと違い、ビジネス/ヒューマンスキルはある程度普遍的なものだ。つまり、この図は「いつまでにどのビジネス/ヒューマンスキルを身に付ける必要があるのか」を探る1つの指標として利用できる。
比較的若い時期に「コミュニケーション能力」や「論理的思考力」「目標達成能力」といった基礎を、そしてITエンジニア経験を積むとともに、ビジネス寄りのスキルやマネジメントスキルを身に付けるという形が読み取れる。
■自分のスキルとキャリアを考える材料に
自分のスキルやキャリアを考えるときに、自分と同じくらいのスキルとキャリアを持っているITエンジニアの給与など「自分はほかの人と比べてどうか」ということを知りたい人は多いだろう。
IT業界の中における自分とほかの人の関係を確認することで、自分自身のキャリアアップやスキルアップのために何が必要なのか考える1つの材料とするのはいかがだろうか。
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