ITエンジニアのためのビジネスコミュニケーション診断

第3回 相手の本音を引き出す質問力

鹿野晴夫・大塚千春(アイ・シー・イー)
2008/11/17

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CompTIA日本支局が提供する「ビジネス・コミュニケーション・スキル診断」(BCSA)のスキル定義に基づき、ビジネスコミュニケーション力簡易診断テストを掲載する。「今日からできるスキルアップ術」で、ビジネスコミュニケーション力のスキルアップを図ってほしい。

 前回(「第2回 もう「説明が分かりにくい」とはいわせない」)は、相手に説明する際、相手が情報をキャッチしやすいよう、「分かりやすい説明」「受け止めやすい説明」をする重要性を解説した。ビジネスにおけるコミュニケーションは、「情報」のキャッチボールである。スキルを磨くことによって、「情報」という球を上手に投げることができる。

相手に話へ参加してもらう

 今回は、「相手に話へ参加してもらうスキル」を説明する。いくら、「分かりやすい説明」「受け止めやすい説明」をしたとしても、あなたが一方的に話すだけでは、相手の本音を引き出すことはできない。

 コミュニケーション力不足で問題が発生した事例を見てみよう(事例1)。

事例1
 SEのAさんは、営業サポートとして、「オフショア開発」に興味を持つ顧客への説明を行うことになった。顧客は、コスト削減の点からオフショア開発に興味があると、営業のBさんから聞いている。打ち合わせには、顧客側の社内SEのほか、役員が同席していた。Bさんの紹介で名刺交換をした後、Aさんが説明を始めた。
Aさん : 「お問い合わせのありましたオフショア開発について、弊社が可能なサポートを説明させていただきます。まず、コスト面での効果ですが……。次に、開発拠点とエンジニアのクオリティは……」
 

(Aさんは、40分ほど説明を続けた

Aさん : 「ここまでで、質問はございませんでしょうか?」
役員  : 「情報漏えいなど、機密保持の問題は大丈夫かな?」
Aさん : 「弊社の基準をクリアした開発先を使いますので問題ありません。詳しく説明させていただきますと……」
社内SE: 「開発先とのコミュニケーションがうまく取れないといった問題は?」
Aさん : 「御社のご要望は、弊社がブリッジSEとして開発先に伝えますので、問題ありません。具体的には……」

 1時間ほどで、打ち合わせは終了した。Aさんは、詳細に準備した内容を分かりやすく説明したつもりだったが、同行した営業のBさんには、「Aさん、一方的に話しすぎだよ。もっと、顧客に話をさせないと……」といわれてしまった。

 事例1でのAさんの問題点は何だろう? Aさんは、詳細に準備した内容を分かりやすく説明し、質問にもしっかりと応答している。しかし、1時間の打ち合わせで、Aさんが話している時間が40分以上(質問への応答を含めると、50分程度)もあるのでは、相手の本音(真のニーズ)はなかなかつかめない。

 営業のBさんにしてみれば、「商品やサービスの内容を説明しただけで、買ってくれるなら苦労しない」「相手が求めているものを探りながら、説明するのが営業だ」「営業サポートで同行してもらっているんだから、それぐらい分かるだろう」といった気持ちかもしれない。

 「準備したことを一方的に説明し、最後に簡単な質疑応答で終わり」。こうしたコミュニケーションでうまくいかないのは、営業だけのことではない。部内や、上司と部下、他部署との打ち合わせ、外注先への依頼など、すべてに当てはまる。もちろん、仕事の打ち合わせなので、相手は黙って聞いてくれるかもしれないが、「一方的な話」に付き合わされて、喜ぶ人はいない。

 説明に対する相手の納得を得るには、相手に話へ参加してもらい、考えを述べてもらう必要がある。さらに、その考えをこちらが十分に理解したと、相手に認識してもらう必要があるのだ。そのためのスキルが「質問を効果的に活用する」ことだ。

 次に、Aさんが質問を効果的に活用したら、どうなるかを見てみよう(事例2)。

事例2
Aさん : (説明の冒頭で)「御社では、これまでオフショア開発は行っていなかったということですが、今回オフショア開発に取り組もうとされる理由は何でしょうか。オフショア開発のどんな点にメリットを感じていらっしゃいますか?」
役員  : 「確かに、これまではクオリティへの懸念から国内で開発を行ってきました。オフショア開発を検討している一番の理由は、コストメリットですね」
Aさん : 「すると、クオリティの維持が最優先で、次にコスト削減を実現したいということですね。弊社がサポートするオフショア開発は、国内開発と同レベルのクオリティを基本としています。詳細については、後ほど説明いたします。ほかにオフショア開発に関しての懸念はございますか?」
社内SE: 「開発先とコミュニケーションがうまく取れるのか? といった懸念があります」
Aさん : 「開発先とのコミュニケーションは、すべて弊社がブリッジSEとして対応しますので、問題ありません。この点につきましても、後ほど説明いたします。それでは、開発のクオリティとコストについて、お話させていただいてもよろしいでしょうか?」

 質問を活用することで、相手は話に参加しやすくなり、相手の要望もつかみやすくなる。要望をつかんで、相手が聞きたいことを説明すれば、相手は自分のために説明してくれていると感じるから、納得も得やすくなる。では、質問を効果的に活用するにはどうしたらよいのだろう? 解説の前に、簡易版ビジネスコミュニケーション力診断にチャレンジしてみよう。

 

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