自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |

最新データで見る「エンジニアのキャリア事情」

第35回 地獄? 戦場? 火を噴くプロジェクト死闘編

Tech総研
2006/11/18

月の残業が100時間や200時間、ペナルティで人質に取られる、同僚が無精ひげで熊になる、顧客が怒鳴り込んでくる。誰の地獄が最悪か。(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載)

 

Part1
300人の回答から厳選! 火を噴くプロジェクト百花繚乱(りょうらん)

 300人のSEに、「最悪だった火を噴くプロジェクト」について質問。「スケジュールに追われて残業が増える程度ではすまない悲惨さ」という条件を付けたので、ひょっとしたら「経験なし」の回答があるかも……と思いきや、1人も欠かさず全員から答えがありました。うーむ、複雑な心境です。

おいおい、それは不条理というものでしょう!

メーカーの制御パッケージ開発に入った若手プログラマ

物流機械を製造するメーカーの、自動制御パッケージの開発を丸ごと請け負った。期間・品質ともにシビアな仕事だったが、マネージャもリーダーもSI(システム開発)企業の下請け経験が長い人で、いま思えばこんなプロジェクトの運営を統括できるスキルはなかった。当時私は入社3年目くらいで、プログラマとしてサブシステムを担当していた。

業種:ソフトハウス 職種:オープン系SE(37歳) プロジェクト規模:24カ月/250人月
プロジェクト破たんのペナルティは1年間の人質生活

仕様検討の時点でプロジェクトマネージャが完全に顧客の信頼をなくし、いうことなすこと顧客から全否定。スケジュールは遅れに遅れ、無理やり仕上げたプログラムの品質はボロボロ。プロジェクトマネージャは心身症気味になり顧客から出入り禁止を食らう。プロジェクトは顧客主導でほぼ作り直しとなったが、そのペナルティとして要求されたのは、人質1人を1年間提供すること。その人質とは私のことだった! 私の丸1年はいったい何だったのか。

1年半の大型案件で数十人をまとめるリーダーに

携帯電話端末の開発で、メールクライアントの要件定義から市場投入試験までの工程を担当。協力会社を含めて、最終的には60〜70人体制の責任者になった。

業種:通信系企業 職種:制御系SE(33歳) プロジェクト規模:18カ月/500人月
会社に泊まり込み、半年で1500時間以上の残業だ!

開発途中で資本関係が変化し、買収先から仕様変更などの圧力がかかった。現行よりもプアで互換性のない仕様だ。しかも、海外標準仕様の設計が不十分なまま、スケジュール重視政策によって作り込みが進んでしまった。できたのはまともに動く代物ではなく、サーバとの整合性が取れていないなど、あり得ない状況となった。その間の約半年の私の残業時間は1500時間以上、月にして200時間以上。ほとんど会社に泊まっていた。

測定機器の開発案件にプログラマとして参加

大型測定器の制御プログラムを開発した。5つのサブシステムのうち、1サブシステムのメインコーダーとして参加。

業種:SI企業 職種:制御系SE(27歳) プロジェクト規模:21カ月/10人月
ジコチュー先輩のコードを修正。残業は月100時間を超えた

入社6年のベテランが担当したサブシステムのコード品質が、著しくひどいと判明した。シミュレーションでは高性能なPCを使っていたので気付かなかったが、実機で動かすと実用に堪えうる速度ではなかった。本人はすでに別のプロジェクトに移っていたため、残るわれわれがしりぬぐい。規模が無駄に大きく、完全な「おれワールド」を展開して書かれたコードの解釈は困難を極め、残業は月に100時間を軽く超えた。

プロジェクトマネージャ、リーダーの方、もっとしっかり願います!

オンライントレードの開発からテストまでを担当

金融機関での株取引システムの開発。私はプログラマで、当初はプログラム設計から結合テストまでを担当するはずでしたが、なぜかいま客先で検収テストの真っ最中です。現在も残留しております。

業種:SI企業 職種:汎用機系SE(27歳) プロジェクト規模:1カ月/300人月
イエスマンのリーダーに振り回されて精神がゆがむ……

プロジェクトリーダーがどんな要求にも「はい」と答えるイエスマン。開発段階から毎日終電。結合テストはテスト要員でなく私たちプログラマが行うことになりましたが、業務の流れを知らないので作業は遅々として進まず。設計者は「何でテストケースが消化できない!」と怒りだし、誰のフォローもなく、偉いプロジェクトマネージャの方には毎日プレッシャーをかけられ、精神が壊されかけました。管理能力のあるリーダーに代わってからは仕事が回り始めましたが、あのときは人間がダメになると思いました。

