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必要とされるキャリアとスキルを追う!

第6回 オープンソースコミュニティとともに歩んで

加山恵美
2006/8/9

いま、現場で求められているキャリアやスキルは、どんなものだろうか。本連載では、さまざまなITエンジニアに自身の体験談を聞いていく。その体験談の中から、読者のヒントになるようなキャリアやスキルが見つかることを願っている。

 オープンソースの世界で中心的な役割を果たすカリスマの1人が、いまGoogleで働いている。オープンソースに関する造詣の深さもさることながら、温和で誰とでも親しくつきあえる人柄やそこから広がる人脈が、彼の人生やキャリアを支えているようだ。

Googleのオープンソース活動の中心

 いかにも人当たりが良さそうで「面倒見の良い兄貴分」のような印象を受ける。ソフトウェア開発の経験は25年、オープンソースには12年もかかわっているという。となると若手の域ではないはずだが、雰囲気は若々しい。探求心にあふれ、何よりもオープンソースコミュニティに強い愛着を持っている。

米グーグル グレッグ・シュタイン氏

 グレッグ・シュタイン(Greg Stein)氏は現在米グーグルでエンジニアリングマネージャとして働いている。2004年4月の入社から10カ月間は「Blogger」の管理に携わっていた。2005年2月からオープンソースグループに加わり、オープンソース関連の仕事に専念している。

 もともとこのオープンソースグループは2004年末にクリス・ディボナ(Chris DiBona)氏が立ち上げた。活動を推進するに当たり、よりオープンソースに通じている人物が必要ということでシュタイン氏が加わることになった。このチームが中心になり、1年半ほどの間にグーグルにおけるオープンソースへの貢献活動は急激に積極的になった。

 いまシュタイン氏は、グーグルからオープンソース関係団体や学術機関への寄付について決定を下している。昨年グーグルはオープンソース組織へ35万ドルもの寄付を行った。彼はまたオープンソース関連やAPIの情報提供を行うGoogle Codeの運営、各種カンファレンスでの講演など、多様に活躍している。

学生向けオープンソース体験学習

 若手の育成にも熱心だ。グーグルは昨年から学生を対象にGoogle Summer of Codeプログラムを実施している。これは夏休み期間中にオープンソース関連組織に参加してもらい、オープンソースに貢献し学んでもらうための企画だ。グーグルは組織ごとに5000ドルの予算を割り当て、うち4500ドルを学生に払う。

 夏休みに学生がやる典型的なバイトといえば「ハンバーガーを焼くことだけどね」とシュタイン氏は笑う。それとは大きく異なる体験ができる。オープンソースのスキルだけではなく、存在意義についても学ぶなどだ。参加した学生はそれ以後もオープンソースとかかわりを持つようになる可能性が高い。だからこのプログラムもオープンソースへの貢献の一環と考えることができる。

 初回となった2005年の募集枠は400人だったが、2006年は600人に拡大した。学生は願書に希望の団体や抱負などを書いてプログラムに申し込む。すでに今年の分は締め切られてしまったが、倍率はおよそ10倍だったそうだ。なおこれは世界的なプログラムで、日本の学生も今年は数十人参加する予定だ。

オラクルからグーグルまで

 シュタイン氏の経歴は実に多彩だ。

1989〜1991年
1991〜1996年
1996〜1998年
1998〜2001年
2001〜2004年
2004年〜
オラクル
eShop(Ink Development Corporationから社名変更)
マイクロソフト
オープンソース活動に専念
CollabNet
グーグル

 シュタイン氏は大学卒業後オラクルに就職した。2年ほど働いてから、Ink Development Corporationの共同設立者になる。同社はeコマース事業の開始をきっかけに、1993年にeShopと社名を変更。後にマイクロソフトが同社を買収する。

 そのため自動的にマイクロソフトに移籍することになるが、1998年に退社する。マイクロソフトを去った後は特定の企業に身を置くことなく、3年間ほどオープンソース活動に専念する。かかわったコミュニティはApache、Subversion、WebDAV、Pythonなど多岐にわたる。だがシュタイン氏によるとこれらは「趣味」だそうだ。後にCollabNetに入社する。

 転機は2004年に入ってすぐ。当時シュタイン氏はグーグルに知り合いは1人もいなかったが、グーグルがITエンジニアを募集していると聞きつけて興味を持った。シュタイン氏はオープンソースでは有名人なのでグーグルからお呼びがかかったのではないかと想像してしまうが、それは違う。ほかの応募者と同様に履歴書を書き、面接をこなした。

 面接は7週間にわたった。その過程でシュタイン氏はグーグル社員といろいろと話し、ますますグーグルの仕事に興味を持つようになったという。

「より意欲をそそる、より高度な技術が試されるということ、その中で新しい可能性に引かれました」

カンファレンスで世界中を飛び回る

 勤務した社名を並べるだけでは、シュタイン氏の経歴としては不十分だろう。オープンソースコミュニティにおける経歴も加えないとならない。

 オープンソースにかかわりを持つようになったのは12年ほど前から。1999年にApache Software Foundation(ASF)が設立されるとすぐにメンバーとして参加、2001年には理事に名を連ねるようになった。2002年からは議長に就任している。

 ASFの役員任期は基本的に1年単位で、毎年選挙を行う。取材したのは2006年6月下旬だが、「ちょうど先週ASFでミーティングを行い、役員投票を終えたばかり」とシュタイン氏は話していた。また1年議長を続投するという。

 ASFの活動はほぼ趣味のうちだという。「実際のところ、そんなに時間を割く必要はありません。ASFへの貢献はおよそ週に5〜10時間ほどです」とシュタイン氏。活動のほとんどはオンラインで連絡を交わすことだ。

 あとはカンファレンスへの参加だ。取材時には月曜日に日本に来て京都で2泊、水曜日に東京へ移動して用事をこなし、金曜日には米国に戻るという。帰国した次の日にはまたアイルランドへと旅立つそうだ。ApacheCon Europe 2006に参加するためだという。ApacheConだけでも8月はスリランカ、10月は米国で開催するため、世界中を飛び回ることも多い。

   

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