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ORACLE MASTERから見えるエンジニアのスキルパス

Oracle Database 10gの速習方法

ORACLE MASTERから見えるエンジニアのスキルパス

Oracle Database 10gのリリースに伴い、ORACLE MASTERも10gに対応する資格体系が発表された。その中で目を引くのが、新しい認定資格「Bronze」が設けられたことだ。Silverより難易度が低く、データベース管理の初級レベルのスキルが問われる資格である。しかしエンジニアにとっても、BronzeはOracle Database 10gのスキル、知識を確実に身に付けられる最初のスキルパスになりそうだ。その詳細をお伝えしよう。

BronzeはORACLE MASTER取得のチャンスに

 日本オラクルは、Oracle Database 10gに対応した資格制度を発表した。その大きな特徴として挙げられるのが、ORACLE MASTERの入門資格としてORACLE MASTER Bronze Oracle Database 10g(以下、Bronze)を設けたことである。これにより、Silver、Gold、Platinumの3段階であったオラクル認定資格制度は、Bronze、Silver、Gold、Platinumの4段階へと変貌を遂げた(図1)。

図1 Oracle Database 10gリリースによる新しいORACLE MASTERの認定資格

 このBronzeは、中小規模のデータベース管理者の登竜門として位置付けられる。

 日本オラクル オラクルユニバーシティ研修部インストラクター 齋藤理絵氏は、Bronzeを取得するにふさわしいエンジニア像を、「最低限の運用管理ができるエンジニアのための認定資格、それがBronzeの位置付けです」と説明する。最低限とは、インストールおよびデータベース作成、メモリ管理、起動や停止、各種基本的なファイル群の保守、ユーザー管理、また万が一の状況に備えたバックアップの取得と基本的なリカバリ作業、これらができることだという。

 もし、Oracle Databaseのインストールやデータベースの運用経験者であれば、Bronzeを取得できる可能性が十分あるという。その運用の定義も、サービスを一瞬たりとも停止できないという厳格なレベルではなく、一般的な運用レベルで構わない。そう考えると、多くのデータベースエンジニアがBronze資格を狙える候補者となるはずだ。

日本オラクル株式会社
オラクルユニバーシティ研修部インストラクター
齋藤理絵氏

 2003年のORACLE MASTERの制度改定では、ORACLE MASTERの入門資格であるORACLE MASTER Silver Oracle9i Database(以下、Silver)の下位に、ORACLE Silver Fellow(以下、Silver Fellow)を設けた。しかし、Silver Fellowは認定資格ではなく、Oracleデータベース技術者の入門レベルの技術力が認定されるのみであった。そのため、「Silverにはやや手が届かないが、Silver Fellowでは認定資格ではないため、取得のメリットがない」と考えたエンジニアも多かったはずだ。

 そのようなエンジニアにもお勧めできる認定資格が、Bronzeとなる。BronzeとSilver Fellowの受験対象者のスキルレベルは、SQLの知識については同等である。しかし、認定資格か、Oracle 10gに特化した管理者としての資格か、この2点で「市場の価値」は大きく違う。

 初級レベルといえどもBronzeは認定資格である。現時点でBronzeは中小規模データベースのニーズの高い日本で先行導入し、その効果によってグローバルで展開する、という戦略的な資格なのである。

Bronzeから確実なステップアップが可能

 新資格であるBronzeがORACLE MASTER認定資格制度の登竜門となったことで、ORACLE MASTERを取得するハードルが下がった。いい換えれば、最初の一歩が踏み出しやすくなった。それだけではなく、次のステップへも移行しやすいように配慮されている。

 「そうはいってもBronzeができたことで、上位の資格に到達するまでの試験数が増えたのでは?」と思えるかもしれないが、実はそうとも限らない。Oracle9iのデータベーストラックでは、Silverで3科目、ORACLE MASTER Gold Oracle9i Database(以下、Gold)で2科目に合格しなくてはならなかった(表1)。

