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実践力を付け、ITアーキテクトの頂点を目指そう!

経済産業省が発表した「平成17年度 IT人材実態調査報告書」によると、企業、個人の区別なく、プロジェクトマネージャやITアーキテクトに対する関心が高い。だが、実際に人材を育成したり、自らキャリア形成に乗り出すとなると、いくつかの壁に突き当たるという現実がある。その壁を取り払い、「5年後にも求められるキャリア形成」を実現するのが、産業技術大学院大学だ。

  キャリアアップできない3つの理由

 「平成17年度IT人材実態調査報告書」によると、IT企業/ITエンジニアともに、ITアーキテクトやプロジェクトマネージャといった職種への関心が高い。

 具体的には、5年先に目指す職種として「プロジェクトマネジメント」を挙げているITエンジニアが全体の28.1%、「ITアーキテクト」は13.9%という結果が出ている(表1参照)。

年齢層 コンサル
タント
IT
アーキテクト
プロジェクト
マネジメント
IT
スペシャリスト
……
25歳以下 13.1% 17.2% 17.2% 18.2% ……
26〜30歳 8.4% 17.2% 23.8% 15.1% ……
31〜35歳 11.9% 13.9% 29.1% 20.5% ……
36〜40歳 20.1% 9.6% 33.4% 12.7% ……
41〜45歳 15.0% 9.6% 36.4% 14.4% ……
51〜55歳 35.3% 5.9% 17.6% 8.8% ……
56歳以上 46.2% 0.0% 15.4% 15.4% ……
合計 14.6% 13.9% 28.1% 15.9% ……
表1 「IT人材実態調査 報告書」より
   「年齢層ごとに見た、5年先に目指す職種」のグラフを抜粋

 一方、IT企業にとっても「現在必要としている職種は」という問いに対し、「プロジェクトマネジメント」を挙げた企業が100%、「ITアーキテクト」は30%超に上り、特に入社3〜10年の若手社員には「プロジェクトマネジメント力強化」を重点課題として掲げている。

 だがこうした状況に対し、職場(仕事内容や人材教育プログラム)や大学教育が十分応えられていないという現状がある。

 例えばITエンジニア個人で見ると、「周囲に目標となる人物(キャリアモデル)がいない」(45.4%)、「漠然とした目標はあるが、会社の仕組みに制約があり、実現できそうにない」(42.5%)という悩みを抱える。IT企業側としても「OJT(On the Job Training)でなるべく実践力を養っているが、ある分野のスキルを体系的・網羅的に身に付けられない」というジレンマを抱えており、“目指す姿”と“現実の道筋”の間で大きなギャップがある。

 大学や大学院の教育カリキュラムも、「実践力養成の場としては、やや力不足の感がある」と評価される。目標は見えても「具体的なキャリアモデルがいない、OJTなどでは総合的な力を育てにくい、教育機関にも期待できない」という三重苦の状態のようだ。

 こうしたニーズに応えるのが、産業技術大学院大学である。

  「将来の産業界に人材を供給する」目的で設立

 2006年に開学した産業技術大学院大学は、「情報アーキテクトと呼ばれるスーパープレーヤーの育成を目指して」、東京都からの支援を受けて設立された公立大学だ。

産業技術大学院大学学長
石島辰太郎氏

 学長の石島辰太郎氏は、「本学は、将来の東京都の産業政策に対し、人材供給面でサポートするという目的で設立されました。将来の産業分野を考えていくと、情報化が大きな鍵となりますが、IT業界では力のあるプロジェクトマネージャやITアーキテクトが不足していることもあり、システム全体のスペックが見積もれず、手戻りが発生するということが往々にしてあります。また、若手人材からすると、キャリアパスが描きにくいので、優秀な人材ほど敬遠するという傾向があるので、産業として健全な育ち方が難しい、といった問題も見過ごせません。そのため、『ITの中でも将来にわたって高い付加価値を持つ分野は何か』に注目し、特にプロジェクトマネジメントとITアーキテクトに注力して、人材育成を行っています」と語る。

 「いまの若い人がキャリアパスを描きにくくなっている現状ですが、改善の兆候はあらわれつつあると思います。きっかけは『ITスキル標準』が浸透してきたことにあると考えています。いままで、ITアーキテクトやプロジェクトマネージャというと、漠然としたスキルモデルしか描けていませんでしたが、そのスキルが具体化されたことで、IT企業における職種との対比や、待遇はどうするかといった課題が出てきました。現在、一部の大企業ではさまざまな改革が行われていますが、中小規模のIT企業の場合、なかなか整備が進んでいません。そのため、本学では、(1)学ぶ内容、(2)学んだ後のキャリアパスについて、産業界と連携を取りながらカリキュラムを整備しています」(石島氏)

