Tech総研
2010/2/22
その2:不況とは関係ない? 本来の業務以外の仕事に潜むワケあり事情 |
3段階で紹介してきた、業務外の仕事をしているエンジニアのナマ声。続いて、業務外の仕事をすることになった背景や、業務外の仕事に対するエンジニアの考え方などについて、さらに詳しく探ってみたい。
● 8割以上が「現在の不況が直接影響していない」?
まず、業務外の仕事を担当することになった経緯について質問してみたところ、15%がいわゆる「リーマンショック」以降の世界的な不況の影響によると回答。その理由の多くは「人件費を削減(人員整理)したことで、少人数で複数の業務を掛け持ちしなければならなくなった」という内容だ。しかし、それ以外、8割以上の大多数が「別の理由」と答えている。現在の不況とは関係ないようだ(図2)。
図2 本来の業務以外の仕事を担当することになった経緯 |
代表的な理由をいくつか拾ってみると、
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- 「現場に、PC周りに詳しい人がいないので、何でもやらされる」
- 「結局、設計という部署は何でもやらされる」
- 「案件が減っても突発的なトラブルや運用業務のボリュームは減らないため、1人当たりの作業量が増えている」
- 「もともと人手が少ないため、以前から1人でいろいろな業務を担当している」
といった声が多い。
つまり、全体の傾向としては、
- PCに詳しかったり、設計などのエンジニアというだけで、ほかの業務もやらされる
- 今回の不況に関係なく、もともと人手が少なかったため、1人でさまざまな業務をこなさなければならない状況
という、長年にわたってエンジニアの職場環境を取り巻いてきた構造的な要因が大きいようだ。
● 9割は、本来の業務以外の仕事をネガティブにとらえていない?
続いて図3に注目してほしい。本来の業務以外の仕事に対する率直な感想について聞いてみたところ、9割ものエンジニアがそれほどネガティブにとらえていないことが明らかになった。それどころか逆に「専門外の新たな分野の業務を任せてもらえてありがたい」といった意見も含め、ポジティブにとらえているエンジニアの方が多いようだ。
図3 本来の業務以外の仕事をすることに対する率直な感想 |
- 「新しい業務は新鮮さがあって、やる気につながるし、本来の業務自体へのフィードバックも多い」
- 「将来的な自分の進む道としては社内での調整や予算管理が必要になってくると思うので、別に嫌ということはない」
- 「結局、すべての仕事はコミュニケーションが重要なので、プラスに考えて作業している」
- 「腹が立つが、いまやっていることがそのうち、花が咲けばいいのかなと思うようにしている」
大なり小なり不満を抱えていても、現在の自分自身が置かれた立場や、周りの環境を冷静に受け止め、できる限り前向きにとらえて仕事に対するモチベーションを高めようとする努力が、アンケートのコメントからうかがい知ることができた。
● 6割が、本来の業務以外の仕事にメリットを感じている?
前述のとおり、多くのエンジニアは本来の業務以外の仕事をポジティブにとらえている。そのうちの6割は、具体的なメリットを感じている。
図4 本来の業務以外の仕事をすることによるメリット |
- 「事務経験は初めてなので、転職の際に幅が広がると思う」
- 「SEでありながらマーケティングも担当している。それによっていま、世の中が必要とするシステムの本質について深く認識でき、顧客が求める質の高いシステム開発に大いに役立つ」
- 「半導体の設計から製造までの一連の流れを把握できたことで、製造を考えた設計が必要なことが分かった」
- 「ほかの部署の人と話す機会が必然的に増えるので人脈ができる。部署のシステムを作るときにも、使用する人の感じが分かるのが利点」
- 「障害時に切り分け原因調査まで行っているため、システムに対する理解度がかなり深まった。それにより、障害時の対応の早さにつながっている」
このように、仕事の幅が広がったり、全体の流れを把握することで本来の担当業務をより深く理解できるなど、具体的なメリットを実感しているエンジニアは多いようだ。
おわりに:今後も本来の業務外の仕事と うまく付き合っていく必要がある |
今後の業務に関して、およそ2割は今後ますます業務外の仕事が増えると回答、7割が現状維持と回答している。ほとんどのエンジニアにとって、今後も業務外の仕事をこなしていく必要があるだろう。
当面、景気に関して楽観視できない状況が続くと思われる。厳しい環境下で、担当する業務が本来の業務外の仕事であっても、今回のアンケートコメントにあったように、前向きにとらえて目の前の業務に取り組むことで、新たな道が開けてくるはずだ。
この記事は、Tech総研/リクルートの2010年1月20日公開の記事を 再編集して掲載しています |
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