データベースエンジニア必見
ORACLE MASTERはこう変わる!

遠竹智寿子
2003/8/27

 日本オラクルが同社の資格認定制度「ORACLE MASTER」の改定の発表後、多くの反響が同社に寄せられた。

 「改定前に取得した資格はどうなるのか」「現在ORALCE MASTER Silverを取得しているが、新Silverを取得するには、すべての試験を受け直す必要があるか」など、数多くの質問が寄せられたという。

 本稿では、こうした疑問に答えるため、ORACLE MASTERの制度変更の背景や狙い、変更内容などについて解説する。ORACLE MASTERを取得しようと考えている読者の参考にしていただきたい。もちろん、すでに資格を取得している人にもぜひ読んでほしい。

制度変更の背景にあるグローバリゼーション

 ORACLE MASTERを改定する背景として、日本オラクルは「グローバリゼーション」のためと説明する。簡単にいい直せば、日本以外で行われているオラクルの資格認定制度「Oracle Certification Program」との調和である。ご存じのようにORACLE MASTERはベンダ資格の草分け的存在だ。同資格は日本で作られ、普及し、ビジネスとしても成功を収めた。それを米オラクルが注目、形を変え、Oracle Certification Programとして発表し、世界に広めた。その過程で、日本と資格名称や試験レベルが異なってきたのだ。

 Oracle Certification Programは当初、1資格(Oracle Certified Professional:OCP)からスタートした。その後、Oracle Certified Associate(OCA)とOracle Certified Master(OCM)が加わり、日本と同じ3階層の資格制度となった。が、同じ3階層といっても各階層で試験範囲が異なるなど、単純に同じ資格制度とはいえない状況になった(図1)。そのため、Oracle Certification Programにレベルを合わせるため、大改定に踏み切ったのだ。

図1 現在の日本のORACLE MASTERとグローバルで行われているOracle Certification Programの資格との比較。同じ3階層という資格体系だが、試験内容を見ると明らかに階層に違いがある

 さらに日本オラクルは、海外で取得した資格(例えばOracle Certified Professional)を日本で、それと同レベルのORACLE MASTER(現在ではPlatinum)として認定してほしい、といった要望が増えていることなどへの対応も、改定の理由としている。

Silver、Gold、Platinumブランドの継承

 今回の改定でOCA、OCP、OCMに完全対応させつつも、Silver、Gold、Platinumという日本独自のブランド名を残した。名称を残すということは、改定される前(つまり現在の制度)の資格と、改定後(10月以降の制度)の資格とが同じ名称になる。そのため、受験者や資格保有者に混乱が生じる可能性がある(図2)。実際、すでに一部には誤解などが生じているようだ。

図2 改定前と改定後のORACLE MASTER、さらにOracle Certification Programとの比較(図をクリックすると拡大表示されます)。改訂により、Oracle Certification Programと階層が同じになる

日本オラクル オラクルユニバーシティ ビジネスディベロップメント 担当シニアマネジャーの高松英彦氏

 日本オラクル オラクルユニバーシティ ビジネスディベロップメント 担当シニアマネジャーの高松英彦氏は、混乱は日本オラクルでも予測していたことを認める。実際、「日本でもOCM、OCAといった名称を使用した方がいいのではないかという意見は社内でもあった」という。「しかし、日本ではAssociate、Professional、Masterという名称になじみがなく、例えばどの資格が上位になるのかが分かりにくい。つまり、違いが直感的ではない。一方でSilver、Gold、Platinumは、強烈なブランドイメージが日本のIT市場に根付いている。そのため名称を残した」と高松氏は述べる。もちろん、「確かに誤解を受けやすいだろう。名前を残したからには、イメージを変えていくアピールをしなければならないと思っている」と語り、資格が変更されたことなどを積極的に受験者や資格保有者に伝えていく姿勢を見せる。

制度はどう変わるのか

 では、10月1日からORACLE MASTERは、具体的にどう変わるのか。ここでは便宜上、これまでのORACLE MASTERを現ORACLE MASTERと呼び、10月1日以降の新制度上のものを新ORACLE MASTERと呼ぶ。各資格(例えばGoldやSilver)についても、この原則を適用する。

 ただし、気を付けなければならないのは、ORACLE MASTER Silver/Gold/Platinumといった場合、現在はデータベース管理・運用トラックの資格のみを指しているが、新制度では、オラクルのほかの製品の資格もSilverやGoldといった名称で統一されることだ。そのため、正確には現在のORACLE MASTER Silver/Gold/Platinumは、新制度ではORACLE MASTER Silver/Gold/Platinum Oracle9i Databaseという名称となる。しかし、ここでは便宜上、前述したように新ORACLE MASTERとして記述する。