 石島氏の発言からも伺えるように、産業技術大学院大学の特徴は、東京都の産業政策や、IT産業界からのニーズを受けて「真の実践力を養成する」ということにある。そのため同校では、日本アイ・ビー・エムや富士通などを構成員とする「運営諮問会議」を開き、産業界と大学院大学のキャリアをシームレスでつなぐ取り組みを進めている。具体的な会議内容は、同校の機関誌に掲載されているので、入学希望者や在学生は機関誌を通じて学校の取り組みを確認することができるという。

  OJTでは得られない実践力が身に付く“PBL”とは

 さて、産業技術大学院大学の特徴とは何か。冒頭で述べた「キャリアモデルの不在」「将来の人材を育てるカリキュラムが不十分」「大学など高等教育機関では実践力育成ができない」といった課題に対し、(1)約7割の「実務家教員」(IT業界での実績を持つ教員)、(2)実践力養成に注目した実践型カリキュラムの2点を通じ、これらの課題を解決している。

 特に後者の「実践力養成」は非常に重要ととらえており、「2年間という限られた期間で、真の経験値を付けるのは難しい」(石島氏)としながらも、「実践から導き出せるスキルモデル、すなわちコンピテンシーを7分野とし、この7つのコンピテンシーを総合的に身に付けられるように、演習型授業を全体の半数以上に取り入れている」という。これをPBL(Project Based Learning)と呼び、2年次配当科目ではすべての授業を演習とすることで、技術知識を総合的に統括し、プロジェクトを回していくノウハウを身に付けられるようにしたわけだ。なお、7つのコンピテンシーについては「高度な専門知識を体系的に学び、情報アーキテクトを目指せ!」で詳しく解説したので、そちらを参照してほしい。

 実践型の演習の中でも目玉となるのが、2年次配当科目の「情報システム学特別演習」だ。これは1チーム5人程度の学生に、担当教員が3人付き、ある設定された課題の下、プロジェクトを動かしていく――というシミュレーション型の科目のこと。

 もっとも、前提となる課題はすべて、企業や公共機関で実際に課題とされているものであり、例えば「情報セキュリティマネジメントシステム構築におけるリスクマネジメントの習得」や、授業で行われているすべてのプロジェクトを統括するPMO(プロジェクトマネジメント・オフィス)の実践など、それぞれの興味分野に従って参加する。概ね平日2日、週末1日の中で課題が出され、報告書(レポート)を毎回提出するというスタイルも、通常の業務に近い。

 ただ通常の業務やOJTと異なるのは、サポートする講師陣がプロジェクトマネジメントやアーキテクチャ設計の専門家であり、学生1人に付き、教員が2〜3人のサポート体制で支援するなど、フォローアップが十分なところだ。そのため、OJTで陥りがちな「指導不足」ということはなく、実務に近い形でプロジェクトマネジメントのノウハウを学ぶことができる。

 そのほかの特徴としては、講義形式の授業はすべてビデオ化されており、学校のイントラネットから視聴できることだ。このビデオ受講は、卒業後10年間は無料で視聴でき、卒業してからも「いまどんな授業を行っているか、何が技術の流行なのか」を追う(トレースする)ことができる。授業の質についても、学生に定期的にアンケートを取ることで改善し続ける体制ができている。

  企業が個別に人材育成する時代は過ぎ去った

 石島氏は「産業全体として、健全な成長を目指すのであれば、各社が個別に人材育成する時代は終わりました」と見ている。業界の中で、特定の分野の人材が不足しており、現在の企業や教育機関で十分な教育が補えないのであれば、社会人大学に入学するというのは、おそらく唯一の選択だ。実際、冒頭の調査によると、企業の多くは「自費であれば、社会人大学に通うことは差し支えない」としており、今後は企業側からも積極的に「人材育成に社会人大学を利用しよう」という動きが出てくることが望まれる。それまでは、ITエンジニア自身が自分に投資し、実践力と総合力を磨くことが必要だ。

 石島氏は最後に「能力が高い、ということは、それだけで『どんな企業でも働ける。どんな勤務形態でも選べる』という“自由”を手にすることになります。こうした自由を手に入れるために、特に付加価値の高い分野のスキルを磨くという発想が必要ではないでしょうか」と締めくくった。

「学ぶことの面白さを伝えたい」
産業技術大学院大学 2年次在学中
長嶺勧氏(40代・金融機関のシステム部門勤務)

  私は、学部卒業時に進学か就職かを迷った経緯があり、「もし機会があれば大学院で学びたい」という気持ちがありました。そんな私が本学に入学するきっかけは、確か昨年の元旦に『都民だより』で本学の募集要項を見つけたことでした。HPで詳しく調べたところ、自身のキャリアアップに役立つ分野を学べることを知りました。また、都立のため学費も低く、家や職場からも便利な場所であったことがきっかけとなり、応募したのです。出願時に研究計画書などを求める学校が多いのですが、本学の場合、そのような準備を必要としなかったことも、締切まであまり時間がなかった私にとってとても都合が良かったのです。

