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ものづくりの現場に足りない「スキル」とは?


日本の製造業が世界をけん引していたのは昔の話。安価な労働力、海外への生産システムの移植、縮小する市場などのビジネス環境が、「高品質、安価、大量生産」を強みとした日本の製造技術を脅かしている。曲がり角にあるものづくりの現場に何が必要なのか。その答えを提示するのが、産業技術大学院大学が2008年4月に開設する「創造技術専攻」だ。

 

ニッポンの「ものづくり力」は曲がり角?

 過去約40年間、世界経済第2位の国力を維持してきた日本。その経済力をけん引してきたのは、ほかならぬ製造業だ。

 日本の製造業の強さは、2つある。1つは、軽量化/小型化、高機能化など、商品を改良する技術力に優れていること。自動車、時計、携帯電話などを考えると分かりやすい。

 もう1つの強みは、「高品質な製品を、速く大量に作れる」プロセスにある。例えばトヨタが編み出した『カンバン方式』を、米国の学者が研究した結果、サプライチェーンマネジメント(SCM)として昇華させたのは有名な話だ。

 だが、そんな製造業の強みが、ここ数年揺らいでいる。その理由は、日本のお家芸だった改良技術、プロセス改善技術が海外へと輸出され、他国も技術力を付けてきたため。労働コストが上乗せされた高い日本製品より、同じ品質で安価な海外製品が増えたのだ。また、これまで強みだった「迅速な大量生産システム」が、ここ10年以上にわたって縮小しつつある市場と比して、過剰になっている。つまり、これまで強みだった“ものづくり力”が、ビジネス環境の変化で弱点となってしまったのだ。

 とはいえ、ものづくりの力が、すっかり廃れたわけではない。安価な労働力を持つ海外へ技術移転したとはいえ、製品を改良/改善する技術やアイデアは健在だし、品質に対するこだわりは大きい。

 ならば、何が足りないか。日本の「ものづくり力」再建を目指し、2008年4月から新専攻「創造技術専攻」を開設する産業技術大学院大学 学長 石島辰太郎氏は次のように語る。

 「日本は古くから、すべてのプロセスを一貫して作業する『職人』文化を尊重してきましたし、高いオリジナリティを誇ってきました。子供向けの玩具もその1つ。17〜18世紀ごろ、子供向け玩具といえば、大人の遊び道具を小型化したり、簡略化したものが海外では一般的でしたが、日本では子供専用の玩具を企画・開発する職人がいたのです。これは世界でも類を見ないこと。こうしたオリジナリティや、職人技といわれる優れた技術を、再び現在のものづくり業界に培うことが必要。その基盤技術となるのが『デザイン』だと考えています」(石島氏)

 

ものづくりの基盤技術は「デザイン」にある


 
 
産業技術大学院大学 学長 石島辰太郎氏

 「戦後の高度経済成長の中、われわれは海外製品の改良などに心血を注ぎ、高品質・高機能な製品を提供してきました。つまり、作るモノは初めから決まっていて、それをどのように改良するか、効率的な生産プロセスを確立するにはどうすればいいかなど、プロセスイノベーションに支えられてきたわけです。しかし、今はその段階は過ぎ、これからは作るモノ自体の力でイノベーションを起こさなければならない時代です」と石島氏は語る。

 イノベーションが、なぜデザインと結び付くのか。石島氏はこの問いに対し、「一般的にデザインといえば、服飾や外観など感性的な“デザイン”を連想するでしょう。しかし製品にはもう1つ、機能デザインという分野があります。例えば、車のエンジンやモーターの効率を高める設計であったり、美しく丈夫な建築物を建てるための素材の選択などが挙げられます。感性系のデザイン、機能系のデザインが融合して初めて、優れた製品ができるのですが、残念なことに、現在はものづくりの現場が細分化された結果、各専門家間のコミュニケーションが難しくなり、ものづくり全体を見渡せる人材がいなくなりました。一方、昔の職人は、すべてのプロセスを1人で担当していたため、1つの製品を作るのに時間はかかりましたが、その代わり優れたオリジナリティを持つ製品を開発できたのです。今日のものづくりの現場に必要なのは、2つのデザイン力を身に付け、各専門家を束ねてマネジメントできる人材。そして、市場のニーズを的確につかみ、ものづくりの開発・供給プロセスを統制できる人材です。こうした人材が増えることで、イノベーションにつながります」と答える。

 例えば、デザインは格好いいが、走れない自動車と、速く走れるが、不格好な自動車があっても、どちらにも購入意欲は沸かないはずだ。そこで性能のいいエンジンを設計する人と、美しいフォルムをデザインする自動車デザイナーがコラボレーションすれば、必ず売れる自動車が作れる。ただし、「感性」と「機能」という2つの専門をうまく融合させなければならない。そのためには、感性/機能という2つの領域を理解できる人材が必要になる。

 一見、相反する専門分野だが、これを「デザイン」という軸で眺めると、両者を取り持つ方向性が見えてくる。その方向を指し示すのが、同校が育成する「ものづくりアーキテクト」だという。

 

「売れるモノを作る技術」を身に付けるには

 「アーキテクト」とは、建築家や建築士を意味する言葉だが、ここには“全体を見渡す専門職”という意味も込められている。もともと建築や都市設計は、見た目の美しさだけでなく、水道や通信設備などのインフラを考慮して全体をデザインしていくことが求められるが、今日のものづくりの現場に必要なのは、まさにこの“全体をデザインする”という専門性だ。