 なお本稿では、最も受験者数、合格者数が多いデータベース管理・運用トラックを中心に見ていきたい。現ORACLE MASTERでは、SilverがOracle入門とSQLの2科目、Goldが9iDBA IとPL/SQLの2科目、PlatinumがOracle9i Performance TuningとOracle9i DBA IIの2科目に合格する必要がある。Platinumについては、さらに別途指定された集合研修コースの履修が必要とされている(表1)。

Oracle9i PL/SQLプログラム開発
Oracle9i データベース:セキュリティ
Oracle9i SQLチューニング ワークショップ
SQLチューニング ワークショップ
Oracle9i データベース管理ツール:Oracle Enterprise Manager (2003年9月リリース予定)
Linux版Oracle9iデータベース構築と運用 (2003年9月リリース予定)
表1 Platinum資格条件に必要な実技試験項目。上記の集合研修から2コースを取得する

 これが新ORACLE MASTERでは、表2のように変わる(なお、Platium資格条件で必要となる集合研修科目に変更はない)。新制度ではORACLE MASTER取得者は、Oracle Certification Programの各資格と同じレベルとなるため、OCA、OCP、OCMの資格も自動的に授与されるようになる(詳しくは図2を再度参照してほしい)。

資格
試験内容
ORACLE MASTER Silver ・Oracle入門
・SQL
・9i DBAI
ORACLE MASTER Gold ・9i DBA II
・9i Performance Tuning
ORACLE MASTER Platinum ・実技試験
表2 新ORACLE MASTERの試験内容

 今回の資格制度改定での大きなポイントの1つが、現在ORACLE MASTERの資格取得者の約7割を占める現ORACLE MASTER Silverレベルの認定資格がなくなってしまうことだろう。そのため、新たに日本独自で設けられるのがOracle Silver Fellowだ。ただし、このSilver Fellowは正式な認定資格というわけではない。現Silverと同じOracle入門とSQLの試験に合格した人に対して、試験に合格したという証明を日本オラクルが発行する、というものになる。

米オラクルのSenior Vice PresidentでOracle University担当のジョン・ホール(JOHN L. HALL)氏

 このような合格証明を発行する理由として高松氏は、「専門学校生やIT系企業などに就職した非エンジニア職などを含め、オラクルのテクノロジに触れ始めた人たちを大事にしたいという思いがある。これまでもそうした人がオラクルの製品に触れ、次第に製品を支持してくれるようになり、そんな中からSilverからGold、Platinumへと現場を支える人たちが生まれてきた。われわれが、現Silverのクライティリアを何らかの形で残したいと考えたのは、これを重く見たため。Fellowを設けることで、オラクル技術を学び続けようとする人が増え続けてほしい」と語る。

 米オラクルのSenior Vice PresidentでOracle University担当のジョン・ホール(JOHN L. HALL)氏も「日本での様子を見て、場合によっては世界全体に対して(Silver Fellowを)展開していくということもあるかもしれない。日本のSilver Fellowに注目している」と述べ、日本の展開によっては、グローバルでも採用する可能性を示唆した。

 ITエンジニア職では、新卒であっても現ORACLE MASTER Goldレベルを目指す場合が多い。また、転職市場でも多くの転職コンサルタントが口をそろえて「(現)ORACLE MASTER Gold以上の資格でなければ価値がない」と語っていることからも、ITエンジニアにとっての最低限の目標は現Gold(新Silver)となるだろう。そのため、SilverがSilver Fellowとなり、資格ではなくなることに、それほど大きな抵抗は感じないだろう。

データベース以外の資格は

 データベース以外のトラックの資格も改定され、名称は変更される(図3)。その中で、現ORACLE MASTERのGoldの試験範囲となっている「PL/SQL」は、開発者向けのトラックでの試験となる。その場合、現在の「PL/SQLプログラム開発」の後継試験との位置付けになるため、難易度は現在よりも高くなる。

図3 データベーストラック以外の現資格体系と新制度での資格体系。基本的には名称がSilver/Goldという名称に変更される。当然、今後のオラクルの戦略やそのトラックに対するニーズが高くなれば、GoldのないトラックにGoldが、またPlatinumの資格が設けられる余地があるといえる

 気を付けてほしいことは、ORALE MASTER Silver Oracle9i Linux+の試験は、10月からスタートしないことだ。日本オラクルのLinux戦略により、現在のORACLE MASTER Linux+とは異なる試験になる可能性も捨て切れない。本資格については、同社の正式アナウンス(資格内容や試験内容)を待つしかないようだ。とりあえず新資格がスタートするまでは、現在のORACLE MASTER Linux+の試験がそのまま行われる。

