不況下でも求められる人材がいる。それが「IT戦略のスペシャリスト」だ。40歳前後のITエンジニアは苦しいいまこそ経営戦略を学び、スペシャリストへの第一歩を踏み出すべきである。 |
「ITエンジニアが今後獲得したいスキル」として、「経営」スキルの人気は高い。2009年10月に@IT自分戦略研究所が行った読者調査では45.0%が「経営知識を獲得したい」と回答した。ただし、スキル獲得へのニーズに比べ、すでに経営知識を保有している割合は非常に少ない。同調査において「現在、経営知識を獲得している」と回答したのは、わずか6.9%に留まっている。
勉強したいが、勉強への一歩をなかなか踏み出せない経営知識――。ITエンジニアにとって、経営の知識は「いつかは欲しいが、いま欲しいわけではない知識」のようである。
しかし、「経営知識獲得のためには“いま”動く必要がある」と、グローバルナレッジネットワーク ソリューション本部の井上実氏は主張する。
「特に30代半ばから40代前半の技術者にとって、経営知識の獲得はキャリアアップのチャンスを意味する」。
なぜ、いま経営知識を学ぶべきなのか。経営知識を身に付けることによってどのようなチャンスにめぐり合えるのか。井上氏に詳しい話を聞いた。
40歳前後(35歳〜45歳)に求められる「スペシャリスト」への道
30代半ばから40代前半の中堅層が「経営知識」を身に付けるべき理由として、井上氏は「人口ピラミッド」を挙げた。
国立社会保障・人口問題研究所が公開している「人口ピラミッド」データを見てみよう。2010年の人口ピラミッド(推計値)では、40歳前後(35歳から45歳)の男女はそれぞれ100万人ほどいる。つまり、企業内で最も人数が多い層である。一方で、35歳以下の人口は、少子化の影響を受けて年々人数が減り続けている。
また、「ITサービス業界の新卒採用数の推移」(JISA基本統計調査)を見ると、1992年の3万人採用を境に、採用数が減少傾向にあることが分かる。1992年に新卒入社した人材は、現在40歳だ。IT業界は他業界に比べて平均年齢が若いといわれるが、ボリュームゾーンは、人口ピラミッドと同じ40歳前後であることがうかがえる。
さて、これらのデータは2つの状態を示している。
第1に、IT企業を含む多くの企業において「30代半ば〜40歳前後の人材」が主戦力であること。第2に、彼らに求められる役割が「二極化」していることだ。
グローバル ナレッジ ネットワーク ソリューション本部 井上実氏 |
「『40代になっても7割が課長になれない』時代がまもなくやってきます」と井上氏は言う。
なぜなら、人口ピラミッドを見て分かるとおり、20代の部下世代は大幅に人数が少ないからだ。管理する側の人間が、管理される側より多い現状では、中堅層が「管理職」にならない道を模索する必要がある。そこで、求められているのが、中堅層が「IT戦略のスペシャリスト」として活躍することなのである。
では、「IT戦略のスペシャリスト」とは具体的にどのような人材なのか。この問いについて、井上氏はIT戦略のスペシャリストを求める「ユーザー企業側のニーズ」を指摘した。
「日本情報システムユーザー協会の調査によれば、ユーザー企業の50%近くが『IT戦略・IT企画』『業務改善の提案』『IT投資案件のマネジメント』能力を持つIT人材が必要だ、と回答しています」(井上氏)。
IT企業側にとっては、ユーザー企業の需要に応える人材の育成が求められている。一方、ITエンジニア個人も今後のキャリアを考えるうえで「ユーザーから求められる人材」を目指すべきである。「IT戦略のスペシャリスト」として活躍するには、豊富な経験を積んだ中堅層の方が若手層よりも有利だ。IT企業とユーザー企業両方にとって、またITエンジニア個人にとって、中堅層が「IT戦略のスペシャリスト」として成長することは魅力的な選択肢だといえる。
「IT戦略のスペシャリスト」が持つべき3つのスキル領域
「IT戦略のスペシャリスト」になるためには、具体的にどのようなスキルが必要なのだろうか。
ITエンジニアに足りないスキル、すなわちこれから身に付けるべき知識は3つの領域に分かれる、と井上氏は指摘する。それは以下の3つだ。
- コンサルティング・スキル:論理的思考、ゼロベース思考、コミュニケーション能力など
- 業務知識:会計業務知識、人事管理業務知識など
