「地道な活動が、大きな組織を変革する力となる」。これを証明したのが、NTTデータ公共分野の「アプリケーションアーキテクト(以下アーキテクト)部隊」である。NTTデータは、2007年3月期連結決算で、前年同期比15.2%増の1兆449億円の売り上げを達成した。その陰には数々のプロジェクトに飛び込んだアーキテクトの活躍もあったのだ。アーキテクト部隊は発足後、今年で4年が経過した。が、新しい方法論を唱えて活動を続ける同部隊にとっては、現在はまだ通過点でしかない。さらなる成果を求めてまい進するアーキテクトとはどのような存在なのだろうか。 |
■アーキテクト部隊、この4年間の軌跡
NTTデータ 公共ビジネス推進部 技術戦略部 オープン技術推進担当部長の伊笹広氏 |
困難な状況でも決してあきらめない。「何かを変革しようというとき、その対象が大きいほど難しいし時間がかかる。これほどチャレンジャブルで面白い仕事はない」。さらりとこう語る姿に、揺るぎない自信が感じられるのは、今年からアーキテクト部隊を率いる伊笹広部長だ。
「公共分野で、今後増加するオープン系のシステム開発に先手を打って対応する」ことを目的に設立されたこのアーキテクト部隊――正式には、「公共ビジネス推進部 技術戦略部 オープン技術推進担当」の2期生として転職した伊笹氏にとって、日本最大級のシステムインテグレータ(SIer)であるNTTデータの公共部門内での変革に向けてきた挑戦は、平坦な道筋ではなかったはずだ。
前職では、外資系ソフトウェア会社で技術コンサルテーションやプリセールス、さらにはプロダクトマネージャを経験し、分散オブジェクト指向に長い間かかわってきたという伊笹氏が、NTTデータに転職を決めたのは「日本一の規模のSIerで、オープン系の開発のリード役を果たしていこう」という、この部隊の設立者で前部長の斉藤信也氏からの言葉だった(同氏は現在、同推進部の技術戦略部長としてアーキテクト部隊を含めた公共分野への技術支援活動を統括している)。
「当初、アーキテクト部隊は社内で認知されておらず、実績もゼロの状態でした。技術的に困難を抱えるプロジェクトに飛び込み、そこを支援する過程で積極的に提案を行い、成果を出しながら徐々に信頼を積み上げていく必要がありました」と伊笹氏。それは、NTTデータが手がけるさまざまなプロジェクトを成功させるために要求定義・設計・実装・検証の各フェイズを地道に支援する草の根活動であり、「提案」→「実行」→「成果が表れる」→「信頼を得る」→「新たな提案」→「実行」→……。この繰り返しによって、従来のNTTデータで不足感のあった「オープン系でのアーキテクト的な視点」が、社内に受け入れられていき、アーキテクト部隊が社内に広く認知されるに至った。
アーキテクト部隊は発足から現在までの4年間に、大きく3つの領域において活動を行ってきた。1つ目は、中小規模案件における技術リスクの低減、アーキテクチャ設計など。2つ目はレガシーマイグレーションをテーマとした大規模案件の提案・基本設計への、中心的な役割での参画だ。そして3つ目として、上流の企画・要件定義に役立つビジネスモデリング手法の開発・適用推進である。
現在、次の段階として見据えているのは、単発のプロジェクトを成功させるのみならず、現場の開発そのものの技術的な変革や、人材の成長をサポートあるいはリードする活動である。
■モデル指向開発への取り組み強化
「これまでモデル指向開発は“絵に描いた餅”と考えられがちだったが、仕組みをしっかり作り上げて、開発の効率化や品質向上を形にしたい」と語ってくれたのは、オープン技術推進担当の葛西哲郎氏。2年半前に転職してNTTデータに入社した同氏は、現在NTTデータが取り組みを強化する「モデル指向開発」のエキスパートチームで活動を行っている。
以前からNTTデータのアーキテクト部隊は、要求定義・設計・実装・検証の各フェイズで、成果物を機械が可読なモデルとして管理し、その間の変換や検証を自動化する試みを進めていた。ここで培った技術累積と、同社のWeb開発フレームワークである「TERASOLUNA」を活用し、システムインテグレーション競争力強化施策の1つとして、今年から推進しているのがこのモデル指向開発だ。