 実際に、二十数年ぶりに学生という立場になると、「授業を受ける」という感覚がとても新鮮に感じられました。入学当初はほぼ毎日授業があり、宿題もかなり出されたので、仕事の疲れが残った中でそれらをこなさなければなかったことは非常に厳しかったです。が、それが日々を充実させる大きな要因ともなりました。

 勤務先に対しては、事前に所属長への十分な説明と配慮をお願いしていたので、ある程度の時間のやりくりは何とかできましたが、それでも会社のお昼休みや通勤・通学時、帰宅後の真夜中まで、ときには会社の業務後そのまま宿題に取り掛かる日々もありました。とにかく、メリハリをつけて時間を細かく区切って取り組み、できるだけ、無駄のないよう心がけましたが、これは学生だからというわけではなく、会社の仕事でも同じようなことが求められるのではないでしょうか。

 私の場合、会社人生の半分を過ぎているので、卒業後別の仕事や職種に転換するということは考えていませんが、「社会人になってから学校へ行く」という面白さは、誰かに伝えたいですね。可能であれば、今度は自分が教える立場に立ってみたいですし、また別の学校に行くという希望もあります。ちなみに、在学中は学割が使えるので、たまには映画も見るようになりました。

「独自の技術サポートでユーザーの満足度向上を」
産業技術大学院大学 2年次在学中
深野修一氏(40代・ソフトウェアベンダの販売/サポート)

  私が本学に入学を決めた理由は、「ソフトウェア開発」「ネットワーク/サーバ」「データベース」の3本柱の中から、自分の目的に合った科目を自由に選べること、また私立の社会人大学院と比較し、学費が大幅に安かったことが挙げられます。

 入学してみると、先生方は大学の研究畑出身の方のほか、企業出身の方が多くいらっしゃるので、科目の選択によって、これから10年以上陳腐化しない基礎力や、企業ですぐに役立つ実践的知識などさまざまな事柄を学ぶことができ、非常に刺激的でした。

 学校があると、帰宅時間も遅くなるので、帰宅後の勉強はかなりつらいと思います。私は学校からの帰りの電車で、当日受けた授業のノートや配られたプレゼンテーションの資料を見直し、授業の記憶を定着させました。これは非常に効果的な復習になります。

 卒業後は、本学で習得したことを基に、新規ビジネスの開拓や、お客さま仕様のソフトウェアのカスタマイズなど、既存の販売商品によらない技術サポートを通して、売り上げ拡大や顧客満足度の向上を図っていきたいと思います。

【産業技術大学院大学説明会、入試日程】
最新の説明会、入試日程は産業技術大学院大学のWebサイトをご覧ください

 

提供:産業技術大学院大学
企画:アイティメディア株式会社
制作:@IT自分戦略研究所
掲載内容有効期限:2007年8月1日

産業技術大学院大学 概要
■学校名
産業技術大学院大学

(Advanced Institute of Industrial Technology)

■場所
東京都品川区東大井1-10-40

■設置者
公立大学法人首都大学東京

■開設
平成18年4月

■学長
石島 辰太郎

■研究科等の名称
産業技術研究科 情報アーキテクチャ専攻(専門職学位課程)
平成20年度に創造技術専攻を開設

■学位の名称
情報システム学修士(専門職)

■入学定員 50人

■収容定員 100人(情報アーキテクチャ専攻)

 
情報アーキテクチャ専攻
本専攻では、情報システムを設計し、その運用を含む全体プロセスを管理する能力を持つ情報アーキテクトを育成します。

1年次のカリキュラムは、情報アーキテクトの基本的な考え方を学習するIT基礎科目群と基本共通科目群、それぞれの専門領域について深く学ぶ専門科目群から構成され、情報アーキテクトに必要とされる知識の修得を目指します。

2年次のカリキュラムは、PBL型科目が中心となり、各プロジェクトに参加することにより、情報アーキテクトに必要な業務遂行能力(コンピテンシー)を身につけます。

本学で育成を目指す情報アーキテクトは、非常に幅の広い概念ですが、学生は自らの専門領域に高度な知識とノウハウを備えつつ、他の領域に対しても一定レベル以上の知識を備えたプロフェッショナルとなることを期待されています。さまざまなキャリアパスが想定されますが、学生は各モデルカリキュラムで推奨される講義科目を履修した上で、対応するPBL型科目を受講することにより、各キャリアに必要とされるスキル、コンピテンシーを修得します。

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