- 経営知識:経営戦略、マーケティングなど
IT戦略を立案するためには、これらの知識をすべて兼ね備えている必要がある。
図3:IT戦略を立案する人材に必要とされるスキル |
これら3つのスキル領域の中でも特に重要なのが「経営知識」だ、と井上氏は言う。
「1995年頃からインターネットの商用利用率が上昇し始め、コンピュータは企業の生産性を大幅に向上させるツールであると、多くの経営者が納得しました。そして現在、経営とITはますます切り離せないものになってきています。そのため、経営者はITを理解する必要があり、同時に経営者を支援するITエンジニアもまた、経営を理解する必要があるのです」 (井上氏)。
IT戦略は、経営戦略を反映して決定される。そのため、IT戦略の策定を行う人材は「IT」と「経営」に関する深い知識を有していなければならない。論理的思考やコミュニケーション能力などは日々の仕事で身に付けていくことが可能だが、経営知識については、なかなかそうはいかない。経営知識を獲得するなら、一度はきちんと体系的に学ぶことが効果的だ、と井上氏は語る。
短期間で体系的に――「経営知識」の基礎を学ぶ
こうした現状をふまえて、グローバルナレッジネットワークでは、経営知識を短期間で学ぶ「MBAエッセンシャル」コースを用意している。
現在、提供しているのは「経営戦略編」と「マーケティング編」の2コースだ。
「経営戦略編」は、「経営戦略とは何か」を学ぶ演習中心の2日間のコースで、事前知識や年齢は問わない。「経営戦略を学びたい」という意欲さえあれば、誰でも受講することが可能だ。
同コースのポイントは3つある。まず、経営戦略を理解する際に必須の知識を短時間で学べることだ。「経営戦略の定義」から始まり、「多角化戦略」や「事業部制」「コアコンピタンス」などの代表的な経営戦略論を概観できる。
しかし、それだけなら本を読んでも習得できそうだ。本コースの核は、実際に経営戦略を立案し、策定する「演習」プログラムにある。これが同コースの2番目のポイントだ。
「実際にやってみないと分からないことはたくさんあります」と、井上氏は強調する。演習は、2日間のプログラムのうち1日半をかけて行う。「事務機器販売会社の経営戦略」というケースを用いて、受講者が経営戦略を立案する。経営戦略のプロセス立案からビジョンの確認、戦略策定や戦略の展開、さらには戦略の見直しまで、経営戦略立案の流れを実践形式で学ぶことが可能だ。
最後のポイントは、「集合教育」であることだ。「特に演習方式では、いつでも講師に質問できる環境が必要不可欠です。講師と直接やり取りをしながら、経営戦略の流れを一通り体験できる。これは、集合教育ならではのメリットでしょう」と井上氏は語る。
「マーケティング編」は、講義中心の1日間のコース。大学で1年間かけて学ぶマーケティングの基礎知識を、1日で学ぶ。内容は「マーケティングの定義」から、「マーケティング戦略の立案方法」「マーケティング・ミックス」「マーケティング・ミックス決定に必要な知識」までを網羅している。
ユーザー企業の動きは早い。ITエンジニアも動くなら“いま”
ユーザー企業の2社に1社が「IT戦略・IT企画を立てられる」人材、「業務改善の提案力を持つ」人材を望んでおり、人材を育成するために動き始めている。
「ユーザー企業は、自分たちだけで問題を解決しようとしているわけではない。『自分たちだけでは分からないことがあるので、IT企業側のプロフェッショナルに相談したい。しかし、IT企業側には相談できる相手があまりいないので困っている』という企業が多い」と井上氏はいう。IT企業側のエンジニアも、今後のキャリアパスを考えるなら、いま「経営」知識を身に付けるために動き出すべきなのでは、と井上氏はアドバイスする。
「多くの企業が、不況の影響でいまも苦しんでいることと思います。大変な現状だからこそ、いまITエンジニアは『経営知識』を学ぶべきではないでしょうか」と井上氏。
新年度開始までのカウントダウンが始まっているいま、あなたも新しいスキルを身に付けるために動き出してはいかがだろうか。
提供:グローバル ナレッジ ネットワーク株式会社
企画:アイティメディア営業企画
制作:@IT自分戦略研究所 編集部
掲載内容有効期限:2010年3月22日
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