第3回 「納期に間に合わない!」の根本原因を探る
前田卓雄
2008/11/14
ソフトウェアを創造するエンジニア。しかし、その仕事は本当に「創造的」だろうか。仕事を創造的なものに変え、価値を生むための発想法を紹介する。 |
前回、自分の中に宝物が眠っていることを知った。どうすれば自分の宝物を掘り当てることができるだろうか。宝物探しの出発点は、身の回りに散在している問題を考えることだ。身近な問題を解決することができれば、その効果を直接獲得できるばかりでなく、解決策形成の体験を通じて、将来発生するであろう問題を解決するための応用力も獲得できる。
自分にとって身近な問題、自分のプロジェクトや自社が抱えている問題、あるいは自分のお客さまが抱えている問題に取り組むことから始めるといい。そして、問題解決のアイデアや提案を生み出し、自分だけでなく、プロジェクトチームにも、会社にも、そしてお客さまにも喜んでもらおう。
■解決すべき問題をはっきりつかむ
前回挙げた、「身近な問題の例」を再掲する。読者の抱える問題が含まれているだろうか。
- いつまでもだらだらと続く開発やテスト
- いつまでもなくならないバグ
- 出荷時期の厳守
- あいまいな仕様書や設計書
- よく発生する仕様変更や仕様追加
- チーム内の意思疎通不足
- 新しい技術への追随
これらは問題を取りあえず列挙しただけで、問題そのものを適切に表現していない。そこで、理解しやすい言葉に置き換える(図1)。
図1 問題を理解しやすい言葉に置き換える |
これでもまだ自分の解決すべき問題がぼんやりとしていて、どこから手を付けてよいのか思い浮かばないのが普通である。誰もがこの状況に遭遇する。そして、忙しさにまぎれて問題から遠ざかり、宝探しをやめ、問題を抱えたままのムダな時間を過ごしてしまう。この心理的な惰性は想像以上に強く働く。つまり、致命的になるまで何もしないのである。これでは、いつまでたっても宝物を掘り当てることはできない。
宝探しの開始地点では、「解決すべき問題の明確化」だけでなく、「実践の意志」が欠かせない。自分の内部に秘めた宝探しへの強い意志である。
それでは、強い意志を持って、これらの問題を掘り下げてみよう。
図2は、図1に記載された問題がほかの問題とどのようにかかわっているか、単純に関連付けて表したものである。現実には、図2に記載されていない関連があるかもしれない。本当は、問題の発生している状況を簡単な漫画にして表すなど、分かりやすくとらえることが必要である。
図2 問題の関連を理解する |
「解決すべき問題」は何か。もし自分がテスト担当者であれば、問題解決の主眼は「バグを発見し、品質を保証できるようにすること」だ。もし出荷担当者であれば「納期に間に合わせること」。設計担当者であれば「要求を的確に盛り込んだ設計書を作成すること」だ。このように、それぞれに閉じた問題としてとらえることができる。
しかし、図1のような複数の担当者が関与する問題をそれぞれの立場から解決できたとしても、全体として十分な効果を獲得することはできない。部分的な解決では満足できない。全体をとらえた問題定義を行い、問題解決のスコープを明確にする必要がある。
■解決すべき問題の中核を明らかにする
図3の問題定義文を見てみよう。解決しなければならないことが複数混在していることが分かる。
プロジェクトに必要なスキルを獲得し、 プロジェクト内の意思疎通を図り、 仕様変更や仕様追加によるバグ発生をなくし、 納期どおりにソフトウェア製品を出荷する。 |
図3 問題を定義する |
この問題定義文には、スキル獲得の問題、意思疎通の問題、仕様変更や仕様追加の問題、納期の問題、バグが多発する問題などが混在している。これでは、どの問題解決が最も重要なのか、さっぱり分からない。問題の掘り下げが足りないのである。何を解決したいのか、自分自身にあらためて問い直さなければならない(まだ「解決すべき問題」の核心をつかんでいない)状態である。
前回紹介した「究極の理想解」を思い出してほしい。どのような解決がこの上ない理想的な状態を実現するのか、あらためて問い直してみよう。すべての問題が解けている状態とは、どんな状態だろうか。
仕様変更や仕様追加をいつでも取り入れることができる。プロジェクトメンバーのスキルは十分確保されている。メンバー間の意思疎通が適切に行われる。あいまいな仕様書は皆無。バグもなく、いつでも納期どおりにソフトウェアを出荷できる。そんな状態だろうか。究極の理想解をイメージし問題を明確にすることによって、初めて革新的なアイデア出しにつながる。すなわち、究極の理想解は、問題の核心をつかむことに役立っている。
われわれの解くべき問題は何か。問題を掘り下げるには、根本原因を推定することが肝要だ。
解決すべきは「納期通りにソフトウェア製品を出荷する」こと |
@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。
現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。
これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。