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要件定義こそ転職活動の肝

年度末を迎え、そろそろ来期のことを考えるITエンジニアは多いだろう。今後の自分のキャリアを考えるに当たり、転職を1つの選択肢として思い浮かべる方も少なからずいるのではないだろうか。

 ITエンジニアなら誰しも、システム開発における要件定義の重要性は骨身に染みて分かっているだろう。転職活動を成功させるためにも、実は要件定義が重要なのだ。転職活動のゴールは転職をすることそれ自体ではなく、転職した企業で活躍し、自らのキャリアを充実させて、プライベートも含めた満足のいく人生設計を描くことにほかならない。

 転職の要件定義にただ1つの正解があるわけではないが、「価値観の明確化〜リスクの確認〜希望のプライオリティ付け」「現有勢力の分析」「企業の調査と選定」の順番に行うのが一般的である。

価値観の明確化〜なぜ転職するのか

 今回はこの順番に沿って、転職における要件定義のポイントを聞いた。IT業界専門の人材紹介会社テクノブレーン株式会社の神戸崇氏はこう語る。

テクノブレーン株式会社 神戸崇氏

 「転職の初期段階において最も重要なのは、個人の価値観を明らかにすることです。現職をなぜ選んだのか、何が問題でそこから移ろうとしているのか。その方が置かれている現状を整理し把握することで、転職希望者が持つ根源的な欲求とゴールを明確にする。この段階を踏むことによって、目標とする企業選びがスムーズに展開できるようになります」

 では個人の価値観とは、具体的にどのような作業によって明らかにするのだろうか。マンツーマンの充実したサポートが特色の株式会社ワークポート横山法典氏が、自身のコンサルティングの手法を語ってくれた。

 「なぜ転職したいのか、そして仕事内容や環境、条件面に対して、その方が持っている理想イメージを、まずは漠然とした言葉で構わないのでお聞きします。あいまいな部分に対しては、角度を変えた質問を繰り返すことで、『譲れないポイント』の強弱を明らかにします。譲れない度合いの高い事柄と現状のギャップとの大きさで、その方の転職の必要性も分かってくるのです」

 なぜ転職するのか、どんな人生を歩みたいのか、譲れないポイントは何なのか。価値観があいまいなままだと転職自体が難しくなるばかりか、たとえ転職に成功したとしても、充実感を得られずに数カ月でまた転職を考えるジョブホッパーになってしまいかねない。『自分を見つめ直す』など何をいまさらと思われるかもしれないが、この作業にじっくり取り組むことにより、転職の失敗を防ぐことができる。社会人にとって最も貴重なリソースである「時間」を失うリスクを避けられるのだ。

リスクの確認〜その転職は本当に必要か

 価値観が明らかになったら、その解決のために転職が必要かどうか確認する段階に入る。コーチングの手法を取り入れたコンサルティングを特色とする株式会社リーベルの石川隆夫氏は次のように語った。

 「転職を考える際には、誰しもネガティブな発想にとらわれてしまいがちです。こうなりたいといったポジティブな発想よりも、現状に対する不満が勝ってしまう。分かりやすい例を挙げるならば、職場の人間関係に対する不満が転職を志すきっかけとなっているケース。この不満は、現職にとどまっていても解消される可能性があり、必ずしも転職が必須ではありません。ネガティブな発想で転職を考えている方には、あなた自身が100%でないように100%いい会社は存在せず、どこに行っても同様の不満は起こり得る、ということをお話します」

 現状に対する不満は誰でも抱くもの。転職によってそれが解決できるかどうかを冷静に考えることも重要だ。また、自分の価値観に忠実に従った結果、転職によって手に入れるものと失うものの大きさも比較しておかなくてはならない。このトレードオフについて、キャリア情報誌「type」や「エンジニアtype」を発行する株式会社キャリアデザインセンター人材紹介事業部の後藤和弥氏は語る。

株式会社キャリアデザインセンター
後藤和弥氏

 「残業が多いことで自分の望むワーク・ライフバランスがかなわずに、現職に不満を持っている場合、転職で希望を実現させることは可能です。しかし得られる時間と引き換えに年収ダウンが起こる可能性もあるので、その数字を具体的に提示し、それでも転職したいかをじっくり考えてもらいます。ちなみに、過去に転職したことで年収20%減というケースもありましたが、その方が転職後にハッピーになれば、何の問題もないわけです。トレードオフにしっかり向き合って答えを出せばいいのです」

 キャリアコンサルタントは、転職希望者の相談を受けてすぐに転職先を探すわけではない。「転職しないで済むにこしたことはない」との視点で、徹底的に現職での解決策を検討し、それでも転職が必要だという結論に達した場合にのみ、次のステップに導くのだ。

価値観のプライオリティ付け

 価値観をすべて洗い出したら、何が「must」で何が「want」なのか個々の要求にプライオリティ付けを行うことが重要だ。その具体的な項目とプラオリティの付け方について、横山氏に語ってもらった。

