Tech総研
2009/8/12
懺悔その4 情報漏えい・セキュリティ違反 |
上司のIDでこっそりログイン |
進ちょくが大幅に遅れていたシステム改修の、運用テストでのなりすまし行為。ある権限を持ったユーザーで実行しなければならないテストケースがあったが、みんなことごとく海外出張そのほかで長期不在。自分のIDの権限を変えることもできず、その権限を持つ上司のID(なぜかパスワードもわたしが知っている)でこっそりログインし、テストを実行した。その後、上司が不正ログインに気付いたようだが、無事テストは終了した。
テストケースをチーム内でレビューしたとき、自分の権限をちゃんと確認していなかったのが間違いだった。が、身内の中でのなりすましであり、お客さまのIDを不正に使っているわけでもない。「緊急避難的措置である」というような理由で、許される範疇(はんちゅう)だと自分を納得させている。(30歳 女性 オープン系システム開発)
競合他社の資料を拝借、流用…… |
懇意にしているお客さまから、コンペ会社の提案書のコピーを受け取ってしまった。上司に指摘されて初めて悪いことだと気付いたが、上司は実質的に黙認。その情報はこちらの提案に大いに役立てた。「最終的にお客さまにメリットがあるのだから……」と、悪いことだという意識がなかったうえに、「お客さまとの関係づくりがきちんとできている」という自負すらあった。(37歳 男性 プリセールス技術支援)
機密ファイルをお持ち帰り |
会社の残業時間の締め付けが厳しいため帰宅せざるを得ないが、どうしても業務に差し支えるため、企業機密ファイルを無断で持ち帰り、自宅のPCで作業を行っていた。作業後、自宅のPCからは完全にファイルを削除し、いま現在でも事なきを得ている。持ち帰って作業している最中は、仕事に集中していて何も考えていないが、その前後は、やはりやましい気持ちがあった。(35歳 男性 組み込み機器のソフトウェア開発)
懺悔その5 見積もり額上乗せ |
無駄だと分かっていても導入 |
自分の担当しているお客さまには導入しても意味のないネットワークの侵入検知システムを、お客さまとは別の部署のセキュリティ担当者からの要望で、無駄だと理解しつつ導入しました。お客さまにとって不要な出費ですが、自社では当然、売り上げが上がるので喜んでいました。
結局、3年後にシステムの撤去を提案したのですが、後味が悪かったです。お客さま要望なのでどうしようもありませんが、エンジニアの良心が痛みました。粛々と作業をしましたが、無駄なことをやらされているという思いは残りました。(36歳 男性 ネットワークシステムの設計、構築)
正価に上乗せ……そして接待へ |
顧客に「予算を使い切らないといけない」という事情があったため、本来のシステム価格より上乗せした見積もりを提出し、受注した。最終的に顧客への接待が増えたような気がするため、個人へのキャッシュバックになってしまった。システムを導入し、コスト削減をしようとしているのに、とんでもない話だと思った。(29歳 男性 物流向けシステム開発)
追加費用は予想で計上 |
業者に依頼する仕事に作業変更が発生し、追加費用を請求されることが分かっていた。上司は追加費用の発生には厳しいので、あらかじめ追加費用分を余計に計上させた見積もりを提出してもらい、上司の承認を得て作業を進めていた。結果的に余計に計上した費用以内に収まったので、その分を割引して最終見積もりを提示してもらい、上司からは「安く仕上げてよくやった」という評価を得た。(34歳 男性 回路設計)
最後に |
これまでのエンジニアたちの懺悔には、上司が黙認している、あるいは行為自体が組織的に習慣化しているという背景が散見される。エンジニアが告白した悪事は、実際に会社の慣例や習慣が影響しているのだろうか。
半数を超えるエンジニアから「影響している」という回答があった。具体的には、「ノルマおよび納期を守るためには、ねつ造もやむを得ないとする企業体質(37歳 男性 溶剤の研究開発)」「コンプライアンスという名のもとにガチガチなプロセスがあり、誰もクライアントの方を見ず、社内ばかりを見ている(36歳 男性 ネットワーク設計、構築)」など、やむにやまれぬ状況に追い込まれているエンジニアが少なくないようだ。
図2 会社の悪しき慣例も 影響していますか? |
個人として、組織風土や企業体質を変えるまでの行動を起こすのはとても難しい。理想と現実、役割と責任に揺れるときもあるだろう。だが、どんなときも、良心に従い、前向きに問題に向き合っていくエンジニアを、懺悔室は応援したい。
この記事は、Tech総研/リクルートの2009年2月9日公開の記事を 再編集して掲載しています |
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