仕事に役立つビューチェンジのノウハ

第7回 「イヤな仕事」を「素晴らしい仕事」に切り替える

樋口研究室
飯田佳子

2010/4/16

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「自分は正しく行動している」と考えていても、評価者がそう感じていなければ、あなたの評価はあなたが納得する形でなされない可能性が高い。評価者に考え方を変えてもらう? もちろん、それは不可能ではないが、はっきりいって非常に難しい。むしろ、自分のビュー(視点)を相手のビューにチェンジ(変化)させた方が楽だ。

 どんな人でも「こうありたい」と思う成長のイメージがある。だが、成長のイメージに沿った仕事だけをしていられるわけではない。実際には、嫌な仕事や苦手な作業を任され、モチベーションを落とすこともある。

 そこで今回は、ビューチェンジの発想を使って、嫌な仕事を任されても、モチベーションを落とさずに仕事を継続する方法を考える。

■ 「橋渡し役になりたい」と思っていたのに

 今回は、外資系のサービスプロバイダで、技術サポート(テクニカルサポート)の仕事を始めて5年目の「Aさん」の事例を紹介する。

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 大学で情報処理を専攻していたAさんは、もともと語学が得意だった。パソコンで動くソフトウェアのほとんどは海外で作られていることに気付いたAさんは、ITスキルを身に付けて、日本と海外とをつなぐ「技術の橋渡し役」になりたい、という思いを抱くようになった。

 だがある日、樋口研究室を訪ねてきたAさんは、「モチベーションが落ちてしまっている」と相談を持ち掛けてきた。外資系の会社で実際に仕事をするようになったが、自分の目標とかけ離れた仕事ばかり、というのがAさんの悩みだった。

■ せかす顧客、動かない開発部

 Aさんの会社では、SaaS型のネット通販企業向けのサービスを提供している。ネット通販の勢いが好調なこともあって、Aさんの会社のサービスを使う業者は増えてきている。サービス売り上げ(課金)の伸びも順調だ。

 ある日、サービスを利用する顧客(通販業者)から、「決済に提携先のクレジットカードを使えるように機能追加してほしい」という依頼があった。決済機能を多彩にすることで、ネット通販を利用する消費者は増える。通販業者にとっても都合がいい。

 技術サポートのAさんは、自社のシステムを決済先のクレジット会社と接続しないといけない、と考えた。開発部は日本にはない。Aさんは、依頼をメールで海外の開発部に伝えた。

 しかし、開発部の返答は「ノー」だった。理由は「そういう機能追加計画は、今年の開発プランに入ってないから」だという。

 そういわれてしまうと、Aさんにはどうしようもないので、そのまま顧客に伝えた。すると、顧客は声を荒げてクレームを寄せてきた。

 「君のせいで、わが社は売り上げを落としてしまう。どうしてくれるんだ!」

 Aさんは一瞬、固まったそうだ。え、それって、わたしのせいなの? わたし、ただのエンジニアなんですけど……。

 とはいえ、顧客のクレーム(要求)は開発部に伝えなければならない。Aさんはクレームの内容を、海の向こうの開発ディレクター(開発部長)にメールで伝えた。

 通常、1日ほどかかる返信が、リアルタイムで戻ってきた。

 「そんな意味のない機能追加にいちいち付き合うな!」

 そのメールには、開発ディレクターの怒りの言葉が記されていた。

 Aさんの会社は外資だ。世界中にユーザーがいる。クレームや要求も世界中から届く。特定ユーザーの細かい要求をいちいち聞き入れるわけにはいかない。そういう趣旨のメールだった。

 確かにそうかもしれない、とAさんは考えた。仕方がないので、そのまま顧客に伝えた。すると再び大きな声で怒鳴られた。

 「もう君の会社の利用はやめだ。ほかのサービスに乗り換える!」

 Aさんは悩んだ。これって、わたしの仕事なのだろうか……。

■ 右から左へ言葉を流す仕事

 AさんはITスキルを身に付けたいと思っている。だからこの会社に入った。だが、いまの仕事は、顧客に罵声(ばせい)を浴びせられ、開発部からも怒鳴られる。その狭間(はざま)で、身動きが取れない。おかしい。ヘンだ。このままでITの知識が習得できるのか……。

 「わたしの仕事は右から左へ言葉を伝達しているだけ。まるでルータみたい。これは自分のやりたい仕事ではない……」

 自分の仕事をルータと表現するとは! 開発はモノを作るだけ。顧客はモノを使うだけ。両者の言葉を流すだけが自分の仕事。Aさんの悩みが、その言葉から伝わってくるようだ。

 しかし、このまま両者(顧客と開発部)と「やれ」「できない」を繰り返していても、何も進まない。なんとかビューチェンジを使って突破口を見つけ出さなければ。

右も左も喜ぶデータの渡し方

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