 「何を重視するかは人それぞれですが、一般的に重要度は次のように設けています。どこに妥協点を見い出すかで、その方の転職で重視するポイントがより具体的に見えてきますね。例えば『とても良い仕事内容の求人があるのだが、年収が低い。あなたは年収を下げてもその仕事をしたいか。下げるとしたらどこまで下げられるか』などの究極の選択に近い質問を次々に出して、考えてもらいます」

 プライオリティ付けには、優先したい事項から思い浮かべる以外にも、『これは絶対に避けたい』というポイントを挙げるのも1つの方法。普段じっくり考えていないことを明らかにする過程で、転職先企業の具体的なイメージができてくる。

 さらに転職後に『こんなはずじゃなかった』ということにならないために、細かい項目にフォーカスする前に、『思い込みを捨てるべき』とアドバイスするのは後藤氏。「私は、『キャリアアップをせねばならない』『○才までにマネジメント職につかねばならない』といった思い込みを捨てて、自分の価値観に忠実になることを勧めています。私たちは多くの転職事例を見てきましたが、世の中のすべての人がキャリアアップで幸せになるとは思っていません。仕事も含めた人生全体でその方が1番ハッピーになる道を一緒に探したいと考えています」

現有勢力の分析〜できること/できないこと

 要件定義の第1歩が自分の価値観をクローズアップすることであれば、次のステップとして必ずやっておきたいのが、自分の経験、スキルを客観的に評価することだ。石川氏はこの段階のポイントをこう語る。

株式会社リーベル 石川隆夫氏

 「企業がITエンジニアの能力を判断するのは、『できること』ではなく『実際に手掛けた案件』です。優秀な人ほど陥りやすいわな、とでも言いましょうか、経験はなくとも『できる』と思ってしまう方がよくいますし、優秀な方は未経験のことがらでもたいがいできてしまうのは事実です。しかし、企業側が重視するのはその人が実際に手掛け、こなしてきた案件の結果と質なのです」

 自分で自分の価値を計ることは難しい。ともすれば過信や思い込み、抱く必要のない不安に苛まれることになってしまう。そこで『ITエンジニア人材市場』という大きな地図の上で、転職希望者がどこに立っているのかを指し示すことから始めるのは後藤氏だ。

 「現在所属する会社が業界のどの位置にあるのか、経験したプロジェクトや保有する技術はどのように評価されるのか、年齢と現在のポジションをIT業界のキャリアステップモデルに当てはめた場合、ほかの人より早いのか、遅いのかといった点などから、あなたという商品が市場から客観的にどう評価されるのかを提示します」

 転職成功の秘けつは、いま自分はどのような状況にあり、今後どこを目指し、どのような道筋でそこへたどり着くかを明確にすることである。自己を客観的に評価することにより、転職したらどのような可能性が広がるのかがイメージしやすくなる。

企業の調査と選定〜希望がかなう転職先は

 転職に対する要求が固まり現有勢力を正確に把握できたら、次はその要求をかなえる企業の選択と絞り込みの段階に入る。このとき肝要なのが、「当該企業で働いている自分」をイメージできるかどうかということ。石川氏は、転職希望者にこのようなアドバイスをするという。

 「『4年後の自分をイメージしてください』という話を必ずします。イメージは明確なものでなくても構いません。今回の転職のテーマが3年で実現するとして、そこからさらに1年。3年+1年の4年後、自分がこの企業でどのように働いているか、その姿を思い浮かべることで、自然と応募する企業の絞り込みが行えるようになるはずです」。現在の転職は目標とする自分に近づくための方法の1つとして考え、常に数年先の自分をイメージすることで、より実りの大きい転職先を選ぶことが可能になるのだ。

 転職活動を進める中で、当初想定していた企業とまったく別の企業を選ぶことはないのだろうか。その点について、横山氏はこう語る。

株式会社ワークポート 横山法典氏

 「転職活動が進むにつれて転職希望者の考えが成熟し、当初とはまったく異なる企業を選ぶこともあります。そんなとき、価値基準や考えが変わったことを本人が把握していれば、悪いことだと私は思いません。私たちは考えが変化したことを伝え、そこから先はご本人が判断することです」。現在の自分が求めるものと将来の自分に願う姿、そして過去の自分の経歴の3点すべてを刷り合わせて初めて絞り込める応募企業であるが、転職活動を通じていろいろな経験をし成長を遂げることで、求めるものは少しずつ変わっていく。必要なのは自らがそれに気付くことなのだろう。

 さらに神戸氏はこうも語った。「企業のことを知るために、個人ができることには限界があります。しかし私たちキャリアコンサルタントなら、実際に現場で働いている人の生の声を聞き、場合によっては転職の相談を受けて、現場が抱えている問題を知っていることもあるのです。それぞれの企業の良い点とリスクとなるポイントを話し、そこで何ができるか、経験を積むことでその人がどうなっていくかをイメージしてもらうことができるのです。私は、候補の企業を挙げるときに、変化球ともいうべき意外な選択肢を提案することがあります。本人が考えてもいなかった可能性が、そこで開けることもありますからね」

