エンジニアのための
Linux認定資格・試験ガイド
第6回 ORACLE MASTER Linux+の傾向と対策
中島能和
2002/11/6
Linuxの認定資格・試験について、雑誌やWebサイトで見掛けることが多くなってきた。しかし、Linuxの認定試験というと、まだまだマイナーな印象を受ける。また、まとまった情報を見る機会も少ない。そこで本連載では、Linux関連の認定資格・試験の全体像を提示した後、各資格試験の特徴や傾向などを紹介していく。 |
■ORACLE MASTER Linux+とは
ORACLE MASTER Linux+は、日本オラクルが実施しているORACLE MASTERの認定資格の1つという位置付けになる。Linux上でOracleデータベースシステムを構築できる技術者の認定を行うため、Oracleデータベースに関する知識、Linuxに関する知識の双方が不可欠とされる。各地の試験センターで、オンラインで受験するほかのORACLE MASTER試験とは異なり、ORACLE MASTER Linux+は120分間の実技試験のみである。
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表1 ORACLE MASTER Linux+の試験情報 |
■試験の種類と範囲
ORACLE MASTER Linux+(以下Linux+)の試験概要については、日本オラクルのWebサイトからダウンロードできる受験者ガイド(PDFファイル)に書かれている。対象となるOracleデータベースは、Oracle8 Workgroup Server R8.0.5 for Linux、もしくはOracle8i R8.1.5 for Linuxである。特に理由がない限り、Oracle8iで受験すればよいだろう。プラットフォームとしては、Oracle8ではTurbo Linux 4.2Jが、Oracle8iではTurbo Linux 6.0Jが使われる。Oracle、Linuxともにバージョンがかなり古いが、現在のところOracle9i対応の試験が実施される予定はないようだ。
試験の合否は、Linux上にOracle8/8iをインストールし、指定されたとおりにデータベースの初期設定を行うことにより評価される。試験は次の3つのフェイズに分かれる。
フェイズ1(Linuxの事前設定およびOracleのインストール)では、Oracleのインストールに先立って、ユーザーの作成や環境変数の設定などをLinux上で適切に行い、CD-ROMからOracleをインストールする。
フェイズ2(Oracleデータベースの作成および初期設定)では、データベースを作成し、試験問題の記載に従って、表領域、REDOログファイル、ロールバック・セグメントの追加などを行う。
フェイズ3(そのほかの設定)では、Net8を適切に設定し、クライアントから接続できるようにする。また、開発用、エンドユーザー用にユーザーを作成し、適切な権限の設定を行う。
■受験方法
受験に当たっては、ORACLE MASTER Silver資格を保有していることが条件となっている。
試験は、日本オラクルの研修会場で行う。従来は東京と大阪の会場で定期的に開催されていたのだが、最近では開催頻度が少なくなっており、2002年10月下旬現在では、東京会場で2カ月に1回程度の開催のみとなっている。
受験の申し込み方法も、ほかのORACLE MASTER試験とは異なる。まず研修コールセンターへ電話をして受験申込書を入手し、必要事項を記入してファクスで送る。後日、受験確認書が送られてくるので、受験当日に持参する。詳しくは日本オラクルのWebサイトに掲載されている案内をご覧いただきたい。
■試験の傾向と対策
試験は、試験問題に記された課題を実機で実現(環境を構築)する実技試験だ。Linux+の試験では、ORACLE MASTER Goldの範囲に含まれる内容も若干かかわってくるので、先にORACLE MASTER Gold(DBA)を受験しておくか、対策学習をした方がよいだろう。
当然ながらLinuxに関する基本的な知識も必要とされるが、Linuxの管理・運用についての試験ではないので、それほど高度な技術は必要とされない。コマンドの使い方などは、もし忘れてしまったとしても、「man」などで参照できる(コマンド自体を忘れてしまった場合は厄介だが)。
試験では、以下の表にあるマテリアルが配布される。インストレーション・ガイドもあるので、インストールの参考にはできるが、これがあることに安心しない方がよい。
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表2 Oracle8iの場合の配布マテリアル(Linuxマシンの仕様とインストールすべき内容が記載されている) |
現時点では、日本語での書籍や対策教材は市販されていないようだが、その中にあってORACLE-MASTER.ORGの『Linux+実践講座』が有用だ。試験対策としては、実際にTurbo Linux6.0とOracle8i R8.1.5 for Linuxを使って、実際の試験を想定して何度もインストールから設定までを行うことが効果的なようだ。少なくとも3回は、インストールから設定までの流れを練習しておきたい。試験は選択問題ではないことを意識し、正確な理解を心掛けよう。
なお、Turbo Linux 6.0はターボリナックスのFTPサイトから入手できる。Oracle8i R8.1.5 for Linuxは『トライアルCD-ROMで学ぶ Oracle8i for Linux入門』(忽那桂三、新田絵里子、梅田弘之著、エーアイ出版)にトライアル版CD-ROMが付属しているので、これを使うとよいだろう。Linux、Oracleとも、バージョンの違いによって挙動も異なってくるので、できるだけ試験と同じバージョンを用意したいところだ。
■試験終了後
試験終了後1時間程度で結果が発表され、試験結果レポートが手渡される。合格した場合は、必要な認定申請を行うことで、後日認定キットが送付されてくる。認定手続きの案内は、試験会場で配布される。
■ORACLE MASTER Linux+の意義
Linuxの普及が急速に進んでいた数年前、熟練したLinuxエンジニアの数はまだ少なく、LinuxへのOracleのインストールもやや難しいものだった。そのような時代にあっては、LinuxベースでOracleの構築ができる技術者を認定する意義は高かったと思われるし、試験対策が実務に役立つことも少なくなかっただろう。
しかし、現在ではMiracle LinuxなどにOracle9iをインストールして適切な設定を行うことは、それほど難しいものではなくなっている。つまり、Linux+対策学習を通してスキルアップを図るということは、それほど効果があるとはいえないだろう。
Oracleも扱えるLinux技術者、Linuxも扱えるOracle技術者、といったアピールを積極的に行いたい場合には意義があるかもしれないが、OracleデータベースサーバをLinuxで構築することが珍しくなくなった現在は、Linux+は徐々にその役割を終えようとしているのではないだろうか。
筆者紹介 |
中島能和● 株式会社クロノス常務取締役。講師としてLinux/ネットワークの研修に携わりつつ、書籍の執筆やエンジニアの採用も手掛けるエンジニア。効率的なLinux教育を模索していたときにLPI認定を知り、Linux関連資格・試験にのめりこんでいるという。 |
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