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連載:転職で失敗する人、ダメな人
最終回(第12回)
仕事の本質に迫るには自分を知ること

内田靖
2003/1/15

人材コンサルタント会社に勤めている筆者が、実際に出合った事例や過去に勤めていた会社での経験を交えて、転職で失敗するエンジニアはどんな人かを毎回紹介していく。これから転職を考えているエンジニアに、転職に失敗しないために気を付けるべきことや注意すべきことを、“転職で失敗したケース”から学んでほしい。

   人は成功よりも失敗から多くを学ぶ

 本連載は、今回で最終回となる(前回の連載からかなりたってしまったが)。これまで紹介した多くは、失敗事例であった。しかし、書店などでは『転職の失敗』と銘打った書籍をあまり見掛けたことはない。たいていは、『こうすれば成功する』『転職成功方法』『絶対成功する転職』、といったタイトルが圧倒的に多い。

 しかし、人は成功することよりも、失敗することで多くを学び、より大きく成長でき、世界が広がるものだ。逆に人は勝利や成功することで、現状に甘んじてしまい、それ以上に努力して向上することを忘れてしまうことがある。人材紹介会社の社員として人と接するときにそれを肌で感じる。

 本連載でも、これまで紹介した多くの失敗事例から、読者が得るものがあればと願っている。今回は、転職する際に気を付けてほしいことをまとめてみた。ぜひ参考にしていただきたいと思う。

   自分自身をよく知ろう

 転職に踏み切る前に、人材紹介会社などに(Webサイトも含め)登録することはあまりお勧めしない。登録すれば人材紹介会社からは面談や企業の紹介が、企業からは面談依頼がきてしまい、気持ちだけが焦ってしまって失敗するケースがあるからだ(人にもよるだろうが)。

 転職に失敗したら再度転職すればいいという安易な発想は禁物だ。こうした発想は、2〜3年ほど前の“初心者でも可”といったほどのエンジニア不足時代の名残と思い、忘れた方がいい。現在では、求人があるから大丈夫だろうと思って転職を繰り返すと、採用側の人事担当者は、またすぐに辞めるかもしれないと判断して、どんないい大学出身者でも、いい企業に勤めていたとしても、採用を見送ることがある。一概にはいえないが、30歳までに4社程度転職していると黄色信号だと思ってほしい。最近の求人企業では、30歳までに3回転職している場合、書類選考で落とすところもある。

 自分に見合った求人案件は、それほど多くないということを、知っていただきたい。それだからこそ、転職には真剣であってほしい。つまり、いいかげんな気持ちで転職活動をしてはいけないということだ。20歳代の仕事次第で30歳代の転職が、30歳代の仕事次第で40歳代以降の転職が決まると考えていい。

 そのため、これまでの自分を棚卸しして、自分を客観的に見ることをお勧めする。なぜ、現在の仕事をしているのか、したいのか。仕事とは自分にとって何なのか、なぜ転職をしなければならないか。さらに、何に充実を感じ、喜びを感じるのか。

 長年にわたって仕事をし続けているうちに、仕事をする動機そのものを忘れてしまい、ビジネスのトレンドにだけ目を向け、そのトレンドに乗って転職をしたり、給与、ポジションに固執する中で仕事を見失ってしまったりすることがある。

 最近感じることは、転職する場合に仕事そのもので悩んでいる人はそう多くないということだ。多くの場合、よく話を聞くと、上司や会社の組織上の問題などで転職を考えている人も多い。そういう人に、会社や上司に対して何らかのアクションを行ったかを聞くと、ほとんど何もせず、あきらめていることが多い。それを会社にぶつけてみると、問題が解決する場合もある。そうなれば、現在勤めている会社でそのまま十分に力を発揮して楽しめるのではないかと思う。外に目を向けるのでなく、自分自身に目を向けてみることから、転職をする必要が本当にあるのか、というところから考える必要があるだろう。

 「桜梅桃李」という言葉がある。桜には桜のよさ、梅には梅のよさ、それぞれのよさがある。それぞれを比較するものではない。人も同じで、人それぞれのよさもあれば使命もあり、それぞれが十分に力を発揮できる仕事が必ずあるものだ。そういったことを忘れて、年収を上げたいから、ポジションを上げたいから、といった目的だけの転職は、そのときは成功したように見えても、その後に行き詰まるはずだ。

   経営者で企業が決まる

 実際の転職活動では、1社で2〜3回の面接や面談があり、それで最終結果が出る。考えてみれば、これから自分が力を注ぐ企業をたった5時間ほどで決めることになる。つまり、限られた時間内で企業体質を見極める必要があるのだ。人事部門や担当部門との面接が中心であろうが、社長や経営陣と面談できる機会があるのであれば、こちらから申し込んででも面談すべきであろう。

 それは、社長の起業理念が人事部門や担当部門にも浸透しているか、ある程度ベクトルが合っているかを確認する必要があるからだ。会社の大小を問わず、社長と現場のベクトルにズレがあればあるほど、その会社は機能していないといえる。ラインマネージャと仕事内容について双方がきちんと理解して納得できたとしても、社長の考えがラインに浸透していなければ、転職後に方針が変わってしまい、「こんなことなら転職しなかったのに」ということにもなりかねない。

 面接で人事やラインマネージャ、そして社長や経営陣に、起業理念やそれに基づく実際の活動を質問してみるといいだろう。何度も繰り返すが、起業理念だけでラインが実際に実行していなければ要注意だ。

   仕事の本質

 目先にとらわれ、自分さえよければいいといった、その場しのぎの仕事のスタイルは、結局自分の首を絞めるようなものである。自分のできること、やりたいこと、しなければならないことすべてが重なる仕事ができることが、個人の幸せに必要不可欠であると思えてならない。そういった思いで転職活動を行えば、小さなことで神経をとがらせてピリピリする必要がなくなるだろう。

連載:転職で失敗する人、ダメな人

 

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