基幹システムの構築で数少ないプロパーのメンバーに

プラントメーカー向けの基幹システム構築案件に、自社と複数企業のパッケージ製品を組み合わせて提案し、要件定義から総合テストまでの全工程を受注した。入社4年目でプログラマとして参加。自分以外にプロパーは数人で、残りはパートナー企業の社員だった。

業種:SI企業 職種:汎用機系SE(27歳) プロジェクト規模:12カ月/150人月
口約束のリーダー、メンツにこだわる部長……もう1年以上遅れてます!

生産管理や勤怠管理、営業支援関連の部分の開発を、リーダーが口約束で決めてしまった。現場のエンジニアは「絶対に間に合わないからやめたい」と部長にお願いしたが、部長は「会社として途中で降りることはできない」と一蹴(いっしゅう)。本来の予定から1年以上経過したいまでもまだカットオーバーされていない。ひとまず納品はしたが、検収をもらったという名目で開発者をほとんど放出。運用テスト中に不具合が出ても、修正できる人間がいない機能もある。受注額の10倍以上のコストがかかったようだ。

カード会社のアプリケーションサーバ構築にプログラマとして参加

大手クレジットカード会社のアプリケーションサーバ構築。基本設計からリリース後のフォローまで、すべてのフェイズをプログラマとして担当。

業種:ソフトハウス 職種:Web・オープン系SE(27歳) プロジェクト規模:6カ月/7人月
休日返上で作って「実装なし」はないだろう!

プロジェクトリーダーの力量不足が最大の原因。客のいいなりのうえにプログラムの知識は皆無に等しく、そのしわ寄せで毎日終電、もしくはタクシーで帰宅。残業時間は月に二百数十時間! 休日返上でさせられた作業が彼の勘違いによるもので、まったく実装されないこともあった。さすがにプロジェクト終了後に左遷された。

仕様や要件が決まらないと何もできません!

ECサイトの構築で初期段階から開発メンバー

中堅企業のBtoBのECサイトを構築した。全工程を受注し、私は開発チームのメンバーとして入った。UNIX+Javaと、オフコン上のCOBOLを連携させたプロジェクトで、当時はそのような構成のシステム構築はまだ実績が少なかった。

業種:SI企業 職種:オープン系SE(31歳) プロジェクト規模:15カ月/60人月
数千個のデバッグに追われて不眠不休のサイクルが続く

開発が終盤になっても要件や設計があいまい。チームメンバーには膨大な量の作業が割り当てられ、協力会社のプロジェクトリーダーが行方不明となった。そのサブシステムの開発とテストがストップし、テストでは数千個のバグが発生。われわれは客先に常駐して3日間不眠不休でデバッグ→家で数時間睡眠→3日間不眠不休でデバッグという生活を2〜3週間続けた。カットオーバーは1カ月ほど遅れ、その後も不具合が続いたので、お客だけでなく、お客のお客にまでプロジェクトルームに怒鳴り込まれた。

平社員がたった1人で仕入れ管理のシステムを構築

ファストフードチェーンの販売仕入れ管理システムの見直し。平社員なのにほぼすべての仕事を押しつけられ、権限がないので決済などで細かく承認を取らなければならなかった。

業種:インターネット系企業 職種:Web・オープン系SE(30歳)
プロジェクト規模:4カ月/1人月
目まぐるしく変化する要求に、上司が拍車をかけてくる!

顧客のいうことが会うたびにころころ変わるので、振り回されっぱなしだった。しかも、納品間近になってから担当者と仲の良い上司が「こんな機能もいいかもね」などと余計なことをいい、向こうもその気になってほとんど作り直しになってしまった。絶対的な人手が足りず、プロジェクトの最中は1日も休みが取れなかった。

Webサイトの構築から運用までをプロジェクトマネージャとして仕切る

中小企業のWebサイトの起案から運用開始まで、全工程のシステム案件を受注した。進行につれて顧客の要求が多くなり、当初の予算より膨らみ始め、その料金交渉が地獄だった。客は十分吟味してから受注してくれ。現場はつらいよ。

業種:コンサルティングファーム 職種:Web・オープン系SE(34歳)
プロジェクト規模:7カ月/5人月
男だもの、ひげをそらなきゃ熊になる

結局4カ月客先に泊り込み、全員が家に帰れたのはシステムが完全に立ち上がった後。皆ひげをそらずにいたので、笑いごとではないが熊みたいな顔だった。


 

Part2
こんなときエンジニアは「プロジェクトの火種」を感じ取る!

