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プロカウンセラーに学ぶチームビルディング

プロカウンセラーに学ぶチームビルディング術

第4回 「わたしも君もOK」! 行動しない部下に指示を出すコツ

ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2010/9/2

チームビルディングとカウンセリングには共通点がある。「人の話をきちんと聞く」「相手の立場になって考える」――口でいうのは簡単だが、実行するのは難しい。訓練を受けたプロカウンセラーからカウンセリングで使うコミュニケーションスキルを学び、メンバーとの信頼関係構築、チーム内のモチベーション維持、すみやかな情報伝達のために生かそう。

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 前回「優れたPMは、プログラマの相談にすぐには解決策を示さない」は「どう部下の話を聞くか=アクティブ・リスニング」がテーマでした。今回は「相手にどう伝えたらいいのか=アサーション」を中心に解説を行います。

伝えたはずなのに、誰も行動してくれない……悩むPM

 プロジェクトマネージャのSさんは、最近ぼやき気味です。「メンバーに方針を伝えたときは皆うなずいていたのに、指示を実行していないようなんだ。皆にきちんと伝わっていなかったのかな……」と、自信をなくしかけている様子です。

伝えるための3段階

 まず、「伝える」と「伝わる」は違うことであると心得ましょう。コンサルタントの中谷彰宏氏は、著書の中で「『伝える』は3段階で進む」と説明しています。

  1. 相手に理解させる

  2. 納得させる

  3. 行動させる

 「相手がいまどの段階にいるのか」を常に把握しながら伝えることが必要だそうです。

 こちらが「相手に伝えた」と思っていても、相手が(1)理解、あるいは(2)納得をしていなければ(3)行動できないのです。「こちらの話したことが分かっていない」という場合は、相手は「“何も”分かっていない」のではなく「(1)理解はしたけど(2)納得はしていない」のかもしれません。

 うまく伝えるためには、段階ごとに対処を分けることがポイントです。

「正解」を出すことより「納得」の方が大事

 前述の中谷氏は(2)納得について「正解を出すことよりも、納得してもらう方が大事」と書いています。いっていることがどんなに正論でも、相手が納得していなければ良い結果を生みません。

 「自分が正しいと思うことは、相手も分かってくれて当然」という考え方もやめた方がいいでしょう。たとえ部下であっても、人はあまり「説得される」ことを好みません。

 カウンセリングでも、「こうした方がいい」という答えを頭では理解しているけれど、なかなか動けないという相談者がいます。そんなとき、カウンセラーは相談者の思いを十分に聞くようにします。すると、相談者の心の中に「自分なりの納得ポイント」が浮かんでくるようです。

 では、どんなときに人は納得するのでしょうか。

自分も相手も大切に――「アサーティブな関係」でいってみよう

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 「相手にどのように伝えるか」を考える前提として、「人とどのようにかかわっていくのか」という「関係の在り方」について考察してみましょう。

 コミュニケーションにおいて、言葉そのもののインパクトは7%程度に過ぎないといいます。口調や語調の強さなどの「話し方」が38%、ジェスチャーや表情などの「ボディーランゲージ」が55%のインパクトを持つようです。言葉以外の部分では、話す人の在り方が表れてくるものではないでしょうか。

 対人関係における基本姿勢には、次のような分類方法があります。

ジョハリの窓
コミュニケーションの4分類

 最も望ましい姿勢は、「自己肯定・他者肯定=相互信頼」の状態です。具体的には、「わたしは自分の意見を伝えていくから、あなたもそうしてください。どちらも大切にしながら、やりとりを重ねていきましょう」というものです。これを「アサーティブな関係」と呼びます。

【カウンセラー用語辞典】 アサーション
 非主張的(自分より他者を優先し、自分のことは後回しにする)でも、攻撃的(自分のことだけ考えて、他者を踏みにじる)でもなく、自分と相手を大切にしながら、自分の気持ちや意見を表現する方法 (高橋修『ひとりで学べるメンタルヘルス・マネジメント検定II種』ナツメ社、2008年) 。

「会議に反論はつきもの」と考えてみる  

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