エンジニアのための
Linux認定資格・試験ガイド
第2回 Turbo-CEの試験の傾向と対策
中島能和
2002/4/18
Linuxの認定資格・試験について、雑誌やWebサイトで見掛けることが多くなってきた。しかし、Linuxの認定試験というと、まだまだマイナーな印象を受ける。また、まとまった情報を見る機会も少ない。そこで本連載では、Linux関連の認定資格・試験の全体像を提示した後、各資格試験の特徴や傾向などを紹介していく。 |
■Turbo-CEとは
「Turbo-CE」(Turbolinux Certified Engineer:Turbolinux技術者認定)は、ターボリナックス ジャパンが実施しているLinux技術者の資格制度および支援プログラムだ(表1)。もっとも、Turbolinux固有の部分はわずかであり、大半がLinuxについての基本的な技術・知識を対象とした汎用性の高い内容となっている。とりわけビジネスユースをターゲットとしているため、実務でLinuxに携わり始めたエンジニアにとっては興味を引かれる内容なのではないだろうか。
|
||||||||||||||
表1 Turbo-CEの試験情報 |
■試験の種類と範囲
試験はTurbolinuxディストリビューションのバージョンごとに実施されている。本稿執筆時点(2002年4月10日)では、以下の3種類の試験を受けることができる。バージョンによる若干の違いがあるが、難易度に変わりはない(表2)。なお、Turbo-CEの上位資格であるTurbo-CE Proが間もなく開始される予定となっている。
|
||||||
表2 Turbo-CE試験の種類 |
試験の対象としているのは、「システムエンジニア、システム管理者、セールスエンジニアなど、Linuxの導入・サーバの構築に従事している技術者」とされている。試験はいずれも60分で50問出題される。なお、合格ラインは70%以上となっている。
Turbo-CE試験の出題範囲は以下のとおりだ。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Turbo-CE試験の出題範囲 |
上記の表の各項目について、さらに細かく内容を確認してみよう。
「基本問題」では、Linuxの誕生と歴史についてや、オープンソースについての基本的な知識が問われる。
「Linux自体に関する知識」では、Turbolinux サーバのインストール準備に始まり、インストールの流れ、Linuxの起動やシャットダウン、コマンドラインによるシェルの操作、基本的な設定などについて問われる。RPMコマンドによるパッケージ管理や、カーネルの再構築についても基礎的な理解が必要だ。
「Linux上のアプリケーションに関する知識(1)」では、TCP/IPネットワーキングの基本や、inetdとtcp_wrappersによるアクセス制御、ProFTPD、BIND、sendmailといったサーバソフトウェアについての知識が問われる。
「Linux上のアプリケーションに関する知識(2)」では、NFSやSambaによるファイル共有、Apache Webサーバ、lpdによる印刷などについて問われる。
これらを見ても分かるように、Turbolinuxディストリビューション固有の項目は少ない。Turbo-CEはベンダ認定ではあるが、Linuxに関しては中立性の高いものとなっている。
|
■受験方法
試験はプロメトリックの試験センターでのオンライン試験だ。MCPやORACLE MASTERを受けたことがある人ならなじみがあるだろう。Turbo-CEの場合は、択一式問題よりも複数選択式の出題が多く、正確な知識と理解が求められる。
また、重箱の隅をようじでほじくるような難解な問題は出題されない。ビジネス現場でよく利用される分野が広く取り上げられており、実際にLinuxを使った業務に携わっている人にとっては、試験が簡単に感じられるだろう。
受験資格は特にない。ターボリナックス ジャパンのサイトによれば、「試験範囲の知識があれば受験可能」となっている。目安として、半年から1年程度のLinux経験と考えればよいだろう。
なお、Turbo-CI(Turbolinux認定インストラクタ)資格の取得に際しては、Turbo-CEで90%以上の得点が求められる。Turbo-CIの取得を目指している人は、できるだけ高得点を目指す必要がある。
■試験対策
|
||
写真1 IDJジャパンの『直前必修問題集 Turbo-CE Turbolinux Server 6.5』 |
Turbo-CEの主な試験対策教材としては、IDGジャパンから刊行されている『直前必修問題集 Turbo-CE Turbolinux Server 6.5』(写真1)と、システム・テクノロジー・アイが販売している模擬試験ソフトウェア『iStudy for Turbo-CE』(以下、『iStudy』)がある(写真2)。いずれもターボリナックス ジャパンの推奨教材だ。また、ターボリナックスジャパンの全国のエデュケーションセンターで認定教育コースが実施されている。これらの情報はターボリナックス ジャパンのサイトより入手できる。
|
||
写真2 システム・テクノロジー・アイの模擬試験ソフトウェア『iStudy for Turbo-CE』 |
