第5回 部下が本当に嫌がることは、しかられることではなく「無関心」
ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2010/10/13
チームビルディングとカウンセリングには共通点がある。「人の話をきちんと聞く」「相手の立場になって考える」――口でいうのは簡単だが、実行するのは難しい。訓練を受けたプロカウンセラーからカウンセリングで使うコミュニケーションスキルを学び、メンバーとの信頼関係構築、チーム内のモチベーション維持、すみやかな情報伝達のために生かそう。 |
■しかられないけど、やる気が出ない……
プログラマ2年目のNさんは、新しいチームへの配属時にマネージャが変わりました。以前のマネージャからは、仕事の進め方についてよく注意を受けていたというNさん。一方、いまのマネージャはあまり口出しせず、自由にさせてくれているそうです。なのに、Nさんは最近元気がありません。
「新しいマネージャは、あまり細かいことでしからないし、最初は『伸び伸びやれる!』と喜んでいたんです。でもあまりに何もいわれないので、なんだか不安になってきてしまって。しかられないけど、褒められもしない。というか、放ったらかしなような気がして……だんだんやる気が出なくなってしまいました」
■新しいチームでは「ストローク」を多めにしよう
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Nさんのチームはまだ発足したばかり。今度のマネージャは、まずメンバーの様子を見てから口出ししようと考えていたようです。もちろん、チームの方針や方向性、スケジュールなど、重要なことは伝達済みです。
「でも、何かが足りない」――Nさんはそう感じるようです。「前のSマネージャのときに、しょっちゅう呼ばれてお小言をもらっていたのがなんだか懐かしい……。
Sマネージャが自分をしかっていたのは、「Nさんを育てよう」とする思いからの行為だったことに、ようやく気が付いたとNさんはいいます。そういえば、Sマネージャは飲み会のときに「君はへこたれない粘り強さが強みだな」といっていました。「だけど、いまのマネージャは自分のことをどう思っているのかよく分からない」とNさんはいいます。
新しいチームができたとき、マネージャが慎重な振る舞いになるのは当然です。しかし、チームのコミュニケーションを円滑にするには、自分から多めに言葉を掛けていく必要があります。あいさつや雑談、ちょっとした報告へのねぎらい、会議の発言へのコメントなど、小さな瞬間をとらえてメンバーに言葉を掛けてみましょう。これが「ストローク」です。
【カウンセラー用語辞典】 ストローク |
カナダの精神科医エリック・バーンが提唱した「交流分析」の中で、人が他者に与える認知・注意・反応のことを「ストローク」と呼んだ。 |
どんな内容の言葉を掛けるかはもちろん大切ですが、声を掛けることそのものが「あなたに関心を持っていますよ」というメッセージになります。
Nさんは、新しいマネージャから関心を持たれているか分からなくなってしまったといいます。少し大ざっぱないい方をすれば、Nさんは「構われたい」ということです。
若い人は、特に「構われたい」傾向が強いように思います。とはいっても、この傾向は若い人だけに限りません。ベテランであっても、自分に関心を持ってもらいたい部分があるのではないでしょうか。
■構ってみる=ストロークにはプラスとマイナスがある
ストロークの具体的なものとして、下記のようなものが考えられます。
- 「おはよう。今日は早いね」
- 「朝から難しい顔してパソコンに向かっているな。あの仕事、頑張っているんだね」
- 「このレポートは、とてもすっきりできているなあ」
- 「さっきの会議のあの発言、いいタイミングだったよ」
- 「今期は、設計スキルがずいぶん伸びたね」(定期面談の場などで)
ストロークは、言葉だけに限りません。笑い掛ける、同性同士の場合は少し触れること(肩をぽんぽんとする、ハイタッチなど)もストロークに当たります。
さて、ストロークには、人が「快い」と感じるものばかりではありません。
- 「こんな初歩的なミス、駄目じゃないか」
- 「新規の顧客対応で、あと一歩積極性が足りなかった」(定期面談)
- 怖い目でにらむ
- そっぽを向いて話をする
- 机をたたく
などもすべてストロークです。上記の例は「マイナスのストローク」といいます。一方、人が快いと感じる方は「プラスのストローク」と呼びます。
人は、放っておかれることが一番つらい |
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