第8回 これは相手が仕掛けたゲームだ! いつもイラつく会話の正体
ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2010/12/21
チームビルディングとカウンセリングには共通点がある。「人の話をきちんと聞く」「相手の立場になって考える」――口でいうのは簡単だが、実行するのは難しい。訓練を受けたプロカウンセラーからカウンセリングで使うコミュニケーションスキルを学び、メンバーとの信頼関係構築、チーム内のモチベーション維持、すみやかな情報伝達のために生かそう。 |
■いつも気まずくなって終わる会話相手
Kマネージャが、ため息をつきながらこんな話をしてくれました。「メンバーのN君と話していると、なんかいつも嫌な気分になって話が終わるんですよね」とのこと。それはテーマにかかわらず、だそうです。
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「話をしだすときは“今日こそ穏やかに話をしよう!”と思うんですよ。でも、最後になるとイライラしたり、むかついたりしてしまって……。まずいな、と思って取りあえずの結論を出して終わるんです」
皆さんはこんな経験ありますか?
Kマネージャに話のやりとりを思い出してもらい、相手のどんなところが嫌なのかを考えてもらいました。「Nさんの口癖、ですかね」。Nさんは、Kマネージャのどんな提案や指示にもまず「はい、でも……」というのだそうです。
それをいわれたとき、Kマネージャは「イライラしてくる」「自分に能力がないように感じてくる」ということでした。どうやらKマネージャは、Nさんの“ゲーム”に巻き込まれているようです。
■交流分析の“ゲーム”とは
カナダ出身の精神科医エリック・バーンは「交流分析」という研究を発表し、「人間関係の中ではさまざまな“ゲーム”というものが体験されている」と提唱しました。
【カウンセラー用語辞典】 交流分析(Transactional Analysis) |
Transactional AnalysisはTAと呼ばれ、エリック・バーンによって開発された。人は対話したりふれあいを持ったり、お互いに交流し反応し刺激しあって生きているが、この交流、コミュニケーションを分析していくのがTA。いくつかの分析方法が提示されているが、一貫して重要視されているのは人間関係における親密さであり、人と人との間に行われる好意的な注目や言動というプラスのストロークである(中央労働災害防止協会 心理相談専門研修テキスト p.79より)。 |
ゲームについて、バーンは「繰り返し行われる一連の交流で、最後には両者が不快な感情を残して破壊的に終わるもの」と定義しています。
交流分析では、人は肯定的な承認や愛情を求めてコミュニケーションするものと考えられています(参考:第5回「部下が嫌がるのは、しかられることではなく『無関心』」)。
もし、肯定的な承認が得られなければ、否定的な交流であっても相手から引き出そうとします。子どものころからの成長過程で、こうした態度が無意識のうちに固定化したものが“ゲーム”となります。
●ゲームの特徴
- ゲームを仕掛けられた方が嫌な感じを味わって終わる
- 仕掛けている方は無意識(悪気はない)
ゲームを仕掛けられたことがあると思い当たる場合は、相手に振り回されないよう、まずはゲームに対する理解を深めましょう。
■ゲームに巻き込まれないためには?
(1)ゲームに気付く
ゲームは無意識のうちに行われます。ですから、まずは「これがゲームだと気付くこと」が重要です。
「いつも嫌な感じで終わる……これは何だろう?」と冷静に考えてみましょう。相手は、本当は何を求めているのでしょうか? ゲームを仕掛けられたとき、自分が抱く感情に注目してみましょう。
例えば、無力感や罪悪感、不安といった感情が出てくるなら、それが“相手が無意識に与えようとしている感情”なのです。
●ゲームだと気付くためのポイント
- いつも同じような嫌なパターンで終わる
- 表面上の会話とは異なる“裏面のメッセージ”をやりとりしている(KマネージャとNさんの例では、Nさんの側に「自分の考えを曲げないぞ」という無意識のメッセージがあると考えられます)
- 仕掛けている側が、最後に「え! こんなはずじゃなかったのに……」という混乱で終わる
(2)ゲームには種類がある
エリック・バーンは著書の中で、日常生活でよく見られるゲーム例を30種類以上も挙げています。ここでは、その中の一部を紹介します。
●「ええ、でも」ゲーム
最初に挙げたNさんの例は、このゲームに当たります。
A:これはどうかな?
B:ええ、それはやってみました。
A:では、こういうのはどう?
B:そうですね。でも、難しいと思います。
A:そう、じゃあこんなのをやってみるっていうのは?
B:はい、やってもうまくいきません。
一応、「ええ」とか「はい、そうですね」とはいうものの、会話はいつも否定で終わり、こちらの提案はことごとく却下されてしまいます。仕掛けられた側には「じゃあ、どうしたいんだ!」というイライラが生じ、相手を満足させる提案ができない自分は無力な存在である、と感じて終わります。
●「こんなに私が苦しんでいるのに」ゲーム
「自分だけが苦しんでいてかわいそうなんだ」と嘆くゲームです。これは、「相手は何もしてくれない」というメッセージになり、やはり相手に罪悪感や無力感を生じさせます。
●「キック・ミー」ゲーム
いろいろあった結果、相手から見捨てられようとするゲームです。できないことを安請け合いしたり、つきまといすぎてうるさがられて厄介払いされる、など。
あなたもゲームを仕掛けているかもしれない |
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