エンジニアのための
Linux認定資格・試験ガイド
最終回(第7回) CompTIA Linux+の傾向と対策
中島能和
2003/5/7
Linuxの認定資格・試験について、雑誌やWebサイトで見掛けることが多くなってきた。しかし、Linuxの認定試験というと、まだまだマイナーな印象を受ける。また、まとまった情報を見る機会も少ない。そこで本連載では、Linux関連の認定資格・試験の全体像を提示した後、各資格試験の特徴や傾向などを紹介していく。 |
■CompTIA Linux+とは
CompTIAは、ベンダニュートラルなIT関連資格試験の認定などを行っている非営利団体だ。CompTIAの認定試験としては、PCのハードウェアやOSに関する「A+」、ネットワークに関する「Network+」などがあり、これらはすでに日本でもよく知られている。
CompTIA Linux+は、6カ月程度の実務経験を持つ技術者のスキルを証明できるよう設計された認定資格で、2001年秋に米国でスタートした。Linuxのインストール、操作、管理、トラブルシューティングなどに加えて、コンピュータ/ハードウェアについての基礎知識も問われる。日本語版は2003年1月に開始されたばかりである。
CompTIAの試験は、CompTIAに参加するIT業界の企業が、業界のニーズに合わせ、業務で必要となる実務能力基準を定めたうえで試験問題を作成している。Linux+の試験作成委員会には、LPIやSAIR Linux and GNUも参加している。LPIとしては、LPI認定レベル1よりもエントリ寄りの位置付けで、相互補完的なものとして考えられているようだ。
ターボリナックスとも連携が取られている。Linux+に加えて、新設される「Turbo-CE Essential」試験(Turbolinux 8 Server対応のTurbo-CE試験のサマリー版)に合格すると、Turbo-CEに認定されるようになる。
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表1 CompTIA Linux+の試験情報 |
■試験の種類と範囲
Linux+は、単にLinuxのインストールや基本的な操作について問われるだけではなく、トラブルシューティングやシステムメンテナンスに重点が置かれており、より実務に即した内容となるように構成されている。また、ソフトウェア的な面ばかりではなく、ハードウェアに関する知識がある程度問われるのも特徴だ。試験に出題される概要については、CompTIAのサイトからダウンロードできる出題範囲(PDFファイル)に詳しく書かれている。
試験は90分以内に94問を回答するオンライン試験で、プロメトリックもしくはVUEの試験センターで受験する。出題はすべて4択問題であり、合格ラインは73%となっている。
主な出題内容は次のとおりである。
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表2 主な出題内容と出題率 |
「Linuxの実行計画」では、Linuxを利用する際の目的や要求に応じたハードウェア、ソフトウェアの関連付けに関する知識や、Linuxの概要、その特徴などが問われる。
「インストレーション」では、環境に適したインストールや初期設定、適切なパフォーマンスの確認について問われる。
「コンフィグレーション」では、システムやネットワークサービスの設定、周辺機器の追加と設定、アクセス権の設定などについて問われる。
「アドミニストレーション」では、一般的なシェルコマンドや管理ユーティリティを使ったシステム管理全般について問われる。
「システムメンテナンス」では、プロセスやネットワークインターフェイス、システムログの監視や、適切なメンテナンス方法、バックアップ、セキュリティ対策などについて問われる。
「トラブルシューティング」では、問題の点検と原因分析、一般的なコマンドやユーティリティを使った解決方法、問題の兆候に対する検証手順などについて問われる。
「システムハードウェアの識別とインストレーション・メンテナンス」では、周辺機器を含めたハードウェアのインストールと設定、トラブルシューティングについて問われる。Linux固有の問題ばかりではなく、一般的なハードウェアの問題も含まれる。
■受験方法
試験はVUEもしくはプロメトリックの試験センターでのオンライン試験だ。出題形式は選択式である。問題の難易度は決して高くはないが、問題数が94問と、一般的な試験よりもボリュームがあるので注意が必要だ。ただし、よほどゆっくり解かない限り、時間が不足するということはないだろう。受験資格は特にないが、Linuxの実務経験6カ月程度があれば十分だろう。
■試験対策と試験結果
「実務6カ月程度の経験」とされているように、高度な知識が問われるわけではない。Linuxにかかわる職種において、共通して必要とされる技術、知識、それらの活用能力、問題解決能力、業務を遂行するための考え方が問われる。トラブルシューティングやメンテナンスに関する出題にウエートが置かれているので、実機を使って業務を行うことが、即試験対策にもなるだろう。
本稿執筆時点(2003年3月時点)では、Linux+に対応する日本語による書籍は出版されていないが、予定はされているようだ。英語の書籍はすでに数冊が刊行されているので、必要に応じて参照すればよいだろう。また、基本的なハードウェアについての設問もあるので、あらかじめA+とNetwork+の試験範囲を確認しておくとよいだろう。
試験の結果は試験終了後、すぐに表示される。Linux+の得点範囲は100〜900点で、655点が合格ラインだ。印刷して渡される試験レポートには、不正解があった課題が列挙されるので、自分の弱い部分を確認することができる。数週間後、CompTIAより認定書が送付されてくる。特に合格者がしなければならない手続きはない。
なお、試験に不合格の場合、2回目までは自由に受験できるが、3回目の受験からは、前回の受験日より最低30日以上の間隔を置かなければならないとされている。
■CompTIA Linux+の意義
エンジニアとしてCompTIA Linux+を取得することにはどんなメリットがあるだろうか。
すでに業務においてLinuxに携わっている場合は、基礎的な知識やスキルも含め、実務をしていくうえでの考え方を再確認できるだろう。独習を重ねた場合は、間違った理解に気付かずに技術を積み重ねてしまったり、その業界では常識的な知識が欠落していたりする危険性があるが、Linux+を利用することで、意外な弱点を発見できるかもしれない。
これからLinuxエンジニアを目指す場合は、試験対策を通して、実務の前提となる基盤の知識を確立させることができる。ソフトウェアばかりでなく、ハードウェアに関しても一定の理解を求められるので、バランスの取れたLinuxエンジニアを目指すことができるだろう。
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筆者紹介 |
中島能和● 株式会社クロノス常務取締役。講師としてLinux/ネットワークの研修に携わりつつ、書籍の執筆やエンジニアの採用も手掛けるエンジニア。効率的なLinux教育を模索していたときにLPI認定を知り、Linux関連資格・試験にのめりこんでいるという。 |
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