 同氏が担当したケースにはその変化球が転職希望者自身も考えていなかった可能性を切り開いた例もあり、転職支援のプロの視点の確かさを教えてくれる。個人では収集しがたい企業の人事や現場担当の生の声に触れることができる、その点だけとってもキャリアコンサルタントを利用する意味は大きい。

 今回の特集では、システム開発を行うように要件定義を行うことで転職を考えた。これらは自分1人でも行うことはできるのだが、転職のプロであるキャリアコンサルタントの協力を得ることで、さらに確かな要件定義を行うことができそうである。自分の将来について思うところがある人は、キャリアコンサルタントに1度相談してみてはいかがだろうか。


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人材紹介会社特集
企画:アイティメディア人財開発部
制作:@ITジョブエージェント

掲載内容有効期限:2008年3月12日

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株式会社リーベル
 株式会社リーベル
会社概要
2000年9月にIT関連業界に特化した人材紹介会社として設立された。企業理念は「クオリティ」という言葉に凝縮されている。現在顧客となっている求人企業は、どれもが世界的または日本のIT業界の各分野における有名企業と成長性の高いIT関連企業である。
設立 2000年9月
従業員数 10人
(キャリアコンサルタント7人)
所在地 東京都中央区日本橋3-5-12
日本橋MMビル3F
URL http://www.liber.co.jp/
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株式会社テクノブレーン
 テクノブレーン株式会社
会社概要
企業が求める人財スペックと転職希望者のスペックをコンピュータですり合わせて両者を引き合わせるだけの人材紹介会社が多いなか、テクノブレーンは、より深く両者のことを知った上でなければ紹介しないというポリシーを持つ。
設立 1992年7月
従業員数 100人
(キャリアコンサルタント44人)
所在地 東京都渋谷区渋谷2-16-1
日石渋谷ビル12F
大阪府大阪市中央区安土町3-4-5
本丸田ビル7F
URL http://www.techno-brain.co.jp/
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テクノブレーンの人財コンサルタントが作成した職種別に最適化した職務経歴書(15職種)テンプレートを無料でダウンロードできます。

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株式会社ワークポート
 株式会社ワークポート
会社概要
大手人材サービス会社をスピンアウトしたメンバーにより、2003年3月に設立したIT業界専門の人材紹介会社。IT業界出身者をはじめ、業界に精通した転職コンサルタントが多数在籍。極秘プロジェクトや新規事業の立ち上げにかかわる求人情報が数多く寄せられている。
設立 2003年3月
従業員数 43人
(キャリアコンサルタント10人)
所在地 東京都品川区北品川5-4-14
イマス北品川ビル3.4F
URL http://www.workport.jp/
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初めての転職でも安心。システムエンジニア・プロジェクトリーダーなど、16の職種に応じた職務経歴書と履歴書のテンプレートとサンプルをダウンロードできます。

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■転職成功者インタビュー

ワークポートの「転職支援」を通じて実際に転職に成功された方からのメッセージ。成功へのヒントを見つけてください。

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「転職しよう!」と思ったけれど実は分からないことだらけ。そんな方は、転職活動を始める前にIT業界での転職をバーチャル体験してみましょう。

→IT業界転職ゲーム


株式会社キャリアデザインセンター
 株式会社キャリアデザインセンター
会社概要
「エンジニアtype」や「type」などの求人情報誌をを発行しているキャリアデザインセンターの人材紹介事業部。募集企業の採用ページにも掲載されない「非公開求人」を多数取扱っている。採用パートナーとして企業の人事担当や代表者、現場社員と強いネットワークを持つ同社ならではの情報の量と質に定評がある。
設立 1993年7月
従業員数 307人
(キャリアコンサルタント40人)
所在地 東京都港区赤坂3-21-20
赤坂ロングビーチビル
URL http://shoukai.type.jp
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人材紹介会社とは

今回取材に対応してくれた4氏は、いずれも人材紹介会社のキャリアコンサルタント。人材紹介会社は、転職希望者に対して転職活動の各工程で支援をしてくれる。転職希望者が紹介した企業に入社すると企業から成功報酬を得るという事業モデルで、転職希望者の利用は原則無料。転職者が早期に退職すると企業に成功報酬を返金するなどペナルティが発生するため、転職を無理強いしたり、希望に合わない企業を紹介したりすることはない。


近年、転職に際し積極的に人材紹介会社を利用する人が増え、2007年に行われた@IT自分戦略研究所/JOB@ITの読者調査でも、「次に使用したい転職の方法」として1番に挙げられた。

@IT自分戦略研究所/JOB@IT 読者調査 2007年春季版より 希望する転職方法 [複数回答] @IT自分戦略研究所/JOB@IT 読者調査 2007年春季版より
希望する転職方法 [複数回答]