エンジニアが語るリレーエッセイ
エンジニアに資格は必要か?
第4回 資格を持っている場合の効能とは?
いわわ わせ氏
2001/12/21
毎回さまざまな分野のエンジニアに、「エンジニアに資格は必要か?」をテーマに、自身の実体験などを織り交ぜて語っていただく。エンジニアの“生”の声を紹介する月刊リレーエッセイ。第4回は、ネットワークの設計などを担当するいわわ氏が、最近身近に起こったことなどから、資格は必要かを考えてみたという。 |
■資格っていったい
私は学生時代、国家試験などの資格試験に合格すれば、社会に出てから役に立つはずだと信じて勉強したことがあります。実際に試験に合格し、就職には役に立ったのかもしれませんが、現実の仕事にはほとんど役立っていないように思えます。
例えば、簿記の知識は伝票を書くときに役立っています。しかし、そんなことは簿記を知らなくても、経理の人に聞けばできる程度のことです。また、ある技術系の資格を持っていても、試験に出たような機器や技術は、私が就職した会社で利用したことはありません(利用している会社を探して就職するのも大変でしょう)。さらに技術は日々進化していますから、持っている資格も陳腐化する一方です。
■資格がなくても仕事はできる
現在、私が働いている会社の“偉い人たち”は、社員に対して毎日口癖のように、「ベンダ試験を受けろ」といっています。会社が受けろというあるベンダ試験は、ネットワーク機器ベンダの資格です。試験に合格しても資格に有効期限があるため、資格を持っていれば新しい知識や技術がある証拠・指標になっているようです。しかし、その資格を持っていないエンジニアだって、同じ仕事はできるのですが……。
あるとき、大手企業からの依頼が営業部にきました。インターネットのインフラ系の仕事の依頼ですが、簡単にいうと、通信機器の設定など通信全般のお手伝い(ヘルパー)が欲しいというのです。その依頼を受け、数人のエンジニアがその企業に面接に行ったところ、資格がないという理由で門前払い……。そのことに関して会社の“偉い人たち”は、社員に怒りをぶつけていましたが、結局、依頼元の会社は人が足りないので、やはり人を送ってほしいと再度依頼があり、数人のエンジニアを派遣することになりました。その騒動を見て感じたことは、結局資格がなくてもエンジニアは仕事が可能だということです(いろいろとあったけれども)。
この業界の会社の多くは、仕事の指標などとして“資格”を取り入れているのは事実でしょう。新たに社員を雇う場合は、中途採用ならば過去の実績を見るでしょうし、資格も考慮するはずです。新人の場合には、実績がなければ資格の有無も参考になると思います。社員も資格取得のために試験を受験することで目的意識が持て、スキルの向上に役立つはずです。
■それでは資格があれば……
話は変わりますが、受けた(受注した)仕事をだれにさせるのかは、何を基にして決めているのでしょうか? 過去の仕事の実績、学歴、資格、性格など、さまざまな基準が考えられます。私の場合、重要視する順番で並べると、過去の実績、性格、気力、資格といったところでしょうか。
実績のある人は、ノウハウや仕事の感覚(勘)などでスムーズに仕事が進められそうです。性格と気力は、どのくらい頑張れるか、客とコミュニケーションが取れるかなどが分かります。そして優先度は最後になりますが、資格があれば、知らない知識を覚えるよりも、資格で覚えた知識を思い出す方が早そうに思えます。ベンダ資格を取得していれば、少なくともそのベンダの製品・機器は少なからず操作・設定できるはずです。ただし、それがワープロ検定レベルでは、あまり役立てることはできないかもしれませんが……(いや、ドキュメント作成に役立つと見るべきか?)。
■営業とSEとの関係とは
最後に、ごく個人的なことを書いておきます。私は、ネットワークを担当する部署にいましたが、つい最近になって営業関連の部署に異動になりました。それで気づいたことです。
現在、多くの企業のシステムは、ネットワークとは無縁ではあり得ません。そうした客になりそうな企業の人から話を聞いて、「技術的なことはSEを連れてきますので、また改めて打ち合わせを……」なんてことでは、効率が悪く、取れそうな仕事も逃がしてしまうかもしれません。
それならば、営業が技術的なことを含めて全部やってしまえばよいということになりますが、それでは会社はうまく機能しないと思います(そんな営業がいたら、どれほどの賃金になるのでしょう?)。が、せめて用語や技術の概要ぐらいの知識を持って顧客と話を進めたうえで、詳細な提案はSEなどが行うのが理想でしょう(あくまでも私の考えですが)。顧客から見ても、営業が来て名刺に資格のマークでも入っていれば、「むむ! この営業は何とかしてくれそうだ!」なんて思ってくれるかもしれません。いまの営業としての私の仕事は、まさにそんなところにあるのでしょう。
筆者紹介 |
いわわわせ■某会社でネットワークの開発を担当(主にインフラ構築の設計)。最近は中小企業のLAN導入の便利屋さんになっているという。 |
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