認定資格
試験科目
ORACLE MASTER Silver
Oracle9i Database
「Oracle入門」
「SQL」
「Oracle9i DBA I」
ORACLE MASTER Gold
Oracle9i Database
上記試験に加え、
「Oracle9i DBA II」
「Oracle9i Performance Tuning」
ORACLE MASTER Platinum
Oracle9i Database
実技試験(Gold保有が前提条件)
表1 Oracle 9i Databaseにおける認定資格と試験科目
※Gold、Platinumは指定コースの受講が認定条件(Goldは1コース、Platinumは2コースの受講が認定条件)
※2003年3月31日までにデータベース運用・管理トラックの試験に1つでも合格されている方は、Gold認定に伴う指定コースの受講は不要

 しかし10gでは、Bronzeで2科目が課せられるが、次のSilverへは1科目の試験、さらに次のGoldへも1科目の試験で済む。Silverまでの試験科目数なら9iも10gも同じ3科目で変わらない。さらにGoldまでなら9iで5科目、10gではなんと4科目と1科目少なくなる(表2)。

認定資格
試験科目
ORACLE MASTER Bronze
Oracle Database 10g
「Bronze SQL 基礎 I」「Bronze DBA10g」
ORACLE MASTER Silver
Oracle Database 10g
上記試験に加え、
「Silver DBA10g」
ORACLE MASTER Gold
Oracle Database 10g
上記試験に加え、
「Gold DBA10g」
ORACLE MASTER Platinum
Oracle Database 10g
実技試験(Gold保有が前提条件)
表2 Oracle 10g Databaseにおける認定資格と試験科目
※Gold、Platinumは指定コースの受講が認定条件(9iからの移行の場合、指定コースの受講は不要)

 つまり、Bronzeさえ取得してしまえば、SilverそしてGoldの取得は至近距離になる。特に開発者であれば、Bronzeを通過点として、更なる資格取得=スキルアップを目指してはいかがだろうか。

 資格制度のスリム化に合わせて、研修コースも10gではスリム化されている。「10gでは製品そのものが管理労力を減らすようにできているので、データベース管理者の研修時間も平均的に4割ほど軽減されています」と、日本オラクル オラクルユニバーシティの担当者が説明してくれた。

 こうした科目数の削減や対応コースの軽減は、10gという製品が持つ運用管理のしやすさが主要因ではあるが、理由はほかにもある。全体的に易しくするだけでは、新資格を創設する必要性までは生じない。

 10gの特徴の1つとして挙げられるのが、中小規模の企業などでの利用も想定していることだ。Oracle Databaseといえば、これまで高機能や高信頼性から大規模システムなどで導入されることが多かった。そのため、日本オラクルは10gを中小規模の企業に積極的に導入させるため、さまざまな支援策なども発表、実施している。運用管理を容易にしたことは、こうした中小規模の企業での利用を強く意識したためだ(Oracle Database 10gの製品概要については、日本オラクルのWebサイトを参照いただきたい)。

 製品が中小規模の企業を意識するのであれば、それに見合った資格も必要ではないか。日本オラクル社内にそうした声が上がり、その問題認識がBronzeを生み出すことになった。そのため、Bronzeはただ単純にSilverを易しくしたものというよりは、中小規模企業で必要十分な要件が厳選された資格と理解できる。

開発者も把握すべき最低限の管理スキル

 こうして誕生した認定資格のBronzeは、データベースの管理者向けである。では、開発者には関係がないのか。

 「Bronzeはもともと管理者向けの資格ではありますが、課せられる試験はDBA(Bronze DBA 10g)とSQL(Bronze SQL基礎 I)の2つです。SQLはselect文の記述や表の作成などが問われていますので、こちらは開発者向けです。管理者でも開発者が最低限やる作業は知っておかないと管理できませんし、逆に開発者でも基本的な管理方法は知るべきです」と齋藤氏。

 Bronzeとは正確にはORACLE MASTER Oracle Database 10gの資格体系において管理者向けではあるが、齋藤氏がいうように管理と開発の基礎が凝縮されている。いわば管理者と開発者の双方にとって最低限おさえておくべき基礎的な範囲を網羅した認定試験だ。

 さらに齋藤氏は「開発者が管理方法を知れば、運営フェイズを意識してアプリケーションを構築できます」と開発者にとってのメリットを掲げる。開発者は求められる機能をアプリケーションに搭載すればいいとは限らない。例えば処理するデータに到達するまでの検索手法が非効率的であれば、サーバに過剰な負荷が掛かり、運用に支障を与える危険性もある。そのため、開発者は運用時のパフォーマンスも配慮しながら開発をする必要がある。

