自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |


未来はあるのか、どこへ行くのか?
エンジニアの将来を考える


加山恵美
2002/1/11

 Engineer Lifeの取材から、エンジニアに未来があるのだろうかと疑問に思った筆者が、その実体験などから、エンジニアの将来はどこへ向かうのかを考え、読者に問う。

 「ぼくたちはいったいどこへいくのだろう」。エンジニアとして働いている人間は、10年先、20年先にはどうなっているのだろうか。そんな漠然とした疑問をしばしば自問自答する。これは個々人の人生の問題でもあり、決まった答えがあるわけではない。が、たくさんのエンジニアとの会話を通じて感じたことをつづってみる。

筆者がNASAで働きたいと考えるきっかけとなった宇宙科学博覧会(写真提供:財団法人 日本海事科学振興財団)

過去に持っていた将来の夢

 小さいころに私が考えていた将来の夢はいくつかあった。1つはNASA(米国航空宇宙局)で働くこと。宇宙科学博覧会(昭和53年)以来、プラネタリウムに行くのが好きだったというのと、カップうどんのコマーシャルで見たスペースシャトル発射の映像が印象的(東洋水産の「マルちゃん 赤いきつねシリーズのコマーシャル」。昭和57年放映))で、「あそこで働く」と宣言していた。もう1つはマンガ家。近所の友達同士で『ガラスの仮面』のまねごとをしたり、少女漫画を多く読んで育ったからだろう。

 しかし、そんな思い描いていた将来の夢とは違い、大学卒業後、私はシステムエンジニアになっていた。エンジニアの友達同士で将来の夢は何であったかを語り合っても、「エンジニア」と答える人はまずいない。

こちらは東洋水産の「マルちゃん 赤いきつねシリーズ」のコマーシャル、NASA編(Copyright Toyo Suisan Kaisha.Ltd. All rights reserved.)

 私は夢を捨てたのか? 道を外したのか? 多くのエンジニアたちもそうなのか?

 いや、そうは思っていない。エンジニアというのは野球選手や歌手のように華やかではなく、警察官や看護婦のように子どもがよく知っている職業でもない。だから、子どもの「将来の夢」候補になることはない。そもそも、私たちが小さいころといえば、コンピュータに携わる人がいたといっても、存在はまれであり、現在のエンジニアの姿とはかなり異なっていただろう。現在のようなエンジニアというのは、せいぜいここ十数年、パソコンや関連機器の普及があって登場した新種の職業だ。新しい可能性を秘めた「道」でもある。

プログラマー30歳定年説は本当か?

 IT系エンジニアは、いろんな意味で新しい。「この道50年」なんてベテランはいない。長年この道でやった先はどうなるか分からない。かなり前だが「プログラマー30歳定年説」というのがあり、エンジニアは若い人間だけがやる職業と見られていたこともある。しかし、現在30歳を超えてプログラマーやエンジニアを続ける人はざらにいる。

 だが、まるで同じ言語で同じ仕事をしている人は、汎用機系ならまだしも、パソコン系ではほとんどいない。エンジニアは流行のように移り変わる新しい言語を次々と習得して、自分の守備範囲にしていかなくてはならない。例えば、VB(Visual Basic)をマスターしても、それで一生食えるわけではない。とても変化が激しいので、技術の将来だけではなく、自分の将来すら分からなくなりそうな不安に襲われることもある。

これから広がるエンジニアの役割

 しかしここで思い悩んでも始まらないと、私は少し楽観的に考えるようになった。もともとエンジニアを将来の姿として思い描いていたわけではない。たまたま道程のある場所で、ちょうど新しい道が生まれたところだったのだ。その新しい道を選び、進んでいく中で、また新しい道が広く大きく枝分かれしていくかもしれない。そしてその道の先もまた分からないのだ。ITの普及により、かかわる人間は増えてくる。そうすればまた新しい職業も生まれるかもしれないし、それがエンジニアのその先の姿になるのかもしれない。

 良い例えになるか分からないが、コンピュータをクルマに置き換えて考えてみる。クルマが登場したのはコンピュータよりずっと前だが、人類史で考えたら最近のことだ。試行錯誤を経て初期のモデルができ、量産できるようになって次第に所有者が増えていく。当初はまだクルマを造る技術者や職人が多かっただろう。しかし、そのうちに多くの知識を持ち、コンサルティングをしてくれるセールスマン、保守を行うエンジニア、数多くの関連製品の登場、クルマが社会に広まるにつれてかかわる人間も増えて、その職業も多種多様になってきた。

 IT系も同じようなことになるのではないだろうか。最初は構築や開発がメインとなるが、運用や保守があり、新しい技術への乗り換えもあり、またはシステム間の連携や関連機器との接続など、技術の応用範囲は広がり、規模も拡大していく。そうすると、若手だけではなく豊富な知識と経験を積んだ熟練エンジニアの存在が必要になってくる。技術だけではなく、他分野の知識も必要となってくるだろう。現在のエンジニアにとって、いまの経験を生かしたエンジニアの「その先の新しい形」というのがきっとあると思う。

何より大切なものは志

 漠然としかいえないが、人生それぞれなので、やっぱりそれぞれの人生があるのだろう。ひたすらエンジニアを究める人もいるだろうし、私のようにエンジニアからIT系ライターに方向転換する人もいるだろう。家業を継ぐというように、まったく違った道に行く人もいるだろう。理想型というものは存在しないと思っている。休養が必要だと思ったら最前線を離れることもあるだろう。家族のために就業時間を制限できるような仕事を選ぶこともあるかもしれない。それぞれがそれぞれの人生の中で、優先度を見極め、選んでいく。

 いまのところ、私にはまだまだ結論が出せるほどこの業界にも人生にも長くない。思うのは、まず、変化が激しいという意味でIT業界は視界が良好ではない業界であるが、それは「お先真っ暗」という意味ではない。ただ、視界が良好でない分、ぼーっとしていてはいけない。よく注意を払って自分の今後のキャリアをどうするのか、どうしたいのか、意志を固められるように考えていくことが大切だと思う。これはIT系に限った話ではないが、何より「志(こころざし)」が大切なのだと強く感じる。

筆者紹介
加山恵美(かやまえみ) ●茨城大学理学部化学科卒業。金融機関システム子会社とIT系ベンダにてシステムエンジニアを経験し、グループウェア構築や保守などに携わる。そのかたわらで解説書を執筆していたが、それが本業と化す。技術資料を提供することで、日夜システムと格闘しているエンジニアをサポートできればと願う。幼少からバレエを始め、現在コンテンポラリーダンスを習っているが、いまだに身体が硬いのが悩みとか。双子座A型。

関連記事
不定期コラム:Engineerを考える

 

 

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。