移行に伴う資格のFAQ

 新制度については、ある程度理解していただけたと思う。ここでは、資格制度の移行に伴い、多少混乱しそうな点について2つほど解説しておきたい。

現在保有している資格はどうなるか

 まずは、すでに保有している現ORACLE MASTERの資格の扱いはどうなるのかを説明しよう。

 答えは簡単で、何も変わらない。新Silver、Gold、Platinumが実施されるようになっても、すでに保有する資格はそのままSilver、Gold、Platinumとして有効である。多少混乱しそうに感じるのは、現資格と新資格との間では、資格レベルに差があるため、現在の資格はなくなってしまう、または新制度の資格に移行するのではないか、といった見方をする人がいるためかもしれない。しかし何度も繰り返すが、そんなことはまったくないので安心してほしい。

 では、新制度で資格を取得しようと考えている人は、逆に次のような疑問を持つかもしれない。例えば、同じSilverの資格でも、新制度のSilverの試験の方が難しくなっているにもかかわらず、現在のSilverがそのまま有効だとすると、不公平ではないか。また、その差が分かりにくいではないか、というものだ。

 それについては、現資格と新資格とでは、名称は同じであっても(ただし前述したように、成績名称も異なるが)、資格のエンブレム(ロゴ)は変更される。そのため、エンブレムを確認することで、どちらの資格かは分かるようになる(図4)。

図4 新ORACLE MASTERの新エンブレム。これまでと形状が異なる

 なお、現在Platinumを保有する人は、新Goldの資格と同じ試験になることから、新Goldに資格を変更してほしいと申請した場合は、日本オラクルでは個別に対応していくとしている。

10月前後に試験に合格した場合はどうなるか

 日本オラクルは、試験に合格した場合自動的に資格を授与しているわけではない。試験に合格した人からの申請を受け、それに従って資格の授与を行っている。そのため、9月にOracle入門、SQL、DBA Iの試験に合格した場合、9月中にOracle入門、SQLに合格したとして現Silverの資格申請を行うと、現Silverの資格が授与される。それに対して10月以降では、Silver Fellowの合格証をもらえるのと同時に、DBA Iにも合格していることから、新Silverを申請し、資格を取得できる。

 気を付けなければならないのはこの場合、現Silverか新Silverかのどちらかしか申請できないということだ。これはGoldでも同じことである。新ORACLE MASTERになっても試験が改訂されるわけではないので(新Platinumは事情が異なるが)、試験自体はいつ受けても内容が変わるわけではない。

 例えばDBA Iの試験を9月に受けようが、10月に受けようが内容や試験範囲が変わるわけではない。ただ、資格に必要な試験に合格している場合(先の例では現Silverと新Silver)、9月に申請するか10月に申請するかで違ってくるので、その点は注意が必要だろう。Silver以外では、現Platinumの試験に合格した場合、9月に申請すれば当然現Platinum、10月以降に申請した場合は新Goldの資格になる。

 オラクルでは、このような新旧資格の違いや位置付けに関して問い合わせの多い質問事項をまとめたFAQのページを用意しているので、受験予定者や現資格保有者はぜひ確認していただきたい。また、認定資格などのニュースを配信する「Oracle University eNews Letter」を2003年9月から配信する予定とのことで、そちらにも関心があるという場合はチェックしてほしい。

資格を取るべきか否か?

 ORACLE MASTERにせよほかの資格にせよ、取得するためには時間も費用もかかる。日々の現場の作業に追われるITエンジニアにとって、それなりの労力を費やすことは大変なことだ。

 オラクルの提供する資格の位置付けについて高松氏は次のように語る。「弊社の教育サービスの目的は、Oracleのファンになってもらい、製品に精通してもらいたい、というものです。学んでもらうのが目的であって、その結果として資格が付いている。決して資格ありきではなく、例えばSQL、Oracle入門、DBA Iをすべて暗記している人を量産する目的でもない。GoldでもPlatinumでも、理想としているのは、現場でそれにふさわしいパフォーマンスを発揮できる方、スキルや知識でお客さまに信頼されている方に、タイトルとして客観的な指標を差し上げたい」

 重要なことは、「こうした状況だから資格取得は少し様子を見て」とか、「制度が変わる前にGoldを狙おう」といった考え方ではなく、必要だと考えれば地道に勉強し、資格を取得すればいいということだ。何度も繰り返すが、資格が目的ではないのである。ある目的の一里塚、またはその結果として資格はあるということだろう。

 すでに資格取得のために勉強を始めているのならば、淡々と勉強を続ければいい。新制度に移行するといっても、データベーストラックの場合、PL/SQLを除いて資格に必要な試験は同じであり(PL/SQLも、試験としてはそのまま存続する)、ただそれがどの資格に組み入れられるかが異なる。また、試験の内容も改訂されるわけではないので、いま勉強していることが無駄になることはないだろう。


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