自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |


連載:転職で失敗する人、ダメな人
第1回
SEとコンサルタントの違いが分からず失敗

内田靖
2001/8/22

人材コンサルタント会社に勤めている筆者が、実際に出合った事例や過去に勤めていた会社での経験を交えて、転職で失敗するエンジニアはどんな人かを毎回紹介していく。これから転職を考えているエンジニアに、転職に失敗しないために気を付けるべきことや注意すべきことを、“転職で失敗したケース”から学んでほしい。

   短期間でのヘッドハンティング要請

 某外資コンサルティング会社から、ある有力SIベンダーに勤務している33歳のSEマネージャをヘッドハンティングしてほしいとの依頼があった。早速、クライアントであるコンサルティング会社と仕事内容や人物像、さらに候補者の詳細な情報について打ち合わせを行った。

 クライアントの採用職務は、ITビジネスコンサルタントで最新IT技術を活用したビジネス戦略、業務系・基盤系のシステム構築までをこなすもので、候補者を現在と同じプロジェクトマネージャとして採用したいとのこと。年収は、現在よりも最大20〜35%増まで提示しても構わないとクライアントにいわれた。さらに、2カ月後に開始される某大規模プロジェクトまでに入社できるようにしてほしいとのことであった。

 プロジェクトマネージャレベルのSEは、責任を持ってシステム全体を管理し、一定のシステム品質を実現することが目的である。しかし、コンサルタントに求められるのは、方法論を提示し、お客様(クライアント)主体で進められるプロジェクトを支援することであり、この点がSEとコンサルタントが決定的に異なる点である。私がヘッドハンティングでいつも感じることは、採用対象の技術者の専門知識やスキルに、会社側の求めるものと多少のズレがあっても、許容範囲であればその人の努力でカバーができるということだ。

 しかし、一番のポイントは、行動を決定する「動機」や、職務で高い成果を上げる行動特性「コンピテンシー」がマッチングするかどうかである。ヘッドハンティングの場合、時間をかけて候補者の動機やコンピテンシーを探り、さまざまなツールを利用して評価することはなかなかできないのが現実である。そのため、候補者にヘッドハンターが数回会う中で、コンサルタント向きであるかどうかを判断するしかない。

 私はすぐに候補者に電話で直接アプローチをかけた。この最初の電話の印象では、謙虚さや社交性があまりないように感じ、直感的にコンサルタント向きではないのではないかと不安を覚えた。ただし、時期としてはタイミングがよかった。候補者が抱えていたプロジェクトが終わったばかりで、本人も今後の仕事で悩みがあるため、ぜひ相談したいということであった。入社時期までの期間を考えると急ぐ必要があったため、電話した日の夜に会うことになった。

 不安は的中した。クライアントが求めている人物でないことは、会って10分も話さないうちに分かった。専門的知識、スキル自体に問題はなかったが、人間的な面であまり評価することができなかったためだ。そう感じたのは、誠実さが感じられず、横柄で態度が悪く、どこから自分の情報を聞いたのかを執拗に聞く。そのため、候補者には会社名を教えず、年収や家族、仕事ぶりなどを聞いてインタビューを終えた。

   適していない仕事は転職者も不幸になる

 翌日、クライアントにインタビューの候補者の報告をする際、ヘッドハンターとしての立場から、これ以上話を進めない方がいいと助言した。しかし、クライアントは意外にもその候補者と話を進めてほしいとの返答だった。とにかく実際に会ってから採用するかどうかを決めたいとのことで、会社側と候補者とのインタビューを急きょ設定した。

 クライアントに焦りがあったためか、結局1週間で5回もインタビューを実施し、採用に必要な専門知識、スキルは押さえているとクライアントが判断したため、候補者に採用オファーを出すことになった。私としてはクライアントに対して最後まで採用は見合わせたほうがいいのではないかと助言したが、最終的に現在の年収より約100万円の給与アップを提示し、さらに本人も職務内容に納得して雇用契約書にサインをした。

 その後予定どおり候補者は入社して、プロジェクトの業務を開始した。自分の存在をアピールするため、毎日14時間ほど業務をこなしていたというのだが、自分の力にうぬぼれ、コンサルタントとしてのビジネスの進め方を先輩方から学ぼうという心を持たなかったため、自然に先輩、部下たちが離れていき、本人もいら立ちからか部下にストレスをぶつけていたようだ。

 私もこの人物のことが心配であったため、クライアントの人事、採用部署からヒアリングをしていた。ヘッドハンターとしてのポリシーもあり、一度、本人と会って話し合いの場を持ったが、結局それもムダに終わり、彼は入社後6カ月で退職し、結果的に人事採用は失敗した。

 私がどうしてこの人物がコンサルタントに適していないと判断したのかは、次のような理由があったためだ。

  • 人を助けたい、サポートしたい、役に立ちたいという奉仕の精神がない
  • 人に対して誠実、謙虚ではなく、自分の立場だけを主張して相手のことを理解しようとする気持ちがない
  • これまで周囲からチヤホヤされて自信過剰である
  • 自分に自信がないので、物事がうまくいかないと上司や部下に攻撃的になる

 人事面接で自分の人間性をアピールしようとも、それが入社後に伴なっていなければ、人事だけでなく、配属された部署での評価もすぐに下がってしまうだろう。それではお互いが不幸な転職となる。転職で成功するためには、採用条件の資格、能力、待遇も大切であるが、自分自身がどのような動機を持っているのかを探求し、それに見合う仕事を選択することが必要だろう。

連載:転職で失敗する人、ダメな人

 

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。