 人間には不思議な力がある。何度か似たような状況を経験すると、「今度はこうなるな」というカンが働くのだ。簡単にいえば学習能力なのだが、エンジニアが「このプロジェクトは火を噴きそうだな」と直感するのはどんなときか? あなたにも思い当たることがあるはず。

要件定義書が1枚程度しか書かれていなかったとき
ソフトハウス:汎用機系SE(25歳)

打ち合わせが報告のみで、議論の場が一切なくなったとき
SI企業:オープン系SE(30歳)

進ちょくに関するミーティングが週3回以上になってきたとき
ベンダ:汎用機系SE(31歳)

ユーザーの要望がまだなのに、予算と納期のみが決まっているとき
ソフトハウス:オープン系SE(35歳)

何も流用部分がない新規プロジェクトで、メンバーが2、3人しか増えないとき
ベンダ:制御系SE(27歳)

上司が開発に参画したとき
ベンダ:オープン系SE(31歳)

部長から「次につながる仕事だから」といわれたとき
SI企業:汎用機系SE(25歳)

顧客がシステムに夢を抱いていると感じたとき
SI企業:オープン系SE(39歳)

週次会議で、「次回の会議までに決めましょう」といった議題を、また「次回の会議までに……」と先送りしているとき
ソフトハウス:汎用機系SE(35歳)

すんなり仕事が請け負えたとき。たいていは単価が高くて納期が無謀か、単価は普通だが納期厳守の案件
ソフトハウス:制御系SE(34歳)

プロジェクトマネージャが「やや遅れていますが、挽回(ばんかい)可能な範囲です」というとき
SI企業:オープン系SE(32歳)

顧客が「うちの中で調整します」といったとき
金融系企業:汎用機系SE(30歳)

社長が会議で「この仕事には社運がかかっている」といったとき
ソフトハウス:制御系SE(35歳)

 

Part3
プロジェクトが火を噴く原因は?

 プロジェクトが火を噴く要因には、さまざまなものが考えられる。お客が要求を頻繁に変える、仕切り役のプロジェクトマネージャが動かない、メンバーが圧倒的に足りない、そもそも予算がない……。「火を噴く理由」をエンジニアに尋ねてみた。

図1 プロジェクトに火を噴かせる原因は何ですか?(最大3つまで)

 成功したプロジェクトであっても、たいていは初期段階では上記のようなひどい条件が重なっているもの。こうしたリスクを察知して、顧客や担当者や上司やメンバーをしっかりとまとめていくのが、本当のプロジェクトマネージャの仕事。もちろん、リーダーやメンバー各人の力量も試される。

 だから……今後、あなたのプロジェクトが火を噴かないことを祈ります。


☆思い違いをなくそう

 どんなエンジニアに聞いても、最悪な体験の1つや2つは出てくる。「最近あの人音さたがないな」と思っていたところ、まさにデスマーチの最中であったことを後から知る、そんなこともある。今回の体験談にも悲惨なものが多い。

 だが実在する一場面である。こういうものを見るたびに「どうにか生き延びて」と素直に思わずにはいられない。

 SEの仕事場がこうした地獄絵図になってしまうのにはいろいろと要因がある。ちょっとした見込みの甘さ、コミュニケーションのすれ違い、技術的な困難など複数の要素が絡み合い、仲間ごと地獄へと突き落とされてしまう。ささいなことでも積み重なれば相乗効果で深刻な事態に発展する。

 火消し役を経験したエンジニアに話を聞いたことがあるが、地獄への転落の原因としてよくあるのが「思い違い」だという。意思の疎通がうまくいかず、それに気付かずに作業を進めてしまい、後で致命的な事態になる。関係者は途中で何となく気付くのだが、保身に走り状況が悪化するそうだ。

 だから普段から意思疎通は確実にしておくこと。そして危険な雰囲気を素早く察知し、対処するすべを身に付けておくべきだろう。

(加山恵美)


この記事は、Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載しています


@IT自分戦略研究所の関連記事
プロジェクトは危険がいっぱい
火事場エンジニアの武勇伝に赤信号
現場の叫びで分かった嫌われるプロマネの正体
出動! 火消しエンジニア

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。