エンジニアが語るリレーエッセイ
エンジニアに資格は必要か?
第6回 なぜ資格が必要なのか?
ワイワイ氏
2002/3/8
毎回さまざまな分野のエンジニアに、「エンジニアに資格は必要か?」をテーマに、自身の実体験などを織り交ぜて語っていただく。エンジニアの“生”の声を紹介する月刊リレーエッセイ。今回は、某大手電機メーカーで民生用機器に搭載するマイコンのプログラムを開発している技術者が、エンジニアに必要なものは資格ではないと確信する理由を紹介しよう。 |
■資格のことをすっかり忘れていた
私は某電機メーカーで、民生用機器に搭載するマイコンのプログラムの開発・設計をしています。いわゆる“ソフトウェア屋さん”です。この仕事をしている私には、「エンジニアに資格が必要か?」と問われること自体が不思議です。私も学生のころは、資格を持っていると給料が高くなるのではないか、就職に有利になるのではないか、などといろいろ良いことがあると考え、資格を取ろうと思ったこともありました。しかし、そんな考えは会社で働くようになってから、まったく消え失せました。現に、この原稿を書くまでは、「資格」という言葉すら忘れかけていました。
私にとっていまの仕事をするうえで必要なことは、いかに効率の良いプログラムを書くかです。ほかにも、他人に理解しやすいソフトウェアを書くことも重要です。自分にしか分からないような特異なプログラムを書く人は、はっきりいってどれほど優秀であっても、この仕事には不向きです。効率が良いということは、何もスピードが速いというだけではありません。
■資格=経験ではない
スピードも重要ですが、民生機に使用するチップは、ROMやRAMの容量が小さいため、その使用量を減らすことがとても重要で、スピード向上とバランスを取らなくてはなりません。こうしたことは筆記試験だけでは理解できるわけもなく、経験を積まなければ習得できないことです。しかし、「資格=経験」ではありません。ましてや、資格を持っているからといって給料が高くなることはありません。理由は簡単です。資格を持っているからといって仕事ができるわけではないし、資格を持っていても仕事ができないのであれば、会社には“ただのお荷物”なんですから。
そもそも、なぜ、エンジニアには資格が必要と考えてしまうのか? それは、“資格=その人の能力”とか、「資格を持っていれば仕事ができる」と思い込んでしまう人がいるからではないでしょうか。しかし、そんなことは絶対にないと断言しましょう。
■新しい技術は勉強して習得する
では、どうしてそう考えてしまうのか? それは、その人が自分に自信を持てないからです。この表現は少々間違っているのかもしれませんが、いいたいことは、そういう人は分からないことは分からないと認めて、必要であればその場で習得するという気合がないということです。このような“当たって砕けろ精神”がない人ほど、資格というものにすがってごまかそうとしているのではないかと思ってしまうのです。新しい技術は勉強しないと習得できないのだから、そういう人はエンジニア失格です。
そもそも、数十分間、答案用紙に一生懸命書き込んだくらいで、技術者としての資格が得られるなんて思ったら大間違いです! そんなちょろいものじゃないはずですよ、エンジニアは。技術は“生もの”で、日々進化しています。資格を取るために勉強した知識だけで、エンジニアとしてやっていこうとしても、3日もしないうちに挫折するでしょう。それに試験に出るようなことなど、知っていて当たり前程度の知識でしかないのですから。
■エンジニアに必要なことは
ここまで書けば、もうお分かりですね? 結論を書けば、エンジニアにとって資格なんてものは何の意味もないものです。そもそもエンジニアは、モノを設計したり、作ったりする人たちのことをいうのではないでしょうか? だから、もし、あなたがエンジニアになろうとしたら、人並みに人とコミュニケーションが取れて、人並みに論理的思考ができて、そして、ほんの少しだけ創造力がありさえすればいいのです。
人とのコミュニケーションと論理的思考が、なぜ必要なのかはお分かりでしょう。私は、これら2つの能力は、ほとんどの人がクリアできると思っています。しかし、創造力はどうでしょうか? 創造力といっても、いままでに人類が考えたことがないようなことを創造しろというわけではありません。例えば、何か問題が起きた場合に、その解決のために自分なりにどのような工夫をするのかということです。また、今後、同じような問題が起きないために工夫するとか、問題が起きたときに何が問題かをすぐに判断できるように工夫をするといったことです。これこそがエンジニアにとって必要なものなのだと思います。ただ、マニュアルどおりに設計するなんて仕事は、機械にやらせればいいのです。
■創意工夫も大事な要素
現在勤めている会社の入社時の技術面接で、「いままでに何をやってきましたか?」と聞かれました。私は、いわゆる“パソコン・オタク”ではなかったのですが、学生時代はプログラムを組むことが好きでした。いま考えると、子どもだましにもならないようなゲームやお絵かきソフトを作っていました。お絵かきソフトを開発した当時は、いまのようにハードディスクのような高速かつ大容量な記録メディアは、私のPCには付いていませんでした。そのため、画像データの保存には、フロッピーディスクに書き込む必要がありました。私はそのときに、なるべくデータを保存する時間を短縮しようと創意工夫したのです。そのことを面接で話しました。いま思えば、そのような質問をして、その人がエンジニアとして役に立つかどうかを見分けていたのでしょうか。ちなみに、資格に関する話は何一つ出てきませんでした。
それでも、もしあなたが資格を取りたいと考えるのであれば、試験のパターンを覚えるのではなく、考え方を理解して取得するべきでしょう。考え方は、仕事でも使えるはずだからです。
筆者紹介 |
ワイワイ■学生時代にBASICでプログラム作りをしていたことだけを頼りにソフト開発を希望した。その後アセンブラ、C、C++と立て続けに開発言語が変る中、その都度、独学で各言語をマスターしたという「どうにかなるさ系エンジニア」 |
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