 石島氏は、「日本の傾向の1つに、宇宙開発や都市開発などの大きなプロジェクトを扱うのが苦手という意識があるのではないでしょうか」と指摘する。確かに、ヨーロッパの国などはどこを訪れても、新旧合わせた街並みの融和があるし、米国は大規模宇宙開発プロジェクトの成功率が高い。ちなみに米国でも、工学系の大学教育の中で、「感性デザインと機能デザインの融合」がテーマになっており、「専門家間のコミュニケーションを支援する人材」の育成に力を注いでいるそうだ。日本の大学教育は、細分化された中で専門家を育てることに重点が置かれており、橋渡しを行う人材はなかなか育たない。

 そこで産業技術大学院大学の創造技術専攻では、2年間かけて感性系・機能系2つのデザインについて、じっくり学ぶカリキュラムを立てている(図1参照)。1年次は「ものづくりアーキテクト」になるための基礎系科目を講義形式で学び、2年次からは演習を中心に、実際にモノ(プロトタイプ)を開発するプロジェクトベースの授業が中心となる。このプロジェクトベースの演習(PBL:Project Based Learning)は同校のカリキュラムの最大の特徴で、5人程度の学生に3人の教員が付き、実際にモノを開発するプロセスまでを実体験するという。「製造業の試作現場で使われる『ラピッドプロトタイピング』(Rapid Prototyping)の技術を使い、実地でモノを作ります」(石島氏)。

 ラピッドプロトタイピングとは、現在は3DCADを使ってシミュレーションを行い、樹脂粉末などを使用して設計データからモノを組み立てる手法のこと。技術発展に伴い、小さな3Dデータであれば、数時間でプロトタイプを作ることも可能だ。

 そしてもう1つの特徴は、やみくもにプロトタイプを作るのではなく、事前の市場分析や調査を行い、ニーズを的確につかんだ上で、「売れるモノ」を企画することにある。これが社会人向け大学院カリキュラムの醍醐(だいご)味だ。

図1 創造技術専攻のカリキュラム概要

 「プロジェクトベースの演習は重視していますが、そうかといって、何でも作ってみればいい、というわけではありません。やはり、最終的にはビジネス現場で活躍することになるので、市場ニーズの汲み取りも重要になります。そのため、感性/機能デザインだけでなく、マーケティング調査などの実際も学び、その手法を用いて、『売れるモノ』を企画・開発する方法論を体得するのです」と石島氏は語る。

 ちなみに、教授陣には、N700系の東海道新幹線「のぞみ」のデザイナー、大手自動車メーカーのインダストリアルデザイナー、機械/電気系の設計技術専門家など、まさに“イノベーションを興した”人材が名を連ねている。そうした専門家のイノベーションノウハウを吸収し、新たなイノベーションを興す人材の育成を目指すのが、産業技術大学院大学の創造技術専攻なのだ。

【産業技術大学院大学説明会、入試日程】
最新の説明会、入試日程は産業技術大学院大学のWebサイトをご覧ください

 

提供:産業技術大学院大学
企画:アイティメディア株式会社
制作:人財開発編集部
掲載内容有効期限:2008年2月18日

大学院概要
産業技術大学院大学
(Advanced Institute of Industrial Technology)

■場所
東京都品川区東大井1-10-40

■設置者
公立大学法人首都大学東京

■開設
平成18年4月

■学長
石島 辰太郎

■研究科等の名称
産業技術研究科情報アーキテクチャ専攻(専門職学位課程)
産業技術研究科創造技術専攻(専門職学位課程/平成20年度開設)

■学位の名称
情報システム学修士(専門職)(情報アーキテクチャ専攻)
創造技術修士(専門職)(創造技術専攻)

■入学定員
50人(情報アーキテクチャ専攻)
50人(創造技術専攻)

■収容定員
100人(情報アーキテクチャ専攻)
100人(創造技術専攻)

 
創造技術専攻
創造技術専攻で育成する「ものづくりアーキテクト」には、プロダクト・イノベーション、インダストリアル・デザイン、デジタル技術、産業材料学に関 する高度な知識と業務遂行に必要となる基礎知識が必要であると共に、これらの知識を的確に使いこなすための業務遂行能力が必要です。

本専攻のカリキュラムでは、プロダクト・イノベーション、インダストリアル・デザイン、デジタル技術、産業材料学に関する知識体系と業務遂行に必要 となる基礎知識および「ものづくりアーキテクト」に必要とされる基本的考え方を、1年次の科目として実施し、業務遂行能力の養成を2年次に実施するPBL型科目である創造技術特別演習T・U・Vで行うよう設計されています。


・創造技術専攻のカリキュラムの詳細

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平成20年度入試日程
<説明会および入試日程>
日程
2008年1月19日(土)13時30分〜16時30分
2008年1月23日(水)19時00分〜21時00分
場所
産業技術大学院大学品川シーサイドキャンパス(19日)
キャンパス・イノベーションセンター東京(23日)
日程
2008年2月9日(土)・10日(日)
場所
産業技術大学院大学品川シーサイドキャンパス
日程
2008年2月16日(土)13時30分〜16時30分
2008年2月21日(木)19時00分〜21時00分
場所
産業技術大学院大学品川シーサイドキャンパス(16日)
東京都庁第1庁舎 25階 115会議室(21日)
日程
2008年3月8日(土)・9日(日)
場所
産業技術大学院大学品川シーサイドキャンパス