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2009年1月31日に@ITジョブエージェントが開催した「プロジェクトリーダーのためのスキルとキャリア」。当日はあいにくの空模様にもかかわらず、現場でリーダー職を務める来場者が数多く集まり、急遽増席するほどの盛況ぶりだった。本講演の模様をセミナーレポートとしてお送りする。
イベントレポート インデックス
明日からできる! プロジェクトの遅延を防ぐ考え方とリーダーの工夫
講師: Pwcアドバイザリー ディレクター 瘟ェ充宏氏
事例紹介 リーダーエンジニア この先のキャリアの選択肢
講師: アデコ コンサルタント 藤田孝弘氏
開発チームのリーダーシップを高める4つのポイント
講師: 日本シー・エー・ディー 代表取締役社長 小俣光之氏

セッション1: 明日からできる! プロジェクトの遅延を防ぐ考え方とリーダーの工夫

 最初のセッションでは、Pwc アドバイザリー 瘟ェ(すぎおか)充宏氏が講演。実際の業務に使える管理表のテンプレートなど、表題のとおり明日から使える知識が得られるセッションだった。

 瘟ェ氏はまず、リーダーの仕事とは、計画に対する実績を管理する「予実管理」と、プロジェクトに影響を及ぼす「影響要因管理」の2点であると定義。そのうえで、とりわけ「影響要因管理」能力こそがプロジェクトマネジメントのポイントであるとした。

図1 影響要因の管理対象とプロジェクトマネジメントレベル

 瘟ェ氏は管理すべき影響要因を、図1のように「課題」「リスク」「教訓」の3種に分け、この3種を念頭に置くことでチームのマネジメントを発展できると語った。

・課題……すでに発生している影響要因

 課題の管理は、基本であるだけにおろそかにしがちである。「どんなプロジェクトでも課題のリスト化をしているが、実際にはあいまいになっている部分が多い」と瘟ェ氏は語る。

 責任の所在と期限を明確化し、チームのメンバー全員が現状の課題を把握できる状況を作る。それがスムーズな課題管理の第一歩である。

・ リスク …… 潜在的影響要因

 リスクの管理も、チーム全体で分かりやすく共有することが大切である。中でも重要なのは、リスクが顕在化する確度と、顕在化した際の影響度。この2点を全体で認識し、プロジェクトに対する影響が大きいものから対処する意識を持つこと。

・ 教訓 …… パフォーマンスの向上を図る要因

 教訓は通常、プロジェクト終了時などの節目に反省会を開催することではっきりさせるケースが多い。瘟ェ氏はこれを、プロジェクト期間を通じて常に実施するべきものと定義した。

 プロジェクトを進めるうえで有効だった試み、問題だった事象をリスト化し、それに対する改善案を常に用意する。そうすることで、プロジェクトチームを日々前進させることが可能になると瘟ェ氏は語る。

 大切なのは、全員が影響要因に関する情報を共有し、意識できる土台を作りあげること。指示に従わせるのではなく、それぞれの自発的な動きを支援する枠組を作ることが、「成長するチーム」を作るリーダーの秘けつであると強調した。

セッション2: 事例紹介 リーダーエンジニア この先のキャリアの選択肢

 次のセッションでは、アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント 藤田孝弘氏が講演。冒頭藤田氏は、「現在の自分が目標とする姿に至るまで」のキャリアパスを描くことの大切さを語った。キャリアパスを考えるうえでのポイントは、自分のできることとやりたいことを把握すること。その両輪のバランスを取りながら、自分の目指す姿に向けて仕事を選択していくことが大切だとし、やりたいことをイメージするための方法としてマトリクス図を提案した。

 このマトリクス図は、プロジェクトマネージャやSEといった職種を縦軸に、(それらの職種が)技術寄りか業務寄りかといった視点を横軸にした図。例えば、技術力を身に付けてリーダーやマネージャの仕事に就きたいなら、テクノロジコンサルタントやITアーキテクトといった職種を目指せばいいということが分かる。本セミナーの来場者には、サブリーダーからプロジェクトリーダーを務めていて、マトリクス図の中央辺りにいる人が多いため、これからさまざまなスキルやキャリアの色付けができると指摘。どこに進みたいかを考えることで、自分がいるべき場所を考えることが可能になると語った。

 現在は不況といわれており、転職することはリスクだと考えられがちだが、自分の求める仕事を現職で実現できない場合、「残ることそれ自体がリスク」になってしまう。不況でも、即戦力になる有能な人材を求める企業は多い。だからこそ、自分の能力を把握し、活躍できるフィールドがどんなものかを常に念頭においておくことが大切なのだ。

 ケーススタディとして、藤田氏は自身がコンサルティングしたエンジニアのキャリアパスを図で解説(図2)。来場者に「あなたが将来目指す仕事はどのようなものですか」と問い掛けながら、キャリアデザインの重要性を印象付けた。

図2 藤田氏がキャリアコンサルティングした24歳の運用系エンジニアのケース。
35歳で業務コンサルタントになるキャリアイメージを実現するために、
2度の転職を提案。このように多段階でキャリア目標を達成する考え方も必要だ

セッション3: 開発チームのリーダーシップを高める4つのポイント

 最後のセッションは、日本シー・エー・ディー 代表取締役社長 小俣光之氏が講演。自分の経験に基づくリーダー論を熱く展開した。

 小俣氏は、「リーダー」という言葉を「人を引っ張る人物」だと定義。「管理で人を引っ張るのは難しい。管理人に人はついてこない」と指摘した。プロジェクトの構成員となるメンバーに「この人の下に付いて仕事をするとメリットがある」と分からせることが大事だとした。

 小俣氏は自身の経験をベースに、メンバーから支持されるリーダーになるためのポイントとして、次の4点を挙げた。

・ 発想力
 ⇒ ないものを作る力。技術力とそれをビジネスに結び付ける発想力
・ 交渉力
 ⇒ チーム内、クライアントや他部署など、内外と折衝を行う交渉力
・ 決断力
 ⇒ チームの方針を、リーダー自身の責任において決定する力
・ 雰囲気作り
 ⇒ メンバーに成功をイメージさせ、やる気を出させるリーダーの人柄

 小俣氏がこのポイントを話す際に強調していたのが、リーダー自身が技術力や人脈、経験などでメンバーに対するアドバンテージを持つこと、そしてメンバーそれぞれに参加しているという意識を持たせることの2点。決断力を発揮するにしても、メンバーがまったくあずかり知らないところで決定を下し、「こう決まったからやってね」といっても人はついてこない。「やらされている」感を除去し、「自分たちも一員として参加しているんだ」という意識を持たせることが肝要だとした。

 後半はケーススタディとして、「リーダーが現場に貼り付けないケース」など現職リーダーが直面する可能性がある場面を切り取って、小俣氏の体験を踏まえつつリーダーとしての心構えを語った。

◆◆◆

 問題解決の方法論や理想のリーダー像への近付き方など、プロジェクトリーダーやリーダーを目指すエンジニアがすぐに役立てることのできる内容の濃いセミナーとなった。

 セッション間と終了後にはアデコのコンサルタントによるキャリアコンサルティングが行われ、来場者とコンサルタントが活発に意見を交わす姿が見受けられた。現時点でリーダーの立場にある人が、これからのIT業界を支える人材だ、というのは3者に共通した見解である。本記事が、セミナーに参加できなかったプロジェクトリーダーやチームリーダーを目指すエンジニアにとって、明日からの業務の参考になれば幸いである。



提供:アデコ株式会社
企画:アイティメディア営業本部
制作:@IT自分戦略研究所編集部
掲載内容有効期限:2009年3月24日


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