図 従来のシステムは、人間が開発プロセスを遂行する(図の上部分)。それに対して自動化されたシステムでは、人間とマシンが分担して開発プロセスを遂行するようになる(図の下部分)。 |
モデル変換技術を用いて、ソフトウェア開発プロセスの自動化を実現することができれば、複雑な開発プロセスにおいて、労働集約的な作業の削減と開発成果物の一貫性の取れた管理が可能になるという点で、非常に注目を集めている。
NTTデータ 公共ビジネス推進部 技術戦略部 オープン技術推進担当の葛西哲郎氏 |
さらに、今年6月には施策推進の一環として、OMG(Object Management Group)が定めた標準技術仕様に基づく高度なモデル管理技術を保持する独ikv++と資本提携を実施するなど、海外企業との協業体制の強化も進めているところだ。
葛西氏は、このモデル指向開発の仕組みを現実のプロジェクトに適用するための技術コンサルティングや人材の育成を行う一方、現場から得られるフィードバックを基に、仕組み自体をさらに洗練するためのプランニングに取り組む毎日を送っている。
学生時代に土木工学を専攻し、前職では建設会社にて地図情報システム(Geographic Information System:GIS)の開発、企画、導入に取り組み、日本のインフラ作りには並々ならぬ関心を寄せる葛西氏は、「公共事業のITを究めたい。日本を大きく変えるITに携わりたい」との思いを胸にNTTデータに転職した。そして現在、この希望どおり日本のソフトウェア開発が大きく変化する潮流の中心にいることを実感している。
■現状に満足するか、NTTデータで進化するか
一般にシステム開発において、最もアーキテクトの知見が必要とされるのは、プロジェクト初期の要求定義から設計のフェイズである。それぞれのプロジェクトを担当している部署や部門、プロジェクトチームからの要請を受けて、このフェイズにピンポイントでアーキテクトたちが送り込まれる。集中的な支援でプロジェクトを軌道に乗せることが任務であるため、プロジェクトが動き出し、軌道に乗ってきた段階で、徐々に作業を現場のプロジェクトメンバーに引き継ぎ、次のプロジェクトに向かう。いってみれば、システム構築プロジェクトで一番面白いところに入り、創造性を発揮できる恵まれた環境にいるのが、同社のアーキテクト部隊である。
NTTデータ 公共ビジネス推進部 技術戦略部 オープン技術推進担当の星野雄一氏 |
転職によって、このやりがいと喜びを手に入れたアーキテクトをもう1人紹介しよう。葛西氏と同じオープン技術推進担当に加わって2年目を迎える星野雄一氏である。同氏は、新卒で入社したソフトウェア開発会社にて、インフラ周りの設計や構築を3年間経験した後、「自らが意図したインフラ構成をくみとったアプリケーションを自分の手で開発したい」とソフトウェア開発を学び、現場でスキルを磨き、ソフトウェア全体のアーキテクチャ設計に取り組んだ経歴を持つ。
「妥協せずにこだわりを持って開発に取り組み続けることによって築いたキャリア」を持つ星野氏にとって、自身を成長させるステージとして、次に求めたのは“超”が付くほどの大規模プロジェクトに携わることだった。「普通のシステムエンジニア(SE)が考える“大規模”をはるかに超える、壮大な規模のITに携わりたい」との思いでNTTデータへの転職を決意した。
アーキテクトとして、さまざまなプロジェクトに飛び込んで新しい方法論を提唱し、実際の適用に参加してきた星野氏にとって、NTTデータへの転職後の仕事の内容も、前職と大幅に変わったところはないという。しかし、仕事へのやりがいと高いモチベーションはこれまでに比較にならないという。社内でのアーキテクト部隊に対する「信頼」「期待」を裏切らないためにも、いい意味での緊張感を持ち続けているのだ。
「数年後にはプロジェクトから指名されるようなアーキテクトになりたい」と目標を語る星野氏は転職によって、自らの可能性を確かめることのできるステージを手に入れたといえそうだ。
