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必要とされるキャリアとスキルを追う!

第9回 コンサルを目指すなら、楽している暇はない

長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所)
2006/11/17

いま、現場で求められているキャリアやスキルは、どんなものだろうか。本連載では、さまざまなITエンジニアに自身の体験談を聞いていく。その体験談の中から、読者のヒントになるようなキャリアやスキルが見つかることを願っている。

 ITエンジニアに多い特徴の1つとして、「新しもの好き」ということが挙げられると思う。例えば新しい技術、未経験のものへの挑戦などだ。しかしただ新しいものに飛びつくだけでなく、それを自分の力で消化し、知識として取り込んでいくことが要求される。

 フューチャーシステムコンサルティングでシニアコンサルタントを務める大山裕嗣氏は、まさに新しいものに果敢に挑戦し、自力で取り込んでいくタイプのITエンジニアだ。かといって一匹狼ではなく、「1人でできることには限界がある。周りを巻き込んで仕事をしていこう」という意見の持ち主でもある。

 「厳しい環境に身を置いて基礎体力としての知識をしっかりと学び、今後はお客さまとの接点の多い業務コンサルティング的な仕事をしたい」と語る大山氏に話を聞き、コンサルタントを目指すために必要なものを探ってみた。

事例の少ないシステムを設計・開発

 大山氏は現在、アパレル企業の基幹システム構築プロジェクトを担当している。いまは最終フェイズで、システムリリースが済んで運用・保守の引き継ぎをしているところだ。「一応来月終わる予定で、ようやく落ち着いてきたかなという状況です」と語る。期間としては2年実施しており、ピーク時には協力会社の社員を含め100人近くが携わっていた。「フューチャーシステムコンサルティングとしては中から大規模のプロジェクト」という。

フューチャーシステムコンサルティング プロジェクト統括本部 シニアコンサルタント 大山裕嗣氏

 大山氏がこのプロジェクトに参画したのは約1年半前。ちょうど開発が始まったころで、まずは数人のメンバーとともにアプリケーションフレームワークの設計と開発を担当。その後ある業務システムのサブリーダー的な役割を果たした。並行してプロジェクトメンバー全員の技術サポートも行っていたという。「横断的に、すべての開発メンバーをサポートしていました。たまたまサブリーダーの人数が少なく、協力会社のパートナーが多数来ていたこともあって、開発の技術サポートまで手が回っていない状態でした。自然と、開発メンバーを横断的に見る役割が必要になってきたのです」と大山氏は背景について話す。メンバーと日常的に接していたため、「技術的な経験以外にも、社内にどういう人がいるか、その人が得意なのは何か、これはこの人に聞けばいいという情報も得ることができました」という。

 この基幹システムは、顧客の要望もあって.NETベースで構築された。前述のように、大山氏は最初のうちアプリケーションフレームワークの設計と開発を担当したが、社内には.NETのノウハウが少なかったという。「社外にも、あまり.NETで大規模なシステムを作ったという事例がなかったのです。そんな中で、いままでの経験を総動員して、ある程度のものを作れたと思っています」。そこに大きなやりがいを感じたと大山氏は振り返る。

 社内外に例がないシステムのためのフレームワークを、中心となって設計し開発したことになるが、苦労はなかったのだろうか。「Javaで開発されたシステムなどで似たような例を持ち出したり、プラットフォームは異なるけれど事例を知っている人に質問したりしました」

未経験のプロジェクトにチャレンジ

 実は大山氏自身も、.NETでの開発経験はまったくなかった。「それまではJavaで開発することが多かったですね」。フューチャーシステムコンサルティングでは、新しいプロジェクトに加わるときには「アサイン面談」があり、経験のあるなしにかかわらず、「やります!」と手を挙げた人に希望の仕事が割り振られることが多い。大山氏の場合も「『.NETできるか』といわれたとき、Visual BasicもJavaもやったことがあるのでできるかなと思って『できます』と答え、このプロジェクトにアサインされることになりました」という経緯があった。

 なぜ、まったく未経験のプロジェクトに挑戦しようと考えたのだろうか。「新しいことをやるのが割と好きなので」ということもあるが、「今回は技術寄りの部分に重きを置いて希望したのです」と大山氏は説明する。

 というのも、このプロジェクトにアサインされる前、大山氏は食品の製造販売業を行う企業のCRMコンサルティングを担当していた。「システム構築ではなくコンサルティングがメインでした。技術的なことはあまりやらなかったわけです」。大山氏はコンサルティング業務に非常に面白さを感じていたし、将来的にもシステム構築よりも顧客との接点が多い仕事がしたいという思いがあるという。「ただ、今後コンサルタントを目指すにしても、その基礎となるシステムをきちんと作ってきたかというと疑問だと思っていました。そこでいままでの経験を踏まえて、大げさにいうと集大成的なものを作りたいなという思いがあって、このプロジェクトを希望したのです」

 未経験の技術を使用したプロジェクトで、一部分とはいえ設計と開発を任され、挑戦できたことには大きな意義があったことだろう。またその挑戦と努力は立派に報われることとなった。プロジェクトが一段落したときに打ち上げがあり、プロジェクト内の表彰会があった。その場で大山氏は「技術賞」を受賞したという。社内で前例がないシステムを開発するための使いやすいフレームワークを工夫して設計し、開発した点が、周囲のITエンジニアからも高い評価を受けたのだ。「会社ではなくてプロジェクトのメンバーから賞をもらったので、また違う喜びでした」

 大山氏は、プラットフォームや開発言語が異なってもシステムは「基本的には同じだと思います」と話す。「もちろん文法が違うということはありますが、大きなところで基本的に押さえなくてはいけないところは同じ」。例えば、1つの言語を究めて本質的な仕組みを理解すれば、ほかの言語を習得するのにも大いに役立つ。これは多くのITエンジニアが語っていることだ。

 大山氏は単なる好奇心だけの「新しもの好き」ではない。システムの本質を理解し、課題を見つけて解決し自分の中に取り込む力があったからこそ、未経験の技術を使用したプロジェクトに飛び込み、さまざまな業務をこなしながらもマスターすることができたのだろう。何しろ最終的にはサブリーダークラスの仕事、開発メンバーの技術サポートまで務めているのだ。

   

今回のインデックス
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