 こうした開発者にも有益な管理の基礎を、Bronze試験対策から学習するのもいい。研修や試験対策の教材は体系的にまとめられているので、効率的に学ぶことができる。例えば「Oracle Database 10g 管理クイック・スタート」というBronzeに対応した研修コースでは、基礎的な管理方法が学べる。「管理者でも開発者でも、両方の基礎的な範囲を学んでもらいたいですね」と齋藤氏。

 現在開発者として仕事をしているが、将来開発に進む予定で、まだ認定試験を取得していないならBronzeから将来役立つ管理の基礎を固めておくのもいいだろう。

Bronzeの取得パス

 では実際にBronzeを取得するまでのパスを解説しよう。Bronze試験は次の2科目合格が必須である。

  • Bronze 10g DBA (2004年6月開始。Silver Fellowからの移行試験でもある)
  • Bronze SQL 基礎 I(2004年10月開始予定)

 「Bronze10g DBA」はすでに開始されたので、もういつでも受験できる。だが、もう1科目の「Bronze SQL 基礎 I」が受験できるのは10月以降となる。それまで対応コース受講など、じっくり勉強して備えておくといいだろう。

 もしSilver Fellowを取得済みなら、移行試験を兼ねている「Bronze 10g DBA」に合格すればいい。Silver Fellowなら「Oracle入門」と「SQL」に合格しているため、「Bronze SQL 基礎 I」は免除となるのだ。「Bronze 10g DBA」はすでに受験可能なので、Silver Fellowを取得済みであれば10月を待たずBronze資格を取得することできる。

 気になる試験レベルだか、齋藤氏に想定される試験問題をそれぞれ5問提供してもらった。実際に解いてみていただきたい。それぞれの問題をクリックすると、別ウィンドウで問題が表示される(なお、解答は本記事の最後にある)。

研修コースはどれを受けるべきか

 では、Bronze取得に向けて効率的に学習するためには、どのようなことに気をつければいいのだろうか。試験範囲の学習ならばオラクルユニバーシティの研修が最も効果的だ。試験範囲を重点的に解説し、また手を動かしながら集中的に学ぶことができるし、分からない点は講師に直接質問できる。Bronzeの2科目に対応するコースはそれぞれ以下のとおりだ(表3)。

試験
対応研修コース
Bronze 10g DBA Oracle Database 10g 管理クイック・スタート(2日間)
Bronze SQL 基礎 I Oracle Database 10g 入門 SQL 基礎 I(3日間)
表3 Bronze対応2科目に対応したオラクルユニバーシティ研修コース

 「Bronze 10g DBA」対応には2コースあるが、この2つのコースの最大の違いは、クイック・スタートはBronzeに特化したコースであり、ワークショップIはBronzeとSilverに対応したコースである点だ。Bronze取得だけを目指すのであれば、クイック・スタートで十分。Silverの取得を考えているのであれば、ワークショップIの受講をお勧めする(表4)。

試験
研修コース
5月
  Oracle Database 10g 管理クイック・スタート
6月
Bronze 10g DBA  
7月
  Oracle Database 10g 入門 SQL 基礎 I
8月
  Oracle Database 10g 管理ワークショップI
9月
  Oracle Database 10g 新機能(Gold対応)
10月
Bronze SQL 基礎 I Oracle Database 10g 管理ワークショップU(Gold対応) 
DBA 10g 新機能(※)
11月 Silver DBA 10g
Gold DBA 10g
Oracle Database 10g 管理ネクスト・ステップ(Silver対応)
表4 Bronze、Silver、Gold試験と対応研修コースの開始スケジュール
太字がBronze関連の試験と研修コース。
※「DBA 10g 新機能」は、Gold 9i保有者がGold 10gに移行するための試験

 集合研修のほかに、オラクルユニバーシティでは、eラーニング形式で学ぶことができる「プレミアム・ライブラリ」を検討している。ただし、Bronze対応のコースが発表になるのは今年秋以降となる。Bronze対応の書籍も秋ごろから10g関連のものが発売される予定となっている。