「転職することを考えすぎて先に進めなくなるなら、思い切って転職してみるのも選択肢の1つ。外からいくら眺めていても、中に入らないと分かりませんから。NTTデータについては、入社前は保守的なイメージが強かったのですが、アーキテクト部隊のメンバーに限っていえば、さまざまなフィールドからの転職者が多く、個性豊かで面白いです。中に入って分かった良さもたくさんあります」と星野氏。
■NTTデータのアーキテクトの人材像
それでは、どのような人材がアーキテクトに適しているのだろうか。
ソフトウェアのアーキテクチャを設計し、最適な開発プロセスを適用してプロジェクト全体を支援する役割であるため、個々の要素技術全体を俯瞰(ふかん)し、技術特性を理解できる能力を持っていること。またその技術特性に合わせ、最適な開発プロセスを適用し、プロジェクト全体をリードできるリーダーシップも必要だ。
さらにプロジェクトマネージャと一緒になって「どこに問題があるか」を見つけることができるリスク摘出のセンス、そして新しい方法論や技術がその問題をどう解決するかを見据え、適切な判断を下し、その判断をプロジェクトメンバーへ説得するためのコミュニケーション能力や、説得力も必要となってくるという。
「高度な技術スキルやヒューマンスキルを求めたらきりがありませんが、これから1番欲しいのは、新しいやり方・考え方を広めようとする熱意がある人です。NTTデータは次の3年に向けて、開発についてもほかの面についても、変革に向けた姿勢を強く打ち出しています。もちろん大きな会社ですので、新しいことをやろうとしたときに、時間も手間もかかります。それに屈せず、変革してやろうという気概のある人を、仲間として迎え入れたいと考えています。NTTデータという会社は、その気になれば、ほかの場所とは比べ物にならないぐらい、けた違いの情報を手に入れることができ、さまざまな分野で抜きん出ている人と接することができます。重要なポジションになればなるほど、入り込めば入り込むほど、楽しい会社です。幅広い要素を取り込んで伸びていきたいという人にとっては面白いと思いますよ」(伊笹部長)。
今後新たなメンバーを仲間に加え、更なる進化を目指すアーキテクト部隊が、日本のシステム開発にどんな変革をもたらすのか楽しみである。
選考応募へ進まれる方はこちらから |
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NTTデータ
企画:アイティメディア営業本部
制作:@IT自分戦略研究所編集部
掲載内容有効期限:2007年7月31日
■会社名 株式会社NTTデータ NTT DATA CORPORATION ■本社所在地 135-6033 東京都江東区豊洲3-3-3 豊洲センタービル ■代表取締役社長 山下 徹 ■設立年月日 1988年(昭和63年) 5月23日 ■資本金 1,425億2,000万円(平成19年3月31日現在) ■売上高 1,044,918百万円 (平成18年4月1日〜平成19年3月31日) ■経常利益 85,769百万円 (平成18年4月1日〜平成19年3月31日) ■従業員数(単独) 8,324名(平成19年3月31日現在) ■事業内容 ・システムインテグレーション事業 ・ネットワークシステムサービス事業 ・その他これらに関する一切の事業 |
応募条件等 |
■勤務地 主に首都圏 ■勤務時間 9:00〜17:00 ※職場により個別の時差出勤制度あり ■給与 経験・年齢など考慮し、面接時に話し合いを踏まえ、当社給与規則に基づき決定。 ※年俸制契約の社員は個別に決定します。 ■待遇 【正社員の場合】 昇給年1回、賞与年2回、交通費全額支給、各種社会保険完備、諸手当(住宅、扶養、他)、財形貯蓄制度、社員持株制度、 共済/各種貸付制度、その他福利厚生施設 ■休日休暇 【正社員の場合】 完全週休2日制(土・日)、祝日、年末年始・夏季休暇、年次有給休暇20日、特別休暇(慶弔ほか)など |
経験者採用 |
関連リンク |
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