ITSSレベル判定調査の結果はいかに?
ITエンジニアの年収とスキルに相関あり?
岩崎史絵
2008/3/21
@IT自分戦略研究所とネクストエデュケーションシンクが2007年11月から1カ月かけて行った「ITSSレベル判定調査」。応募したITエンジニアのスキルレベルをチェックするとともに、各ITエンジニアの職種や業務内容、年収、資格取得の有無などをアンケートで回答してもらい、その結果を集計した。今回はその中から、「スキルレベル」「年収」「資格取得の有無」と、各職種別スキルの強い点、弱い点について、結果を見ていくことにする。 |
■総回答者数約2000人、ITSS調査を実施
@IT自分戦略研究所の記事「情報処理技術者試験はITSSでこう変わる?」でお伝えしたとおり、情報処理技術者試験の改訂に伴い、ITSS(IT Skill Standard:ITスキル標準)との連携が進みそうだ。なお、ITSSについては、次の記事を参照してほしい。
ITSSに関連する記事 |
ITSS (Skill Standards for IT Professionals) @IT情報マネジメント用語辞典 |
ITエンジニアはITSSにどう向き合うべきか @IT自分戦略研究所 |
ITスキル標準(ITSS)はエンジニアに変革を迫るか @IT自分戦略研究所 |
こうした状況の中で、@IT自分戦略研究所は、ネクストエデュケーションシンクと共同で、2007年11月26日〜12月25日まで「ITSSレベル判定調査」を行った。
これは、個人/企業内個人を問わず、幅広くITエンジニアを募り、現在の職種や業務内容などを簡単なアンケートに回答していただいた後、ネクストエデュケーションシンクの「ITSSレベルチェッカー」の調査版で個々人のスキルレベルを判定するもの。このデータを基に、現場のITエンジニアのスキルレベルと、実際に担当している業務内容、職種や年収との相関関係を抽出。現実のITエンジニアのスキルとその実態を明らかにした。
こうした調査は、ほかの調査機関でも実施しているが、本調査はITエンジニア個人からの応募を基にしているため、特定のスキルや技術、職種、企業に偏ったものではないという特徴がある。そのため、より現場のITエンジニアの実感に近い調査結果となったのではないだろうか。
主な質問項目は「現在の職種」「勤務先企業規模」「勤務先企業の業種」「役職経験年数」「年収」「資格の有無」「性別」「年齢」など。回答者総数1892人、うち男性1652人名、女性240人で、勤務先企業の業種は「IT関連企業」が81.9%、「ユーザー企業」が18.1%。平均年齢は32.6歳、平均年収は507万円という結果が出た。なお、役職で見ると、「一般社員」が55.5%と全体の半数以上を占め、主任・係長職などの「監督職」は16%、次長・課長職など「中間管理職」は9.9%、派遣やフリーは8.5%だった。
次から、「ITSSレベルチェッカー」の判定を組み合わせた調査結果を詳しく見ることにする。
■ITSSのスキルレベルと年収との関係は?
今回の調査は、ITSSスキルフレームワークと連動した形で回答者のプロフィールを求めており、職種の内訳も「マーケティング」「セールス」「コンサルタント」「ITアーキテクト」「プロジェクトマネジメント」「ITスペシャリスト」「アプリケーションスペシャリスト」「ソフトウェアデベロップメント」「カスタマーサービス」「ITサービスマネジメント」「エデュケーション」と、ITSSに準じている。
回答者全体のスキルレベルは平均2.1で、全般的にスキルレベルが高かったのは、カスタマーサービスに従事する35〜39歳の層だった(グラフ1)。
グラフ1 12職種のうちスキルレベルが最も高いのは、35〜39歳のカスタマーサービスに従事する人だと分かる。なお、レベルの結果はネクストエデュケーションの「ITSSレベルチェッカー」の調査版による。これは、グラフ2以降も同じ |
次に、職種とレベルと平均年収の関係はどのようなものか見ていこう(グラフ2)。
グラフ2 ITアーキテクトは、レベル4以上だと年収900万円を超えているが、カスタマーサービスは、レベル1だと250万円前後 |
レベル4以上のITエンジニアとその職種、平均年収の関連は明瞭な結果が得られなかった。しかしざっと見ると、ITアーキテクトでレベル4以上であれば年収900万円超、反対にスキルレベルが全般的に高いはずのカスタマーサービスは、レベル1だとが260万円弱という結果が出た。またレベル3くらいであれば、コンサルタントとプロジェクトマネジメントも、平均700万円超という高収入にあるようだ。これを特に「コンサルタントのレベルと年収」に限ってドリルダウンすると、レベル3であれば900万円を超えることも珍しくはない。
職種別の平均年収はどうだろうか、今回の調査から得られた高年収職種ベストスリーは、コンサルタント(687万円)、マーケティング(642万円)、プロジェクトマネジメント(638万円)だった。技術職の最高峰ともいえるITアーキテクトの平均年収は618万円で、残念ながらベストスリーに入らなかった。
一方、平均年収が最も低かったのはカスタマーサービス(410万円)。コンサルタントと比べた場合、レベル3ならばコンサルタントは年収700万円超だが、カスタマーサービスだと、良くて400万円前後。年収は、ITSSのレベルより、職種で左右される要素が大きいのが現状のようだ。
具体的な業務内容を見ていこう。今回の調査では、プロジェクト内における自身の立場を「コンサルタント」「ITアーキテクト」「プロジェクトマネージャ」「プロジェクトリーダー」「メンバー」「そのほか」の6種から回答してもらった。このうち、最も多かったのはメンバー(プロジェクトメンバー)で48.8%、次いでプロジェクトリーダー(22.5%)、プロジェクトマネージャ(10.3%)という結果だった。
このうち、最も多彩な業務を背負っているのがITアーキテクトだ。グラフ3で見ると分かるように、すべての業務を平均的にこなしている。例えばITコンサルタントという役割であれば、基本的にコンサルティング業務がメインで、詳細設計などにはあまりかかわっていない。逆にメンバーであれば、実装がメイン業務となる。ここでいう役割は、必ずしも職種と一致しているわけではないが、職種と役割名が一致しているものであれば、ほぼ業務内容は予想できるだろう。
グラフ3 自身の役割がITコンサルタントだと回答した人が、実際にどのような業務を行っているかの回答。これによると、実装や動作テストは低く、上流工程を中心に業務を行っていることを示している |
ITSSのスキルレベルに有利な資格試験はあるか? |
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