XMLマスター、新資格を追加する狙いとは?

XMLマスター、新資格を追加する狙いとは?

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/2/20

 XML技術者育成推進委員会は1月22日、XML技術者認定制度「XMLマスター」の新試験「XMLマスター:プロフェッショナル(データベース)」を2007年12月から開始すると発表した。XMLデータベースを活用したシステム構築の事例が増加する中、こうした業務に対応できる技術者の育成を目指すという。

 新たにデータベース技術者向けに試験を開始するに当たり、その狙いと試験の特徴をXML技術者育成推進委員会運営事務局 穴沢悦子氏に聞いた。

XMLマスターとは

 XMLマスターは、XMLのスキルや知識に関する技術者認定制度。2001年10月に試験を開始した。XMLマスターにはXMLとXML関連技術の基礎技術スキルを問う「XMLマスター:ベーシック」と専門領域での技術力を認定する「XMLマスター:プロフェッショナル」の2種類がある。現在、1万4000人を超える認定者がいるという。

 「XMLマスター:プロフェッショナル」はこれまで、アプリケーション開発者に向けた認定であったが、今回、認定名称を「XMLマスター:プロフェッショナル(アプリケーション開発)」に変更し、新たにデータベース技術者向けの認定「XMLマスター:プロフェッショナル(データベース)」を追加した。どちらの認定も「XMLマスター:ベーシック」の取得が認定条件となる。

XMLを扱うデータベースエンジニアが足りない

XML技術者育成推進委員会運営事務局 穴沢悦子氏

 新たに試験を開始するに至った背景について、穴沢氏は次のように話す。「いままでデータベースというとほとんどがRDB(リレーショナルデータベース)だったと思います。しかし、RDBではデータベース化しにくいデータもXMLデータベースによってデータベース化できるようになってきました」

 日本IBMは2006年7月にSQLとXQueryの両方の言語を扱える「DB2 9」を発表し、米オラクルは次期データベース「Oracle Database 11g」で非構造化データを扱う機能を向上させる予定だ。

 このように徐々に盛り上がりを見せつつあるXMLデータベースだが、問題はXMLを扱えるデータベースエンジニアが足りていないことだという。「XMLを扱ったことがない人にとってはXMLデータベースはどちらかというと遠い存在でした。XMLデータベースとRDBはそれぞれ適材適所で活用法があり、顧客にシステムを提案するときなど、両方の知識が必要となるでしょう」と穴沢氏。XMLデータベースをRDBと同じくらいきちんと扱える人材を育成するために今回の試験を策定するに至ったという。

XMLデータベースの利点

 穴沢氏はXMLデータベースを使う利点について「スキーマの変更が柔軟にできること」を挙げる。これまでのRDBでは1度設計した項目を後から追加・変更しようと思っても、なかなか簡単にできなかった。XMLデータベースを使うと、属性の追加が簡単にできるようになるなど、ビジネスの変化に対応しやすいという。

 例えば病院での検査項目やある機器に使われている部品など、階層構造があり、レコードごとに違う属性を持ったデータを扱う場合には、XMLデータベースが適しているという。「世の中にあるデータは階層構造をとっているものが多く、XMLデータベースではそうしたデータを自然に扱えると思います」

試験を通じて実務知識を得る

 新試験の特徴も「ベンダニュートラルな資格」ということだ。特定の製品によらずに出題されるという。また、設問はケーススタディを中心とし、試験である程度実際の業務を疑似体験できる内容にする予定だという。

 問題作成に当たって、実際に業務でXMLデータベースを扱うITエンジニアにヒアリングを行い、生の声を反映している。「XMLデータベースを扱うときに、ほかのITエンジニアが悩んだポイントを学ぶことが、技術をマスターする近道だと思います」と穴沢氏は話す。

 「業務に役立つ試験にしたいという思いは強いです。試験問題が実際の業務とまったく同じというわけにはいきませんが、できるだけ近付けようと努力しています」

 試験を通して特定の領域に偏らず、広く体系立ててXMLやXMLデータベースについて学ぶことができるという。

試験の内容

 試験の出題範囲は、XMLデータベースの特徴やRDBフォーマットとの違いなどを問う「XMLデータのDB化に関する概要」のほか、XQuery各種サンプル問題の実行結果などを問う「XQuery、XPath式」、XMLデータベース操作時に考慮すべき文字エンコーディングやDTDのID型、スキーマによる妥当性チェックなどを確認する「XMLデータベースの操作」、XMLデータベースのサイジングやスキーマ変更に関するケーススタディ問題、利用可能なセキュリティ方式ごとの特徴、使い分けを聞く「XMLデータ構造の設計」を予定しているという。

「XMLマスター:プロフェッショナル(データベース)」試験範囲
XMLデータの
DB化に関する概要
XMLデータをデータベース化する際の方式
XMLデータベースの特徴、リレーショナルフォーマットとの違い、ファイルシステムにXMLデータを格納することとの違い
XMLデータベースに関連するW3C仕様の概要
XQuery、XPath式 XQuery1.0の基本構文
XPath2.0の基本構文
XMLデータベースの操作 XMLデータベース操作時の考慮点

  ・文字エンコーディング
  ・空白文字
  ・混合内容
  ・特殊文字を含むXMLデータの扱い
  ・データの完全な再現性
  ・デフォルト値の扱い
  ・DTDのID型
  ・スキーマによる妥当性チェックの際の考慮点

XQueryインジェクション
XMLデータ構造の設計 XMLデータベースのサイジング
XMLデータ設計上の考慮点
  ・パフォーマンスを考慮した設計
  ・名前空間の設計
スキーマ変更に関する考慮点
インデックス作成時の考慮点
制約の作成
XMLデータをRDBにマッピングする際のテーブル設計
RDBのリレーショナルフォーマットをXMLデータで取り出す際のXMLデータ設計
利用可能なセキュリティ方式ごとの特徴、使い分け

  ・XML固有のセキュリティ
  ・DBMS側のセキュリティ
  ・インターネットセキュリティ

 試験開始の12月までまだ時間があるため、取得を目指す人はこの間にXMLの基礎を押さえるのがいいだろう。


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