アーキテクチャの理解が重要

 現在書籍は10g関連のものは出そろっていないが(7月の取材時点)、齋藤氏は「基本的な概念を理解するのであれば、9i以前の書籍でも十分に参考になります。10g特有の内容は主にOracle Enterprise Manager(以下、OEM)のGUI操作になりますが、Oracleのアーキテクチャやコマンドラインでの操作が分かっていれば、OEMはすぐに理解できます」という。9i以前の本でも基本理念の理解には十分役立つという。

 後は「習うより慣れろ」で、実際に触ってみるのが効果的だ。「適当な環境がなくてもトライアル版が日本オラクルのWebサイトからダウンロードできますので、開発環境などにインストールして実践を積むといいでしょう」とも齋藤氏はアドバイスする。

 10gは管理が容易であることが特徴ではあるが、Oracle技術者としては、Bronzeの先も目標にしたい。その場合、「OEMのGUIしか使えない」とか「裏でどんな処理が起きているのかよく知らない」のではやや心許ない。OEMのGUIの裏で何が起きているのかを概念としてよくイメージできるように理解を深めておくといいだろう。

 「運用が取りあえず満足にできたとしても操作の意味が理解できていないと、いい運用ができていない可能性もあります。Oracle Databaseがどんな仕組みでどんな処理を行っているのか、アーキテクチャの理解はとても重要です」と齋藤氏は強調する。そうしたより深い製品への理解は早いうちから始めた方がいい。それはより上位の認定試験に挑戦するという理由だけではなく、より優秀なOracleエンジニアとして実務で活躍するためにも有効になるはずだ。

「Bronze 10g DBA」想定問題 解答
「Bronze SQL 基礎 I」想定問題 解答
問題1 B 問題1 A
問題2 B、C、D、E 問題2 C
問題3 C 問題3 A
問題4 B、C 問題4 A
問題5 A、C 問題5 C、D

企画:アットマーク・アイティ人財局
制作:アットマーク・アイティ人財局
掲載内容有効期限:2004年8月31日

■ORACLE MASTERを
理解するためのリンク集
Oracle University
Oracle Universityのトップページ。新着情報は常にここに掲載される。
ORALCE MASTERページ
日本オラクルのWebサイトにあるORALCE MASTERのページ。
Oracle Universityオフィシャルガイド
「Oracle Database10g」に対応したオラクル研修サービスの総合カタログ。定期開催研修、資格制度が分かりやすく紹介されている。PDF版がダウンロードできるほか、希望者へは郵送してくれる。
ORALCE MASTER取得フロー
ORALCE MASTERを取得するための手続きを5ステップで紹介。
ORALCE MASTER Oracle Database 10g資格紹介
4つの資格についての解説ページ
10g資格へのアップグレード
ORACLE MASTER Oracle 9i Database資格者が、10g資格へアップグレードするために必要な試験を図解で解説。
Bronze DBA 10g試験内容チェックリスト
Bronze DBA10g試験の出題範囲の一覧。
コースカタログ
Oracle Universityが定期開催している研修コースの一覧。コース名をクリックすると詳細が表示される。
■Bronze試験対応研修コース
Oracle Database 10g 管理クイック・スタート
日程:2日間
料金:12万6000円(消費税込)
データベース管理に必要なインストールや環境構築から、バックアップ/リカバリまでのデータベース管理者エッセンスを紹介するコース。Enterprise Managerの操作を通じて、管理作業に必要な知識を習得できる。また、Oracle Database 10gで大幅に強化された自律系機能についても習得できる。これからOracleデータベース管理者を目指す方や、小中規模のデータベースの管理者を目指す方にお勧め。
Oracle Database 10g 入門 SQL 基礎 I
日程:3日間
料金:18万9000円(消費税込)
はじめてOracleデータベースに触れるという方のために、リレーショナル・データベースとは何かという概念から始めて、リレーショナル・データベースへアクセスするための標準言語であるSQL言語の書き方を学ぶことができる。また、設計、開発、運用いずれのフェイズでも必要となるスキーマ・オブジェクトの作成方法を習得できる。

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