ある程度のLinux経験がある場合は、『直前必修問題集』か『iStudy』を使って試験範囲と出題傾向を把握し、理解があやふやな部分を見直せば十分だろう。出題分野のすべてにわたって実務経験がある人は少ないと思うので、苦手なところは確実に理解しておきたい。Turbo-CEで問われるのは、いずれも基本的な事柄ばかりなので、学習しておいて損はないはずだ。
Linuxに触ったことがない、もしくは経験が浅いという人にとっては、試験はそれなりに難しく感じられるかもしれない。いままでLinuxに触れる機会が少なかった人は、Turbolinux向けの入門書が数多く出版されているので、書籍を参考にサーバ構築をひととおりやってみることをお勧めする。その後で『iStudy』や『直前必修問題集』に進めばよい。資金にゆとりがあれば、ターボリナックス ジャパンの認定教育コースを受講してみるのもよいだろう。
筆者が受験に向けて取り組んだことといえば、Turbolinux Server 6.5を自宅のPCにインストールして触ってみたことと、『直前必修問題集』をひととおりやってみたことくらいだ。模擬問題をやってみると、知ってはいても理解があやふやだった部分がけっこう見つかった。基礎的な知識を確実にするという点でも、試験対策は有意義だと思う。
また、本稿を執筆するに当たり、『iStudy』も試してみた。実際の試験に近い形で演習ができるので、傾向を把握し試験に慣れるためにも有用だ。『iStudy』にはCD-ROM版とオンライン版の2種類があるが、オンライン版の方が価格は安い。常時接続環境がある人はオンライン版がお勧めだ。有効期間は3カ月間となっているが、試験合格に目標を設けることにもなるので、かえってよいかもしれない。
■試験終了後
試験結果は試験終了後すぐに採点され、画面に表示されるとともに、スコアレポートが手渡される。スコアレポートにはセクションごとの正解率が示されるので、どの分野が弱いかを知ることができる。
合格後1〜2週間すると、ターボリナックス ジャパンより認定者キットが送られてくる。試験終了後、特に認定に関する手続きをする必要はない。認定者キットには、合格者の名前と認定試験名の入った「Turbo-CE認定証」や「名刺用Turbo-CEロゴステッカー」などが入っている。名刺用のロゴデータは、後日メールで申請すれば送ってもらうことができる。
■Turbo-CEの意義
Turbo-CEを取得することにより、どのようなメリットがあるだろうか。
まず、認定内容としては「Turbolinuxの導入・設定・サーバ構築ができ、ターボリナックス ジャパンからの技術情報・サポート情報を理解し、ターボリナックス ジャパンのサポート部門とのコミュニケーションが取れる技術者」となっている。つまり、導入から運用までの基本的な部分をこなすことができ、より高度な部分についてはターボリナックス ジャパンのサポート部門とスムーズにやりとりできるだけの技術的な知識を有している、という証明になる。
Turbo-CEは、認定資格というだけではなく技術者支援プログラムでもあるため、合格者はターボリナックス ジャパンより、認定取得後1年間に限り3インシデントの技術サポートを受けることができる。
また、先に述べたように、業務においてよく利用される分野を見渡し、基礎的な知識を確認するという点でも有用だろう。基礎的な部分で正確な知識を確保することは、その後のステップアップにも効果があるはずだ。
なお、Turbo-CEの認定期間は、試験合格後3年間だ。バージョンごとに試験がリリースされていること、有効期限が定められていることにより、受験内容が古くなってしまい、実情に合わなくなることを回避している。
■ビジネスユーザー向きのTurbo-CE
Turbo-CEは、企業でLinuxをサーバとして使う際に必要となる基本的な分野をピックアップしているなど、ビジネス志向が強い。このことからも、Linuxシステムの管理者や開発者(とりわけLinuxについての経験が浅い技術者)のみならず、Linuxを総合的に理解したいセールスエンジニアなどにとっても意義のある試験であるといえる。
また、Linuxを使った業務に就きたいと考える学生にとっては、就職活動で自分の能力をアピールする材料にもなるだろう。もちろん、他業種からの転職を考えている人にとっても同様だ。
ただ、Turbo-CEはあくまでビジネスユースのエントリ向け認定と考えられるので、Turbo-CEを取得しているからといって、Linuxを使った業務が円滑にこなせるわけではないだろう。業務をするうえで必要となるのはやはり経験と実績である。Turbo-CEは、経験と実績を積み重ねていくうえでの確固とした土台を築くための、ステップの1つとしてとらえればよいのではないだろうか。
|
筆者紹介 |
中島能和● 株式会社クロノス常務取締役。講師としてLinux/ネットワークの研修に携わりつつ、書籍の執筆やエンジニアの採用も手掛けるエンジニア。効率的なLinux教育を模索していたときにLPI認定を知り、Linux関連資格・試験にのめりこんでいるという。 |
@自分戦略研究所の資格や学習に関連するサービス | |
|
@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。
現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。
これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。