Tech総研
2011/1/19
「しょうがないか」──大半はあきらめモード。 強い不満感は影を潜める |
Tech総研調査では毎回、ボーナスの額だけでなく、実際の仕事の負荷や業績に対してボーナスが十分かどうか、その満足度を聞くことにしている。実際の手取額がどうであれ、また前年比との増減がどうであれ、ボーナスに対する満足度は人によって異なるからだ。例えば、前年に比べてボーナスが激減した人でも、会社の業績の落ち込みを知れば、「もらえただけマシ」「やむを得ない」と心理的には消極的満足に転じる。
全体の満足度は「今回の金額に満足している」が54%で最も多い。次いで「仕事内容に比べて50万円程度安い」という「やや不満」層が40%となっている。「仕事内容に比べて高い」と感じる人がほとんどいない一方で、「仕事内容に比べて100万円以上安い」という強い不満感も影を潜めている。
図2 2010年冬のボーナス額に対する満足度 |
この満足・不満感を分析するには、エンジニアの生の声を聞く必要がありそうだ。
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満足度の高い人の声を拾うと、「長期休業していたためもらえるだけマシだった」「入社1年目で一人前に仕事をしていないため」「業績の落ち込みほどボーナスが減らなかった」「会社の収益を考えると妥当と思う。自分への評価はそれなりだった」などの声が多い。総じて「ま、しょうがないか」(システム開発/35歳/額面50万円/前年比マイナス17万円)という印象なのだろう。ボーナスは業績に連動してその額が変わるものだが、組織全体の業績が下がっていても、個人業績の評価がそれほど下がっていなければ、相対的には満足度は高くなる。
一方で、「大赤字プロジェクトにヘルプ要員として投入されたが、そのプロジェクトのせいで正当に評価されなかった」(システム開発/34歳/額面25万円/前年比マイナス10万円)と、身の不遇を恨めしく思う人もいる。「もし好調プロジェクトに配属されていれば、ボーナスは上がったかもしれない」と思えば思うほど、悔しさも募る。しかしサラリーマンであるかぎり、こうした運・不運はつきもの。それでも割り切れずに生じる不満感を、上司がいかに聞いてやるかが、チームマネジメントでは重要になる。
不満の理由は、 金額ではなく、評価の不公平感 |
ボーナスが、ほかの人よりも高く、かつ前期比でプラスになっているにもかかわらず、不満を述べる人も少なくない。不満感の多くは、ボーナスの絶対額には左右されない。不満の理由は、金額よりも、評価の不公平感なのだ。
● ナマゴエ!
- うちはそういうブラックな会社だから。下っ端のエンジニアはみんなこんなもの(運用・保守/34歳/額面33万円/前年比プラス4万円)
- 社員全員のボーナス月数が同じである。個人能力の評価がまったく考慮されていない(機械・機構設計/32歳/額面50万円/前年比プラス5万円)
- 出来高も何も関係なく全体の相対評価でしかない。極端にいえば会社の業績が良ければ出て、悪ければ減り、仕事の頑張りでは評価されない(素材・半導体/33歳/額面66万円/前年比プラス4万円)
- 売り上げ、経常利益に対する社員への還元が少なすぎる。マネージャ、役員の報酬が高く、不明確(機械・機構設計/33歳/額面40万円/前年比プラス5万円)
こうした評価システムへの不満が、最も集中的に表れるのがボーナスなのである。ボーナスをアップしたのに、逆に社員の不満が高まるのでは経営者としても困る。しかし、個人をどう正当に評価し、納得感につなげていくかは、組織活性化のための重要な課題だ。成果主義の賃金体系が根づきつつある日本だが、制度設計と実際の運用はまた別のもの。最適なボーナス評価をめぐっては、まだまだ試行錯誤が続きそうだ。
さて、最後にボーナスの使い道を聞いてみたところ、「貯金する」が32.3万円、「買い物をする」は7.9万円、「旅行する」は3.4万円、「親・家族・恋人などにプレゼントを買う」は2.3万円となった。前年に比べボーナスが少しだけ多かったからといって、エンジニアの財布のひもはそう簡単には緩まない。緊縮財政モードは当分の間、続くだろう。
図3 2010年冬のボーナスの使い道は? |
この記事は、Tech総研/リクルートの2010年12月20日公開の記事を 再編集して掲載しています |
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