エンジニアが語るリレーエッセイ
エンジニアに資格は必要か?
第11回
大切なことは日々の仕事
毛利満夫氏
2002/8/7
毎回さまざまな分野のエンジニアに、「エンジニアに資格は必要か?」をテーマに、自身の実体験などを織り交ぜて語っていただく。エンジニアの“生”の声を紹介する月刊リレーエッセイ。今回は、金融関係のSEを皮切りにさまざまなシステム構築を手掛け、現在SEと営業の2つの役割を担っている筆者が、ITエンジニアにとって必要なものを考える。 |
■ITエンジニアを取り巻く状況
私はソフトウェア会社に在職し、汎用系プログラマ、業務SE、プロジェクトマネージャを経験したのち、現在はモバイルに特化するコンサルティング営業およびシステム提案・構築(システムインテグレーション)を行っています。今回はSEの端くれとして、これまでの経験を踏まえて意見させていただきます。IT業界に身を置く方やこれからITエンジニアを目指す方のお役に少しでも立てれば幸いです。
ご存じのとおり、ITエンジニアにはプログラマ、SE、プロジェクトマネージャ、コンサルタントなどさまざまな職種があり、それぞれに必要とされるスキルがあります。いままでは自分の専門分野に特化したスキルがあれば事足りていました。ところが終身雇用制の崩壊および成果主義の導入など、変革の時代といわれる現在においては、求められる要素も常に変化しています。従って、自分の役割に閉じこもって“与えられた仕事をこなすだけ”の人材への需要は激減していくと思われます。まして、中国の低コストで優秀なITエンジニアの活用が注目される昨今、日本のITエンジニアにとっては厳しい時代が到来しつつある状況といえるのではないでしょうか。
■市場価値のあるITエンジニアとは?
私は業務上、たくさんの企業の方(顧客)と接する機会がありますが、従来の現場ではビジネスサイドの要求に関しては、クライアントが決定するものでした。そして、われわれ(請負方:クライアントの対義語)はその要求を満たすシステムをいかに短納期かつ安価で構築するかに集中していればよかったのです。ところが急激に変化する社会状況の中、企業が抱える問題の構造自体が不明確な状況でITエンジニアに求められる能力は、ビジネスを理解し、ビジネスとITを橋渡しする能力であるといえます。
その中で最もコアとなるビジネススキルは、コミュニケーションスキルではないでしょうか。コミュニケーションスキルは、ヒアリング、レビュー、グループミーティングなどシステム開発のあらゆる場面で必要となるからです。従って、どんなに専門技術のスキルアップを図ってもコミュニケーションスキルなどの土台となるビジネススキルが身に付いていないと意味がないと考えております。
■ITエンジニアにとって資格は必要か?
IT関連の資格については、情報処理技術者資格などの公的資格からマイクロソフトなどのベンダ資格までいろいろな資格が存在しますが、私がプログラマをしていたころと比べると、最近はより実務に役立つものに変わってきました。
しかしながら、そもそもスキルの陳腐化のスピードが速いIT業界では、新しい資格制度が誕生するころには、その資格の市場価値がなくなっている、という資格の陳腐化も同様に起きているのです。従ってIT業界の技術動向も見極めながら対応していく必要があると思いますが、あくまでも資格取得はゴールではなく「自分のスキルアッププロセスの中で到達度を判断する1つの手段」として活用するものだと考えておリます。
■大切なことは日々の仕事に能動的に取り組むこと
これまで述べた内容を踏まえていえることは、世の中や会社が以前にも増してどのようにな方向に進むか予測できない状況の中で、少なくとも会社に頼っていたのでは、市場価値のある人材にはなれないということです。そして、自分で考えて行動しないと物事は変わらないし、自分自身の価値も上がらないのです。
従って、ITエンジニアにとって資格は必要か? という問いに対しては、必要ではあるが、もっと大切なことがあるということです。そしてそれは、日々の仕事に能動的に取り組む姿勢であると考えております。
筆者紹介 |
もうり みつお■1987年、独立系のソフトウェア開発会社に入社。主に業務系SEとして、金融系プログラマ・SEを経て、オープン系データベース構築を担当した。現在はシステムインテグレーション担当として、システム提案からプロジェクトマネジメントまで、トータルソリューションの構築にSEと営業の両方の立場からかかわっているという。 |
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